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満身創痍のケルベロス

 ケルベロスはアクネリア銀河連邦サリウス恒星州の領域にまで帰ってきた。

 ここまで来ればもう到着したようなもので、ケルベロスのブリッジ内もリラックスした雰囲気が漂っている。


「えっ?ミリーナさんの額の目って、常に開いているわけじゃないんですか?」


 ミリーナの第3の目に興味津々のセイラ。

 因みにセイラの言うとおり、ミリーナの額の目は今は閉じている状態だ。


「ええ、特に力を使わない時には閉じていますわ。力を使おうと意図すると開きますし、自分の身に危険が迫ったりしますと自然に開きますの」

「そうなんですか。あの、額の目って見え方?はどうなっているんですか?」

「それがね、第3の目が開くと他の目の視力が弱まって、額の目の視界が中心になるんですの。第3の目の視界って、全体的に赤みを帯びているんですのよ。しかも、左右の目も視力が弱まっているとはいえ、見えているから厄介ですの。2つの目で見るのと3つの目で見るのでは遠近感とかが違いましてね。慣れるまでは大変でしたわ」


 セイラとミリーナは意気投合したのか、2人で話が盛り上がっている。

 リムリア人特有の第3の目についてそんなに気楽に話していいものなのか?と疑問もあるが、ミリーナがペラペラと話しているし、マーセルスもそれを咎めようとしないので別に構わないらしい。

 シンノスケはそんなことを考えながら航行を続け、ケルベロスはサリウス恒星州の中央コロニーに到着した。


「サリウス恒星州中央コロニー港湾管理センター、こちら護衛艦ケルベロス。入港許可を願います」


 ミリーナとのおしゃべりをやめたセイラが港湾管理センターに通信を送る。


「こちら港湾管理センター。ケルベロスはガイドビーコンに従って第125ドックに入港してください」


 サリウス恒星州中央コロニーの宇宙港で3桁100番台のドックは政府用の特別なドックだ。


「了解しました。第125ドックに入港します。・・・シンノスケさん、お願いします」

「了解。ガイドビーコンを捕まえた。第125ドックに入港する。さて、ミリーナさん。どうにか無事にアクネリア銀河連邦まで到着しました。我々の役目もここまでです」


 シンノスケの言葉にミリーナは深々と頭を下げる。


「本当にありがとうございました。シンノスケ様、マークスさん、セラさんの3人は私達の命の恩人です」

「いや、我々は受けた依頼を遂行しただけですので我々に恩義を感じる必要はありません。もしも、それを感じてくれるならば、6325恒星連合国やサリウス恒星州の関係者にその気持ちを向けてください。彼等の仲介無しには我々はミリーナさん達を助けることは無かったのですからね」

「そうですわね。私の亡命に尽力してくれた皆さんに感謝しなければいけませんわね」


 シンノスケは黙って頷く。


 やがて、ケルベロスが政府用ドックに入港すると、ミリーナ達はアクネリア銀河連邦政府の役人に案内されてケルベロスを降りていった。


「また今度・・・。シンノスケ様に恩を返しに参上しますわよ」


 振り返ってケルベロスを見上げたミリーナは1人呟く。

 その呟きはタラップの上からミリーナ達を見送っているシンノスケに届くことは無かった。


 ミリーナ達と別れたシンノスケは改めてケルベロスを見る。


「見事にボロボロだな。これは、第2エンジンは駄目そうだな・・・」


 シンノスケが満身創痍のケルベロスの点検をしていると、ケルベロス帰還の知らせを受けたリナが駆け付けてきた。


「シンノスケさん!おかえりなさい。急で、無理なお仕事をさせてしまって申し訳ありませんでした。そして、この仕事を完遂してくださって本当にありがとうございます」


 感謝と謝罪の意味を込めて頭を下げるリナ。

 

「いえ、引き受けたからには仕事は仕事ですよ。・・・しかし」

「はい?」


 シンノスケはケルベロスの第2エンジンを指差した。


「今回の仕事では結構な損害が出てしまいました。組合からの強制的な仕事中のことなので、必要経費ってことで補償して貰えませんかね?」


 シンノスケの指の先を見てみれば、エンジンに大きな穴が開いている。

 反対側に回ってみると反対側にあるエンジンにも損傷が認められた。


「えっと、確かに組合からの強制依頼上のことですので、全額ではないにしても、それなりの補償は出来ると思います。私が上司に掛け合いますので、詳しい見積もりを出していただけますか?」


 仕事ができるリナが味方についたので、多少なりとも希望が見えてきた。


「分かりました。今回の仕事の損害について早急に見積もりを提出します」


 そんなことを話していると、港湾管理センターの職員から直ちにドックから船を出すように指示される。

 ミリーナ達を送り届けたケルベロスは用済みということらしい。


 シンノスケは自分のドックに移動すべくケルベロスに乗り込んだ。

 ついでなのでリナも誘ってケルベロスに同乗している。

 政府用ドックから商船組合までは軌道交通システムを利用してもそれなりに時間が掛かるが、ケルベロスならあっという間だ。

 リナは初めてケルベロスに乗り込んでテンションが上がったのか、マークスやセイラにあれこれと質問している。

 そんな様子を横目に見ながらシンノスケは政府用ドックからケルベロスを出した。


「さて、とりあえずはサイコウジ・インダストリーで見積もりをしてもらうか・・・」


 ケルベロスの修理が終わらない間は新たな仕事を受けることは無理だろう。

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― 新着の感想 ―
強制しといて全額負担じゃないとか、 全宇宙にことのあらましを垂れ流して信用さげるでw
[一言] 三つ目の女の子というと3x3EYESを思い出すわー
[一言] これは、お姉さまが見積り情報から、詳しく情報を知ってしまう流れでは…
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