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大阪を歩く犬6  作者: ぽちでわん
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西国街道を三宮まで

このまま西に進んでも旧道は全く残っていないようなので、ちょっと南側を歩いていくことにした。面白そうなところが南側に並んでいて。

都賀川公園を南下して、すぐの大石駅を過ぎ、西の西灘公園へ。西灘公園は西に向かって遊歩道みたいになっていて、ここを進んでいった。駅近くの住宅密集地にあるにしては人の姿はなかった。

遊歩道の西側は広い公園(ここも西灘公園)になっていた。横は阪神本線の高架。ここを東に少しバックしたところに船寺八幡宮があった。東向厄除八幡宮だって。

神功皇后が三韓征伐の帰りに寄ったと言われているそうだ。というか、船上で台風に遭い、ここでやりすごしたのだとか。

後には八幡太郎(源義家)もやって来て、石清水八幡宮から八幡神を勧請したと伝わるのだって。

西灘公園の西側の道を横断歩道で渡り、そのまま西に行くと求女塚西公園だった。ここに処女おとめ塚古墳で知った西求女もとめ塚古墳があった。

緑の多い広い公園で、その中に古墳があり、形もほぼそのままにその上で遊べるようになっていた。

どこかの神社で、公園と一緒になっていて(それはよくあることだけれど)、なんだか神さまと一緒に遊べるみたいなところだな、と思ったことがある。そんなやさしい神さまの感じがした。

同じようにここはやさしい古墳の感じがした。古墳が一緒に遊んでくれる、みたいな。

3世紀後半の前方後方墳と説明にあった。乙女塚古墳と同じ前方後「方」墳。新しい説明板には「4世紀前半の」と書かれていた。

3世紀後半のものって説が有力なようだ。

今まで見てきた中で3世紀のお墓って、高槻の安満宮山古墳、岡本山古墳、柏原の玉手山古墳群とか。服部遺跡(豊中)では弥生時代後期の、前方後円墳につながる古墳っていうのが見つかっているらしかったし、各地に有力者がいたんだな。

3世紀にしても4世紀にしても、神功皇后の時代にはすでにあったんだな。

海に近く古墳があれば、そこに有力者がいるって目印になっただろうな。やましい者は近寄らず、友好関係を持ちたいものは近寄ったかな。

兎原処女うないおとめ伝説の莵原壮士おとこの墓」という伝説があると説明にあった。

一人の乙女をめぐって二人の男(莵原壮士と茅渟壮士)が争い、乙女は自殺。男たちも後を追って死んだのだって。有名な話で、万葉集にも詠まれ、観阿弥、世阿弥の謡曲とか、戯曲とか物語にもなっているそうだ。

西と東の古墳(西求女塚古墳と東求女塚古墳)が真ん中の古墳(処女塚古墳)の方を向いていることから生まれた伝説とされているけれど、本当にそんな話があったのかもしれない。莵原の男と茅渟の男が1人の女性を巡って争った悲劇があり、後の人が「ほら、あの3つの古墳がその三人の墓ですよ」と物語ったのかもしれない。

古墳のこんもりしたてっぺん部分には誰も人がいなかった。木々が育ち、木陰の中、真ん中を向いて並んだベンチにカラスが一羽止まっていただけ。

時間が止まっているようだった。そこに立ってみると、木々の向こうにやっぱり山が近かった。


公園の北側の道を西に向かうと国道2号線に出た。少し右手の交差点(岩屋北交差点)を渡り、西へ。ここが西国街道だった。

みやこ橋で渡ったのは西郷川。北の摩耶山から流れてくる川のようだった。

岩屋公園があり、地名は岩屋で、どうして岩屋なのかはよくは分からないようだった。

そのまま進んでいくと、左手に白塀が続いていた。大きな旧家かと思った。塀が途切れたところで南に下っていく道があり、その向こうは突然の都会だった。

かなりの傾斜になっていて、下った南には2号線が、上った北には岩屋駅(阪神本線)が走っているみたい。

道を下っていってみると、途中、左手に大きな塀の中に入っていけるところがあった。入ってみると、旧家ではなく、神社だった。敏馬神社だって。「みぬめ」と読み、式内社であるらしい。

ここが面白いところだった。

高低差の激しい中に神社はあった。ここも船着き場だったとかなのだろうな。亀之森住吉神社を思い出した。

縄文時代、暖かくなってずいぶん海面が上昇した時代にはこの南がみんな海の中。上町台地の西側と同じように、押し寄せる波で南端に崖がつくられていった。その「縄文海進による波食崖」が神社の激しい斜面になったんだな。

説明によると最近まですぐそばが海岸で、「須磨か敏馬か」と言われる美しさだったのだって。今ではずいぶん南の方まで埋め立てられて、内陸部になっているけれど。住吉大社なんかと同じだな。

一帯は「敏馬の浦」と呼ばれていたらしく、「敏馬の浦」を詠んだ歌がいっぱい掲示されていた。万葉集に選ばれているという歌もいっぱいあった。「みぬめ」と「見ぬ」をかけて詠んだりしていた。読み手は柿本人麻呂、大伴旅人、藤原定家、吉田兼好、賀茂真淵など。

江戸時代、灘で酒造が盛んになり、酒造他、関係する材木商や廻船業なども富豪となっていったのだって。

彼らを頼って与謝野蕪村やその弟子の呉春なども訪れて歌を詠んでいるらしかった。

境内にはかつての敏馬を写真とともに振り返るコーナーがあって、それも面白かった。

明治34年、ボートハウスがつくられる。ボートハウスってよくは分からなかったけれど、湾港というのでいっぱいやって来ていた外人さんたちの娯楽施設だったのかな。

明治38年、阪神電車が走り、「仏壇が走っている」ようだと言われた。

豪邸もいっぱい建ち並ぶようになった。近くの岩屋公園も森本倉庫創始者の別荘跡なのだって。

大正15年、野田(大阪)から敏馬まで阪神国道線が走る(昭和50年廃止)。阪神電鉄の路面電車だったらしい。


敏馬神社の祭神は元は「ミヌメ」なる女神。

水の神様のミヅハノメからみぬめになったという説もあるのだって。境内にはミヅハノメを祭神とする水神社も祀られていた。

他にも神社には面白いことが書かれていた。神功皇后は新羅(三韓征伐)に行く前、神前松原(豊中市)で神集いをしたのだって。能勢の美奴売みぬめ山(今の三草山だと言われている)からも神がやって来て、うちの杉の木で船を造りなさいなと言ったのだって。

その通りすると無事に帰還。けれど船はこのあたりで進まなくなって、ここにミヌメの神を祀り、船もここに残したのだって。

勝手に想像すると、ミヌメ神は能勢に力を持っていた神で、神功皇后に協力した人だったのかな。

そして勝手に想像をひろげると、みぬめはミヌ女、ツヌコリ一族の姫だったなんてことはないかなあ・・・。


神社の北側の道でここまでやって来ていた。その続きを西に進んでいくと、行き止まり、少し北側の道で西へ向かった。

脇浜公園があった。ここも寺跡か邸宅跡だったところかな?

それから右手に素敵なURが現れた。ルネシティ脇浜町だって。神戸製鋼の跡地らしかった。

何かの高架下を通った。後に知ったことには、ここは小野浜から国鉄の灘駅にかけて走っていた臨港鉄道(貨物線)跡の歩道橋。

このあたりで急に山が近くなった。ここまでずっと右手に山が見えてはいたけれど、ここではどアップで山が見えた。少し南には春日野駅(阪神本線)があったみたい。

北にもなにやらありそうで、行ってみた。中村八幡宮だった。58代天皇の頃、石清水八幡宮から勧請したのだって。新しい建物だった。ここも震災でリニューアルしたのかな?

それから続きを行くと、どんどん都会になっていった。

川が流れていて、生田川らしかった。渡った橋は雲井橋。ここに旧西国街道の説明があった。それによると、西国街道には本街道と浜街道があるらしかった。

打出あたりから2号線あたりを歩いてここまでやって来た。それが本街道。浜街道は親王寺から43号線あたりを行く道らしかった。2本の道は生田神社あたりで1つになるのだって。


北には山が見えた。山のすぐ手前まで迫り、ビルが建っているのが見えた。新神戸かな。ハイキング姿の人たちがいっぱいいた。

前に新神戸駅近くからハイキングに行ったことがある。布引の滝なんかがあったあのあたりから生田川は流れているのかな。

そのまま西に進むと、大安亭市場なる商店街と交差。「安くて何でもそろう」だって。活気のある商店街で、ついここを歩いてみた。

本当に安い店が多くあり、豚足なんかも売られていた。創業70年というパン屋さんでパンもゲットした。

続きを西に進むと、この道も商店街風だった。

そしてどんどん都会になっていった。いろんな国の人が住んでいるみたいで、ベトナムの食材のお店があったり、ゴミステーションには「外国人だけでなく、マナーの悪いすべての人に云々」の文言があったりした。

三ノ宮駅あたりに着くころには、都会ぶりに圧倒された。ごちゃごちゃしていて。

それもそのはず、駅もJR、ポートライナー、阪神、阪急とあるみたい。圧倒されてもう歩くつもりにはなれなかったから、ここまでにして帰ることにした。

神戸三宮駅から帰った。分からないままに改札に入ったら、阪神電車だったみたいで。

直通特急に乗ったら、停車駅は御影、魚崎、芦屋、西宮、甲子園、尼崎、梅田。阪急電車の特急は停車駅が岡本、夙川、西宮北口、十三、梅田だったみたい。そしてJRは新快速なら芦屋、尼崎、大阪。

散歩にしては遠くまで来たものだなあ。

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