春のサンタと桜餅のお守り
「部活前に悪いな。実は、柳に言っておかなきゃいけない事があってな…」
時は遡り──日が薄っすらと沈み始めた放課後。職員室へ来るよう言われていた僕は、カメラを片手に顧問の元へ向かった。
「こんにちわ」と軽く会釈しドアを潜ると、普段のやかましい表情からは想像も出来ないどんよりした顔で椅子に座る先生が其処に居た。変な顔だ……ちょっと面白い。そして、何となくは察しが付く。
「廃部ですか?」
きょとん、と口は空いたまま一言も発さない顧問。驚きも焦りもしていない僕は、ボーっとこの一年を振り返っていた。一年間部員は僕一人、コンクールでの受賞は最高でも銅賞、これと言って大きな活動成果を上げている訳でもなく、新入部員の見込みもなし。二年に上がる頃から薄々(そうなるかもな)と考え出していたが、案の定であった。
「廃部…なんですよね?」
「え?エスパー?」
「あ、違います。」
「うはぁー!もうなんだよぉー!」急にいつもの調子に戻った先生は大きく伸びをする。何やら、僕が取り乱すと思い慎重に慎重を重ねたんだとか。(慎重を重ね掛けした顔は正直ギャグでしたよ)の台詞は飲み込み、「じゃあこれから僕はどうなるんですか?」と直球な質問を投げ掛ける──そしてこれだ。
「うちの学校の七不思議!春のサンタを探して来い!」
僕はぼっさぼさになった髪を直しながら、先生の横の椅子へ座った。
「うちの学校の七不思議って、一般的な学校の七不思議と全然違うんだよぉ……!」
あぁ凄い凄い。こんなギラギラした顔で七不思議を語る人なんてうちの顧問か稲〇淳二だけだよ。そして、んー。まあ、まとめればこうだ。
①うちの学校の七不思議は、全てポジティブ&幸運なもの。
②写真部廃部を阻止する手っ取り早い方法は部員を増やすこと。
③超絶パワーを秘めた七不思議を沢山激写出来たら、部員はわんさか増える見込み。
④特に七番目の春のサンタ。これと会えるのが一番レアなんだとか。
⑤春のサンタの出現場所は桜餅祭りの期間中境内にて。
⑥気に入った人には桜餅の刺繡が入ったお守りをプレゼントしてくれて、それが手に入れば何でも願いが叶っちゃう。
らしい。
「どう?ねぇ柳どう!?春のサンタ探して一緒に写真撮ろうよ!!」
「先生……。なんか僕もう、恥ずかしくて泣けてきた」
「え!なんで!?」