追放
「アレク・リースフェルド。貴様を国家反逆罪で追放とする。」
それが国王から言われた言葉だった。どうやら僕は嵌められたらしい。召喚士として契約した仲間たちの力を借りてこの国のために働いてきた。第二王女様とも婚約できた。それが気に食わなかった誰かが僕を嵌めたのだろう。そして僕は下界最悪の土地、黄昏の地へと飛ばされた。
「懐かしいな。ここも。」
僕は幼少期をここで過ごしている。もともと孤児だった僕は気づいたときにはここで暮らしていた。いろんな魔獣や悪魔、魔王たちとも仲良くなり、神々とも仲良くなった。僕が人間界に行きたいと言ったとき、みんなは僕と契約してくれた。だから僕は召喚士として活動できた。ここは言わば故郷である。
「あ!アレクだ!」
歩いていると懐かしい声が聞こえた。
「アレクー!」
「うわあぁ!」
振り向くとそこには今にも僕を押し倒しそうな女の子がいた。
「フィー!」
「アレクー!」
この子はフィー。ネメア一族の女の子だ。
「帰ってくるならいってよー!」
「あはは。」
僕らはこれまでのことを話しながらフィーの家に向かった。道中、いろんな友達と再会し、流れで僕の帰還を祝う宴が開かれることになった。
「それにしても人間たちはほんと変わらないよね。今度こそ滅ぼしてやろうかな。」
「もういいよ。もうあの国と関わりたくないから。」
久しぶりの故郷の料理を楽しみながらフィーとそんな会話をする。
一方、王城では
「失礼します。」
緊張状態が続いていた。
「ようこそお越しくださいました。巫女様方。」
突如、各国の巫女たちが王城に集結したのだ。巫女というのは神々からの神託を人々に伝える神々の使徒。王でさえも命令できない世界最高権力者である。
「本日は神託を受け参上いたしました。」
「おお!わざわざご足労いただき感謝いたします。」
「ではここからはお願いいたします。」
「え?」
そう言った瞬間、王の間に神聖な門が現れた。そしてそこから神々が現れる。その場で王を含めた全員が膝まづく。
『人間の王よ。』
「ははぁ!」
国王は深々と頭を下げる。
『我々、神々と神獣、聖獣、そして巫女はこの人間界より離れます。』
「え?」
その場にいる巫女たちを除くすべての者が驚いた。
「な、なぜですか!?私たちはあなた方に一度も不敬なことはしていないはず・・・」
『黙りなさい!』
神気が放たれる。それだけで国王は気絶しかける。
『最後の慈悲として教えてあげましょう。先日、あなた方が追放したアレクという者をご存じですね?』
『!!』
その場にいた全員が驚いた。まさか神々からその名前が出るとは思っていなかったのだ。
『彼は我々が育てました。』
『!?』
その言葉を頭が一瞬拒否した。
『彼はあなた方が恐れる黄昏の地に現れ、我々だけでなく、魔王たちとも友好を結び、創世以来ありえなかった神魔同盟の立役者になりました。そして彼が人間界に行きたいと言ったとき、我々は彼と契約しました。そのおかげで彼は召喚士として生きれたのです。』
未だ誰も知らないアレクの過去。何度も彼の過去を調べようとしても王国に来るまでの経歴がわからなかったわけだ。
『そしてあなた方は醜い嫉妬により彼を追放した。本当なら人間を根絶やしにしようかと思いましたが、彼がそれを望まなかった。ですから私達はこの人間界を去るのです。』
自分たちは気づかぬ内に最大の不敬を働いていたのだと知り、貴族や国王は顔を真っ青にする。
「そういうことですのでお父様、私も失礼しますわ。」
そう言って現れたのは第二王女でありアレクの婚約者、そして最高神の巫女であるレーナ・フォン・ビートルガム。
「れ、レーナ・・・」
「あらお兄様、それにお姉さま。随分と顔色が悪いようですわね。」
『では我々は失礼する。』
「ま、待ってくれ!謝る!謝るから!ほしいものはなんでも与える!だからいかないでくれ!」
国王が泣き始めた。
『もう遅い。せいぜい滅びぬように考えるのだな』
そう言って神々しい光とともに神々と巫女たちは消えた。