またまたガーラ恒星州へ
情報部での一件の後、シンノスケ達はガーラ恒星州を訪れていた。
目的は正規クルーとなったミリーナの制服を作るためだ。
依頼するのは当然サイコウジ・デザイナーズだが、例によってミリーナの採寸データを送ればわざわざガーラ恒星州まで行く必要も無いのだが、シンノスケはそうはしない。
「あら?私の身体のサイズが必要ならシンノスケ様が直接測ってくれてもよろしいのですよ?」
ミリーナにそんなことを言われたシンノスケは得意技の聞こえないふりをするというヘタれな選択肢をして誤魔化したのである。
結局、再びガーラ恒星州へと足を運ぶことになったのだが、セイラの制服を作った時の反省を踏まえ、今回は事前にエミリアにも連絡しておいたため、サイコウジ・デザイナーズでの手続きの後にサイコウジの屋敷に招待されることになった。
「シンノスケの仕事も順調なようね。セイラさんに続いてミリーナさんもシンノスケと一緒に働いてくれるなんて。しかも、セイラさんもミリーナさんもとても優秀なんですってね?」
エミリアの言葉を聞いてミリーナとセイラが笑みを浮かべる。
「あの日、シンノスケ様が私を迎えに来たあの時。私は自分の遺伝子の奥底に眠っていた運命を感じましたわ」
ミリーナに負けじとセイラも身を乗り出す。
「私も、シンノスケさんに助けられました。家族を失う辛い思いもしましたが、それを乗り越え、今こうして笑っていられるのも全てシンノスケさんとマークスさんのおかげです。シンノスケさん達に出会えたのは私の運命だと思っています」
競うように運命を語る2人の様子にエミリアはコロコロと笑う。
「フフフッ、シンノスケの運命も色々と忙しそうですね」
悪戯っぽくシンノスケを見るエミリアと、期待の眼差しを向けてくるミリーナとセイラ。
「忙しいというより、運命の糸とやらにがんじがらめにされそうですよ」
シンノスケの言葉に皆が笑う。
「でも、よい運命だけでなく、おかしな連中に目をつけられたようですね。シンノスケなら万が一のこともないと思いますが、気をつけなさい」
わざわざ伝えていないのに、シンノスケの仕事や身の回りだけでなく、情報部員とのいざこざまで把握しているエミリア。
常に監視されているのかと不安になる程の情報収集能力で、先の連中以上の能力を持つサイコウジ・カンパニーの諜報員でもいるのではないかと疑う程だ。
「義姉さんには全てお見通しのようですね?」
「ろくに連絡を寄こさない弟を心配すればこそ。造作も無いことですわ」
にこやかなエミリアと対照的に憮然とするシンノスケ。
「・・・マークス、笑うな」
「わっ、笑っていません」
シンノスケの様子を見てミリーナ達は更に笑い、楽しい時間を過ごした。
ガーラ恒星州宇宙コロニーで休暇を過ごしたシンノスケ達。
数日後、ミリーナの制服が完成した。
「これは、素晴らしい出来栄えですわ」
サイコウジ・デザイナーズで新しい制服を身に纏ったミリーナは感嘆の声を上げる。
「ミリーナさん、とても素敵です」
ミリーナの制服はセイラの制服と同じサイコウジ・デザイナーズのトップデザイナーであるジーナ・ラングレーの手によるもので、基本的にはセイラと同じデザインであり、お揃いの制服にセイラも嬉しそうだ。
しかし、ミリーナの制服はミリーナのこだわりが反映されており、若干デザインが違う。
セイラの制服の白い帯革には小物入れのポーチが取り付けられているが、ミリーナの帯革には彼女が肌身離さずに持ち歩いているサーベルが差せるようになっている。
更に、セイラの制服はキュロットスカートとズボンが用意されており、セイラはキュロットスカートを気に入って、普段から着用しているが、ミリーナの制服の下衣はタイトスカートだ。
しかも、サーベルを振るう時の動きを妨げないように、スカートのサイドに深いスリットが入っている。
「シンノスケ様、見てください!とても動きやすいですのよ。サーベルを振るうのも何の問題もありません。とても素晴らしいですわ。ほらっ、見てください」
これ見よがしにサーベルを振るう動きをしてみせるミリーナだが、足を踏み出すとスリットからそのスラリとした脚が露わになり、とてもではないが直視出来る筈がない。
「いや、見てと言われても目のやり場に困る!」
「あら?私は何も困りませんわ」
これから先、シンノスケは常に目のやり場に困ることになりそうだ。
(いったいどうしたらいいんだ・・・)
「慣れるしかありませんね」
シンノスケの心の中の呟きにマークスは答えた。
「お前な、他人事だと思いやがって」
「そう言われましても、私自身は目のやり場、というか、カメラの範囲に困ることはありませんから、他人事と言われれば他人事ですね。もしもマスターがお望みならミリーナさんのお姿を保存してマスターの端末なりに転送しましょうか?多少は耐性がつくと思いますが?」
「とんでもないことを言うんじゃない!怒られ、いや犯罪だぞ!」
シンノスケとマークスの小芝居を見たミリーナの目がキラリと光る。
「それはいい考えですわ!私が同意していれば犯罪ではありません。是非そうしましょう!」
まるでネコ科の猛獣のような視線を向けてくるミリーナにシンノスケはため息をついた。
「2人とも、そんなことしてみろ。ミリーナの制服は全てズボンにして、マークスのカメラのレンズはペンキで塗り潰してやるからな!」
シンノスケの言葉にどこ吹く風のマークスとミリーナ。
その様子を見ていたセイラは自分のキュロットスカートの裾を摘まむ。
「もう少し短い方がよかったかな・・・」




