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出航準備

 レアメタルの手配と商船組合への申告を済ませたシンノスケ達はケルベロスへと戻ってきた。

 ブリッジに入るとセイラがオペレーター席でモニターを睨み、ブツブツと何かを呟きながら端末を操作しているが、どうやらダムラ星団公国への航行経路の設定をしているようだ。


 無限に広がる広大な宇宙空間ではあるが、超重力帯等の危険な宙域も多く、宇宙船が航行可能な宙域は限られている。

 船乗り達はそれら限られた宙域を航行して目的地に向かうのだが、様々な航路の組み合わせの中からより安全に、より効率がよい航路を繋いで航行計画を決め、その計画に従って航行の管理をするのが航行管制担当の腕の見せどころであり、その責任は重大だ。


 そんな重要な航行管制を任されたセイラは宇宙航路局が公開している航路に関する最新情報を入手し、船舶学校で使用していたマニュアルデータを駆使して航行計画を練っており、作業に集中するあまりシンノスケ達が戻ってきたことにも気付いてないようだ。


「セラの経験のためだ、そっとしておくか」

「そうですね。セラさんの邪魔にならないようマスターは艦長室に戻ってお休みください。私は貨物室で自分のメンテナンスをしています」


 シンノスケとマークスはセイラの邪魔をしないため、物音を立てないように足音を忍ばせてブリッジから出ると、シンノスケは自室である艦長室に、マークスは貨物室へと引っ込んだ。


「とはいえ、まだ夕方にもなっていない。何をして時間を潰せばいいんだ?」


 結局、自室に戻ってはみたがやることが無いシンノスケは就寝するまでの時間を艦内の清掃作業に費やすはめになったのである。


 日付が変わって翌早朝、シンノスケがいつもと同じ時間に起床してブリッジに向かうとセイラとマークスが航行計画のデータを確認している最中だった。


「おはようございますシンノスケさん。あのっ、ダムラ星団公国までの航行計画を立ててみたんですけど、確認してもらっていいですか?」


 徹夜したのか、充血した目で不安そうにシンノスケを見上げるセイラ。

 そんなセイラにマークスが助け船を出す。


「私も確認しましたが、特に問題点は認められません。マスターがよろしければ管制システムに登録します」


 普段はマークスに任せきりの航行管制だが、シンノスケも宇宙軍に所属していた時の経験や実績がある。

 加えて航行管制はシンノスケも得意とする分野だ。

 シンノスケはオペレーター席のモニターに表示された航行計画を見た。


(なるほど、船舶学校の成績が特に良かったと聞いたが、確かに優秀だな)


 セイラが立案した航行計画は良くも悪くも教科書どおりのような計画だ。

 徹底的に危険を避け、時間よりも安全を重視した計画で、シンノスケが見ても問題点は無い。

 これがマークスやシンノスケならば、安全を重視しつつ、無駄を廃した効率的な航行計画となり、セイラが立てた計画よりも1日か、上手くいけば2日程は短縮できるだろう。


「いいんじゃないか。今回はこの計画に従ってダムラ星団公国まで行こう」


 シンノスケが了承するとセイラの表情がパッと明るくなる。


「ありがとうごさいます。航行管制の方も頑張ります」

「当然だ。今回はセラの管制が要だからな。よろしく頼むぞ」

「はい」


 セイラの返事を聞いたシンノスケは大きく頷いた。


「そのために今のセラに必要なのは睡眠と休息だ。現時刻から明日の出航予定時間まで休息を命じる」

「えっ?でも、まだ朝ですし、少し休めば大丈夫ですよ。荷物の搬入とか色々と準備がありますよね?」

「それは俺とマークスでやっておく。セラの休息は艦長命令だ。シャワーでも浴びて、スッキリ目を覚まして、ゆっくり休みなさい!」

「えっ?・・いや、目を覚まして休むとか、シンノスケさん、言っていることが・・・」

「異論は認めん!マークスさん、セイラさんを自室までご案内しろ」


 シンノスケの命令を受けたマークスがセイラをブリッジからそっと押し出していく。


「ちょっ、ちょっと待ってください。目を覚ましてとか・・・」

「申し訳ありません。マスターの命令です。クレームはマスターにお願いします」

「だからシンノスケさんに・・目を覚まして休むとか、言っていることが・・・」


 シンノスケはマークスにエスコートされてブリッジを出ていくセイラの姿を笑いを堪えながら見送った。


 セイラを半ば強制的に休ませた後、シンノスケとマークスは出航の準備を整える。

 商品として購入したレアメタルは時間どおりに納品され、貨物室に収められた。

 セイラが立案した航行計画をシステムに登録すると共に商船組合にも送信しておく。

 エネルギー等の補充は済んでいる。


「後はセラの計画どおりに航行するだけだな」

「はい。確かに安全重視の模範のような計画ですが、オートパイロットの使用できない宙域も多いですね。操艦するマスターには骨の折れる計画ではありませんか?」

「まあ、効率的な航路については今後の課題だな。現時点でのセラは効率を考える必要はない。セラ自身がそれを理解しているんだろうな」


 出航準備も完了して、後は明日の出航を待つだけだ。

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― 新着の感想 ―
このルートを認めた上で改善点も教えてあげればエエのに 成長するにはさらに良いもの(良いルート作成方法)見せてあげた上で今回作成したルートでいくとかでも良さそう それとも終わった後に指摘して教育するのか…
[良い点] 非常にテンポよくストーリーが進んで話も面白いです。 [一言] まだ読み途中なのですがこの辺りの32、33話で呼び名がシンノスケの会話の中での呼び名がマークス・セラだったりマークスさんセラさ…
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