決着
ブラック・ローズの艦内に激しい衝撃が走る。
「艦底部に直撃弾!火器エネルギー供給システムにダメージ。主砲出力30パーセント減。下部レーザー砲2門、ミサイルランチャー使用不能」
オペレーターの報告を受けてベルローザは声を上げて笑う。
「アハハハハッ!やってくれたねぇ!・・・でも、私の懐に飛び込んでくれた、嬉しいねぇ。ご褒美に抱きしめてやるよっ!」
ベルローザは操舵ハンドルを一気に押し込んでブラック・ローズを前転させた。
「さあ、真正面だ!逃がしゃしないよっ!」
照準器からはみ出す程の至近距離。
ブラック・ローズはナイトメアを完全に捉えた。
【ナイトメア】
ブラック・ローズの艦底部を狙った直後のため、無防備な船体上部をブラック・ローズの主砲正面に晒したナイトメア。
「敵艦、定点転回!警告、回避をっ?」
この姿勢のまま直撃を受ければ一撃でブリッジを貫かれる。
「間に合えっ!」
シンノスケは操舵ハンドルを一杯に切りながらナイトメアをひねり込ませた。
強引な機動でブリッジ内に警報が鳴り響く中、ナイトメアの主砲がブラック・ローズを捉える前にブラック・ローズの主砲が火を吹いた。
直撃。
ブラック・ローズの砲撃を受けてナイトメアのブリッジにまで爆発の影響が及び、ブリッジ内が爆風に包まれてパネルとモニターがブラックアウトする寸前、飛び散った破片を全身に浴びながらシンノスケは主砲のトリガーを引く。
主砲の3連射、真正面にいたブラック・ローズに命中した。
「命中したかっ!逃げるぞっ!」
「リョウカイ・・・」
辛うじて砲撃が命中したのは確認できたが、照明が落ち、多数のモニターが沈黙して闇に包まれたブリッジで攻撃の効果確認もできないまま船体を反転させて離脱を試みるシンノスケ。
何よりも優先すべきはナイトメアの状況確認だ。
「ナイトメアの操艦レスポンスが鈍い。損傷を確認」
「船体にシンコクな・ソン傷・・・クウカンチョウヤク制御しすてむ・・・に異常・・・」
「?・・・おい、どうしたマークス!怪我したのか?」
「ワタシは怪我をすることははアリマセン・・・。爆発に・巻き込ま・・ぼでぃをソンショウしたダけです」
「同じことだろうが!クソッ、暗くて見えない。大丈夫か、マークス!」
「ますたーの方こそ・・・ブリッジ内は非常照明が点灯していマスよ・・・」
ナイトメアのブリッジ内に鳴り響く警報の音が変わる。
異常な空間跳躍に対する警報だ。
「空間跳躍システムが暴走するっ・・・このままじゃ何処に飛ばされるか・・・いや、その前に空間跳躍の衝撃に耐えられない!」
「・・・・・・・」
シンノスケは制御を試みるが、体の自由が利かない。
【ブラック・ローズ】
ブラック・ローズの主砲がナイトメアの右正面に命中。
船体右舷側を抉り取った。
「やったかい!」
直後、ナイトメアの主砲が火を吹いた。
致命的な損傷を受けながら主砲を連射したことによりより船体を崩壊させるナイトメア。
「直撃来ますっ!」
ザックバーンの声に舵を切るベルローザ。
「チッ!間に合わな・・・」
ナイトメアの主砲がブラック・ローズの正面主砲付近に命中。
ブラック・ローズの船体前部を吹き飛ばした。
「直撃!攻撃用エネルギーシステムに深刻な損傷!誘爆します!」
「全員退艦!全員、逃げなっ!」
ベルローザが叫ぶ。
「とても間に合いませんな。残念です、ベルローザ様と宇宙海賊として暴れられることは叶いませんでしたな・・・」
「・・・そうかい。私も潮時ってことか・・・それは仕方ないね。敵はどうだい?仕留められたかい?」
穏やかな表情で座席の背もたれに身を委ねるベルローザ。
その視線の先にあるモニターに映し出されるのはナイトメアの姿。
こちらも致命的な状況で、爆散していないのが不思議な程だが、それも時間の問題だろう。
「敵艦内に異常発熱を確認。あの損傷ではあちらも無事では済みますまい。脱出の様子も見られません」
淡々と話すザックバーンにベルローザは満足げな笑みを浮かべる。
「そうか、相討ちかい。まあ、多少の不満はあるけど、仕方ないねぇ。まあ、冥府への道連れにはできたからね。せっかくだから冥府では仲良くしてみようかね・・・。向こうは迷惑だろうけど、とことん付き合ってもらうさ。私からの嫌がらせだよ!アハハハハハハハハハ・・・」
ベルローザの笑い声がブリッジに響き渡る中、ブラック・ローズは大爆発と共に轟沈した。
これでシンノスケと、ベルベットことベルローザとの決着がつき、2人の因縁はここに完全に終結となったのである。