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プロローグ
身を乗り出して前のめりになって、闇に沈む空を見上げる。両の掌と左頬を窓ガラスにぺたりとつけると、そこだけひんやりとして気持ちいい。
「ふぎゃ!」
突然与えられた後方からの衝撃に、陽香は思わず潰れた蛙のような声を上げてしまった。
寄りかかられた背中と肩に伝わる熱。それに反応して、躯のもっと深い所に発生した熱源を感じ、顔を赤らめた。
「……重い」
「俺の愛し方が?」
耳殻に僅かにかかる吐息。聞き慣れたはずの甘い声。
「馬鹿野郎」
精一杯怒った風を装ったにも関わらず、肩を抱く彼の腕に力が増す。
陽香は知っていた。どうして彼がこんなにもわかりやすく、陽香に愛情表現するのかを。
そして、行動の理由も彼の思いも知っていながら、「もう止めていいよ」と言えないでいるのだった。
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