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私闘、そして死闘

 真正面から砲撃を加えながら突っ込んでくるブラック・ローズを辛うじて躱すナイトメア。


「高速戦艦相手に正面からの撃ち合いは自殺行為だ!機動戦闘に持ち込むぞっ!」

「了解!」


 シンノスケはブラック・ローズの突進を避けると、ナイトメアを即座に反転させてその背後を取った。


 しかし、その間にブラック・ローズはその速力を活かしてナイトメアの射程外に逃れると、速度を落とさないまま弧を描くようにして反転し、ナイトメア目掛けて再突撃してくる。


「チッ!近距離戦には持ち込ませないってのか。思いどおりにはさせてもらえないな」

「マスター、高速戦艦相手に一騎打ちは流石に分が悪いです。速度でも火力でもまるで勝負になりません」

「だからこその機動戦だ、敵艦の艦首を基準に上下左右80度以上の位置、主砲の砲撃範囲外をに肉迫するぞ!」

「それにしても第3エンジンを失った本艦では分が悪いです」

「だろうな。こいつの機動性を遺憾なく発揮するには4基のエンジン性能をフルに使う必要がある」

「・・・マスター、危険です!」

「危険は承知だよっ!」


 シンノスケは停止させていた第3エンジンのスタータースイッチを入れた。

 損傷して停止させていた第3エンジンが息を吹き返し、推力を取り戻す。


「第3エンジン、いつ爆発してもおかしくない状態です。加えて動力伝達系にもダメージ。他のエンジンと同調していません」

「想定の範囲内。マークス、4つのエンジンの出力調整を任せるぞ!」

「・・・了解。お任せください」


 条件付きながらもその機動力を取り戻したナイトメア。

 シンノスケはブラック・ローズに相対するとスロットルレバーを一杯にまで押し込んだ。


「長くは持たない。短期決戦だっ!」



【ブラック・ローズ】

「やっぱり機動戦闘をご所望かい。あの時も艦と艦のドックファイトに持ち込まれたからねぇ。でもね、せっかくのお誘いだけど、私はダンスに付き合うつもりはないよ!」


 ナイトメアを正面に捉えたベルローザは主砲のトリガーに指を掛ける。

 高速戦艦の主砲だ、真正面から直撃を受ければ駆逐艦や巡航艦クラスならひとたまりもない。

 有効射程内ならエネルギーシールドごと撃ち抜いて一撃で粉砕できる。


「さあ、どっちに跳ねる?」


 照準器にナイトメアを捉えたベルローザは舌舐めずりをした。



【ナイトメア】

「敵艦主砲の射程に入ります。警告、このまま進むのは危険です」

「了解している!」


 マークスの警告を受けるまでもない。

 シンノスケはタイミングを見計らっていた。


「警告!敵艦に砲撃の兆候」


 モニターに映るブラック・ローズから閃光が走る。


「今だっ!」


 シンノスケはナイトメアを沈み込ませた。


「マスター!囮ですっ!」

「しまっ・・・」


 一瞬の判断を誤ったシンノスケのナイトメアに向かってブラック・ローズの主砲が放たれた。



【ブラック・ローズ】

「私には見えるよ」


 額の目を開いたベルローザはナイトメアを正面に捉えると、主砲でなく副砲のレーザー速射砲を発射した。

 速射砲では射程外だが、これはベルローザの罠だ。

 

 一瞬のタイミングを見計らっていたシンノスケはベルローザの罠に嵌り、反射的に牽制攻撃に反応してしまう。


「やっぱり下かいっ!反応のいい奴程引っかかるねぇ」


 ブラック・ローズの下に回り込もうとしていたのを予知したベルローザはナイトメアに向けて本命の主砲を放つ。



【ナイトメア】

「砲撃、来ます!」

「躱せるかっ?」


 シンノスケはナイトメアを横滑りさせながら加速させた。

 

 その直後、激しい衝撃が走り、ブリッジの照明が落ちる。


「当たったか?被害確認!」

「了解・・左舷に至近弾、直撃は免れましたが、船体を抉られました。艦内電源等に損傷を受けました。ただし、直ぐに復旧します」


 マークスの報告どおり、一度は消えた照明が復旧する。

 いくつかのモニターや計器が沈黙したままだが、航行に問題はない。


「致命傷は免れたか」

「というより、本艦は元々致命的な損傷を受けていますが?」

「問題ない!」


 シンノスケがナイトメアを走らせるとブラック・ローズとの距離が一気に縮まる。

 ブラック・ローズの主砲の第2射は間に合わない。


 ブラック・ローズの下部に飛び込むことに成功したシンノスケはナイトメアの艦首を引き上げた。

 狙うはブラック・ローズのメインエンジンだが、狙いを定める暇はない。


「この距離ならっ!」


 シンノスケは主砲のトリガーを引いた。


 一般的に宇宙船のエネルギーシールドは艦首部が1番厚くなっており、側面や艦底部は比較的シールドが薄くなっている。

 エネルギーシールドの出力の違いこそあれ、それは戦闘艦でも同じであり、シールドの薄い箇所を狙って、至近距離からならば駆逐艦の主砲でもシールドを貫いて船体に損傷を与えることも可能だ。


 ナイトメアの主砲はブラック・ローズのエネルギーシールドを撃ち抜いて、艦底部の装甲も貫いた。

 

「やったか?」


 シンノスケは口を滑らせる。


「非公式軍規第1条第1項第4号違反です!建てられたフラグのとおり、敵艦の損傷は軽微。やってはいません」

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