bridge・ Go♪ hug♡(そのⅡ)
例の店の動画をチャンネルに上げていた頃は、一日千人前後、28日で3万前後の視聴回数があったが、今では一日百前後、28日計算で3千前後に減ってしまった。まぁ別にユーチューブの収入で食っている訳ではないのでどうでもいい。俺の目的はあくまでも思い出作りだがら。
例の店の動画で視聴回数を稼いでいるとき、はっきり言って、それは俺の弱みにもなっていた。リタイヤ生活で他人との関わりを全部断ってきた俺なのに。
店での動画撮影が禁止されたり、席をステージから離されて撮れなくされたり、今まで撮ってアップ済みの動画が公開出来なくなったりとかの意地悪が無いとも限らない。もしあったらどうしようなどといつも不安を感じていた。視聴回数を数千、数万と稼げるのは例の店の動画だけだったから。でも、例の店の動画を非公開にして1ヶ月経ったら吹っ切れた。もうどうでもいい。高がユーチューブだ。ただ、活動を止めなければいいだけだ。半年活動しなかったらアカウントが停止される。
嫁が頓狂な声で、「例の店のホームページに何か書いてあるよ」
自分のパソコンの前に座っていた俺は、「何かじゃのうて開いて見せれや」
――写真・動画撮影に関しましてはご自身のお席からでのみお願いいたします。なお、撮影した写真・動画に他のお客様が写り込んている場合は、SNS並びにYou Tubeへの投稿はしないで下さい――
これ、もし俺がまだこの店の動画に頼っていたとしたらどれだけのショックを受けたか、想像するだけで恐ろしい。良かったぁ、他人事で。
この一文が出たら、人が映り込んでいる、今、You Tubeの中にある動画、全部削除させるべきではないのか?潔く消してしまった俺のように。まぁ俺は何も言わない。関係ないから。それと、もう動画を撮れる席は丸テーブルの最前列だけだ。でも、この二席、常連にしか割り当てられないので、1ヶ月に1回、まだ何年も通ってないような動画オタクはもう絶滅危惧種だな。かわいそうに。俺は関係ないが。
俺も禿げ隠しに帽子を被っているが、アイドルオタクの顔ぶれの中、俺と歳が近い、ハゲオヤジが結構居る。でも、いつも思うだが、彼ら、良いカメラ持ってる。羨ましい。俺はXperia1とXperia5マークⅡのスマホ二台だけだというのに。
今日のご当地アイドルはダンススクールZEROに所属するかわいい女の子のユニット、bridge go hugだ。
一曲目は、大塚愛の「さくらんぼ」
二曲目は、ブッチモニの「ちょこっとラブ」
三曲目は、おジャ魔女ドレミの「おジャ魔女カーニバル!!」
アンコール曲も、「おジャ魔女ドレミのおジャ魔女カーニバル!!」
彼女たち、最年少は中学生だ。ステージに飛び出す前、年配のマネージャー?から背中を叩いて貰って気合いを入れていた。この四曲の中で、俺が知っていたのは大塚愛のさくらんぼと、曲は知らないが、プッチモニというグループ名だけだった。
ふと疑問が湧いてくる。いったいオールディーズってなんぞや?オールドとつくから曲も古いが、ボーカルも観客も古い。って言うか、ボーカルは四十代・五十代、観客もアラ還ばかりだ。そこには若さなんて微塵もない。ぎりぎり、あゆみちゃんだけ三十台だ。彼女は例の店に育てられて今があるのに、どうして、まりのちゃんは飼い殺しなんだろう。22歳の彼女を育て、オールディーズを引っ張るようになってこそ、この業界にも未来があろうというものだろうに。