船団護衛2
無事に1回目の空間跳躍を終えたシンノスケ達だが、平穏な航行はそこまでだった。
空間跳躍を終えた翌日、国際宙域を航行中の船団は突如として5隻の所属不明船の襲撃を受けたのである。
「アンノウン5隻。航行識別波の発信なし・・・撃ってきました!」
セイラからの報告を受けたシンノスケはグラスモニターを装着しながらロックを解除して全ての武装を起動させた。
「了解、敵船からの先制攻撃を確認。ここからは問答無用の正当防衛だ!セラ、救難信号と戦闘信号を発信」
セイラは護衛戦闘の正当性を担保する各種信号を発信する。
「信号発信!以後アンノウンを敵船AからEと呼称します。敵船、船団から一定の距離を保ちつつ砲撃を加えてきます」
「了解。ケルベロスから各船、我々は現在宇宙海賊による攻撃を受けている。これより本艦が船団の指揮を執る。各船は次の指示があるまで現在の進路と速度を維持!ビートルは進路を確保しつつ独自の判断で応戦して構わない」
「了解。本艦はこのまま先頭を守ります」
今のところ敵船からの攻撃は射程外からの散発的なもので、それぞれの船のエネルギーシールドで十分対応可能だ。
「攻撃に積極性がないな?船団から護衛艦を引き離すのが狙いか?」
挑発にしても不自然な程に攻撃の手が弱い。
しかも、攻撃は主に船団の前方に集中している。
「いや、俺達の足を鈍らせるのが目的か?・・・だとすれば、セラ、レーダーの索敵範囲ぎりぎりの宙域の警戒を!マークス、ケルベロスの主砲のコントロールをそっちに回す。ユー・ハブ・ウエポンコントロール」
「了解。アイ・ハブ・ウエポンコントロール」
シンノスケは主砲の操作をマークスに任せると速射砲とガトリング砲で敵船を牽制しつつ周辺宙域の警戒を始めた。
「更にアンノウン反応。方位2±0、距離300(2時の方向、水平位置。距離300)。正体不明のエネルギー反応!砲撃の兆候、推定目標は本艦です!」
セイラが新たな敵船を発見する。
シンノスケはケルベロスを右に回頭させると新たな敵船に正対させた。
「遠すぎる!超遠距離射撃を狙ってるのか?マークス、新たな敵船Fに向けて最大出力で主砲斉射!当たらなくていい。敵の砲撃を妨害しろ!」
「了解。私の計算は完璧です。命中させます」
「おい、7号要件に抵触だ、余計なこと言うな、マークス」
シンノスケの言葉を聞き流しながらマークスは総合オペレーター席の主砲発射ボタンを押した。
超遠距離からケルベロスを狙っていたのは海賊船ブラックローズ。
民間用の高速船に偵察艦用の高出力レーダーと戦艦用の主砲を無理矢理取り付けた海賊船だ。
「主砲は何発も撃てないんだ、よーく狙いな。あの護衛艦さえ仕留めればこっちのもんだ」
ブラックローズのブリッジの艦長席で微笑んでいる女は海賊の首領のベルベット。
「目標、本艦に向けて主砲発射!射程外ですが、このままだと命中します」
ベルベットは操舵ハンドルを転把してケルベロスからの砲撃を躱しながら主砲を発射した。
「チッ!やるじゃないか!・・・狙いが外れちまったねぇ」
民間の高速船に戦艦用の主砲を無理矢理取り付けたため、ただでさえ狙いをつけ辛いのに目標からの攻撃を躱しながらの砲撃だ。
命中する筈がない。
「姐さん。主砲、外れました」
「仕方ないね。エネルギー充填を急ぎな!もう1発撃つよ!」
「アイサーッ!」
ベルベットは艦の姿勢を立て直しつつ、再びケルベロスに狙いを定めた。
海賊船の主砲がケルベロスの右舷を掠めるが、損傷らしい損傷は無い。
「マークス、何が計算は完璧だ?外したじゃないか」
「いえ、私の計算は完璧です。攻撃が外れた理由は敵船が躱したからです」
「そういうのを狙いが外れたって言うんだよ。まあいい、敵船Fに対しては攻撃を続行!敵に攻撃させる隙を与えるな」
「了解しました」
マークスは再び主砲の発射ボタンを押した。
ベルベットはケルベロスからの砲撃を躱しつつ主砲による攻撃の機会を狙う。
「チッ!流石だねぇ。私に攻撃の機会を与えないつもりかい?」
「姐さん、主砲エネルギー充填完了」
「了解。撃つよっ!」
ベルベットはトリガーを引いた。




