再会
長い髪を風に揺らせた女性のもとへ、一人の男がゆっくりと近づいて行く。
抱き合えるほどの距離までくると、男は穏やかに口を開いた。
「待たせたね」
ほんの少し皺のいった口元に、女は微笑みを浮かべた。
「ずいぶん待ったわ」
見つめ合う二人の目には、涙が浮かんでいるようにも見えた。
「子供たちは元気?」
「ああ、元気だよ。当分ここには来ないはずだ」
「そう、それなら良かったわ」
安心した証に、女は髪を撫でた。その癖を見るのも懐かしかった。
「お別れは言えたの?」
男は首を横に振る。
「突然の事だったからね。まあ寿命だから悲痛ではなかったよ」
「そう」
風はまだ優しく吹いている。
「積もる話が山ほどあるよ」
「ええ、向こうでゆっくり聞くわ」
女はそう言って二人の行く先を見上げた。
空に浮かんだ雲の合間から、眩しいほどの光の筋が四方八方に広がっている。
「じゃあ行きましょうか」
女が皺だらけになった男の手を取ると、二人はその空の光へと続く階段を上り始めた。
幾枚も降り注ぐ純白の羽に迎えられながら、二人は光の中へと消えて行った。