戦闘開始
【黒薔薇艦隊ブラック・ローズ】
黒薔薇艦隊旗艦ブラック・ローズのブリッジではベルローザが満面の笑みを浮かべていた。
「見つけたよ、ホワイト・ローズと亡霊。獲物を一度に見つけられるなんて嬉しいねぇ。最高のシチュエーションじゃないか!」
言いながら艦長席でブラック・ローズの操舵ハンドルを握るベルローザ。
「ベルローザ様、彼奴らに気を取られていますと本来の獲物を取り逃がすおそれがあります」
ザックバーンの進言にベルローザは頷く。
「分かっているよ。こっちの獲物の相手はブラック・ローズと直衛艦隊12隻で十分だよ。残りはエルドラ准将の指揮でエルランの旗艦シュタインフリューゲルの撃沈に向かいな!」
「しかし、本艦を含めて13隻では白薔薇艦隊との差がありすぎます」
「大丈夫さ、まあ見ていなよ」
ベルローザは確信に満ちた笑みを浮かべた。
【白薔薇艦隊】
「黒薔薇艦隊の大多数が転進しました。総旗艦シュタインフリューゲルの方向に向かっています」
報告を受けたエザリアは表情を変えることはない。
「やはり、ベルローザはエルランを狙っているのね。でも、そうはさせないわ。エルランにはまだ神聖帝国の皇帝としての役割があるのだから、ここで沈んでもらうわけにはいかないのよ。艦隊転進!ホワイト・ローズと護衛艦隊20隻を残して本艦隊はシュタインフリューゲルの援護に向かいなさい」
エザリアの指揮で白薔薇艦隊も二手に分かれた。
これでこの宙域では旗艦ブラック・ローズを含めた黒薔薇艦隊13隻と旗艦ホワイト・ローズ以下白薔薇艦隊21隻、そしてシンノスケのナイトメアが三つ巴の戦いを繰り広げることになる。
【ナイトメア】
「黒薔薇艦隊と白薔薇艦隊それぞれが分散。我々との戦力差が縮まりましたね」
マークスの言葉にシンノスケがため息をつく。
「敵艦隊の戦力と、現時点での我々との戦力差は?」
「黒薔薇艦隊、高速戦艦が13隻。白薔薇艦隊、高速戦艦8隻、巡航艦13隻。我々との戦力差は1対13対21です」
「絶望的状況に変化はないだろう!だいたい、13隻と21隻って、結局俺達は1隻で34隻を相手にしなければならないんだぞ」
「如何ともしがたい状況ですね」
「だろう?しかも、この戦場においては敵の敵は味方なんてのも通用しない。俺達以外はどっちを向いても敵ばかりという状況だ・・・っと」
ビーッ!ビーッ!
そんなことを話している間にナイトメアのブリッジに警報が鳴り響く。
「そうこうしている間に両方の艦隊から狙われています!どうやら、先ずは我々を始末してしまおうという意図のようですね」
シンノスケはスロットルレバーを押し込みながら舵を切る。
「そうだろうな・・・。マークス、戦闘管制と副兵装の操作は任せるぞ。お前の判断で攻撃目標を決めて構わない。いちいちの報告も無用だ!」
「了解しました」
シンノスケは頷く。
「それでは、本艦は当初の目的どおり、敵総旗艦シュタインフリューゲルを沈めに行くぞ!白薔薇、黒薔薇艦隊の包囲網を強行突破する」
シンノスケはナイトメアの艦首を白薔薇艦隊に向けた。
「前方の白薔薇艦隊が攻撃を開始しました。攻撃目標、本艦と後方にいる黒薔薇艦隊。・・・黒薔薇艦隊も攻撃開始。攻撃目標、本艦と白薔薇艦隊です」
「俺達だけが両方から袋叩きじゃないか!まあいい、回避運動とエネルギーシールドで攻撃を受け流しながら白薔薇艦隊の中に突っ込むぞ」
シンノスケは前後からの攻撃を躱しながらナイトメアの速度を上げた。
「白薔薇艦隊旗艦ホワイト・ローズが後退。艦隊の後方に下がります!・・・本艦に攻撃が集中し始めました。このまま突っ込むのは危険です」
「了解。マークス、ジャミング用意、最大出力だ!」
「了解ですが、レドームと電子戦用システムの損傷により電子戦能力が60パーセント減。劇的な効果は期待できません!」
「構わない!ジャミング開始!全兵装、出し惜しみは無しだ。一気に突っ切るぞ」
「了解しました。ジャミング最大出力、白薔薇艦隊の中心に向けて対艦ミサイル発射。続けて速射砲、ガトリング砲斉射開始します」
「よしっ、行くぞっ!」
ナイトメアは白薔薇艦隊に向けて突撃した。
【ブラック・ローズ】
「彼奴、私達には目もくれないねえ。狙いは私達と同じ、エルランのシュタインフリューゲルかい。でも、そうやすやすと思いどおりにはさせないよ。ザックバーン、亡霊は私がこの手で仕留めるから、他の各艦は白薔薇艦隊への攻撃を任せるよ。数で劣っているからといって撃ち負けるんじゃないよ!」
「仰せのままに」
ベルローザは麾下の艦隊には白薔薇艦隊への攻撃を命じ、自らはブラック・ローズでナイトメアに照準を合わせた。
「あの男の好きにさせておくとろくなことがないからね。いいかげん因縁に決着をつけさせてもらうよ」




