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作戦開始!

 ダムラ星団公国を神聖リムリア帝国から奪還するために出撃したアクネリア銀河連邦艦隊は停滞を余儀なくされていた。


 神聖リムリア帝国の支配下に置かれた旧ダムラ星団公国の残存艦隊による自爆と特攻という人命を盾にするに攻撃により思うように進軍することができなくなっている。

 全ての戦線が停滞しているわけではないが、全体的に進軍の足が鈍っていることは確かだ。 


 それこそが敵の狙いであり、攻撃の手を鈍らせれば敵の思うつぼであることは理解しているが、前線の兵士達の精神負担は無視できない。

 現時点において神聖リムリア帝国が戦況を巻き返す程ではないが、戦線の停滞による長期化は短期決戦を目論んで遠征してきたアクネリア軍としては看過できない状況だ。

 

 長期化により物資が不足すればさらなる士気の低下を招くし、敵に補給線を断たれれば最悪の場合、撤退を余儀なくされることすらあり得る。

 無論、そういった事態を想定して、何重にも対策しているが、戦場というものは常に想定外の事態が発生する可能性があるのだ。



 アクネリア連邦宇宙軍総旗艦アストライアーの会議室では総司令官アレンバル大将の前で幕僚達が議論していた。


「ここまできて躓くことになるとは・・・」

「人道を外れた策であるが非常に効果的です。圧倒的有利な筈の我々の足を止めたのですからね」

「しかし、だからといってこのまま手をこまねいているわけにはいかないし、敵の非人道的手段を非難している暇もない。そんなことをしても戦況は好転しないし、むしろ時間が経つにつれ悪化するだけだ。早々に進撃の足を強めて早期に決着をつけるべきだ。その方が犠牲を最小限に抑えられる。このまま時間を浪費すれば、それだけ兵士達の消耗を招くぞ」

「分艦隊指令の仰ることは正論ですが、実際に前線で戦う兵士達の精神的負担は無視できません。今作戦は同盟国を解放するという大義はありますが、兵士達は自国の防衛等ではなく、他国のために命懸けで戦わされているのです。その上であのような戦法を採られては彼等の精神が持ちません」

「しかし、極論をいえば我々には3つの選択肢しかないぞ。このまま停滞して無駄に消耗するか、困難を承知で進むか、ここまできて撤退するかだ。それを考えれば選ぶべき選択肢は1つしかない」


 このような会議の席でアレンバル大将はあまり発言することはない。

 幕僚達の議論を静かに聞き入り、皆の意見を集約した上で最終判断を下し、全ての責任を負うためだ。


 今回の会議も普段と同じように黙って聞き入っていたアレンバルだが、会議の最中に届けられた1件の報告を見て深く頷くと立ち上がった。


「会議の最中に申し訳ありませんが、只今届いた報告で方針が決まりました」

「・・・・」


 普段は最終判断の時にしか発言しないアレンバルの言葉に皆が静まり返る。


「実は、この状況を打開するためにある作戦を立案し、秘密裏に進めてきました。機密を守るために本作戦は私の他には一部の者にしか知らせていませんでしたが、作戦の準備が整いましたので、これから皆さんに説明します」


 前線に出た宇宙艦隊ではアレンバル大将と総参謀長、先任参謀の3人にしか知らされていなかった作戦だ。


「これは・・・。有効な策だとは思いますが、不安要素が大きい」

「確かに、ちょっとした綻びがあれば瓦解しますし、敵が対策を講じれは長くは保ちませんね」


 提示された作戦案を見て即座に作戦の欠点や不足部分を見抜く幕僚達。

 しかし、アレンバルもそれらの作戦の抜けは織り込み済みだ。


「確かに、不安要素の多い作戦ですが、成功の可能性は大いにあります。無論、同じことを繰り返せば敵も対策を講じてくるでしょう。だからこの作戦は敵が対策を講じる前に最大限の効果を挙げる必要があります。よって、第1次作戦はこの第2艦隊を中心とした大攻勢の中で実行します。これより宇宙軍作戦案第21号を発動します。作戦発動に伴い本作戦をリムリアの悪夢『夢魔作戦』と呼称します」


 総司令官が決定したのであれば幕僚達はその作戦を成功に導くためにあらゆる策を講じるのみだ。

 アクネリア艦隊は行動を開始した。



 同刻、ナイトメアは通常航路を大きく外れながらダムラ星団公国領に侵入していた。

 外装をステルス処理してあるが、任務の都合上敵に見つかるわけにはいかないので万全を期しているのだ。

  

 そのナイトメアのブリッジでマークスはアクネリア艦隊の通信を傍受していた。


『アクネリア第2艦隊司令部より展開中の各部隊に通知。補給の遅れが生じている。補給部隊の到着まで最短でも96時間後』


 軍用秘匿周波を使用しているものの、その内容は大したものではない部隊間連絡。

 しかし、これはナイトメアに対する通信だ。

 通信を傍受したマークスは作戦用独立端末に暗号文を入力する。


「夢魔作戦が発令。第1次作戦内容が開封され、行動宙域が指定されました。開戦予想時刻は32時間後」


 内容を確認したシンノスケはため息をつく。


「いきなりの大規模会戦か。人使いが荒いことだ。これは、使えるうちに使い切ってしまおうって算段かな?」


 そうはいってもこうなるであろうことは予測していたので特に驚きはしない。


「開戦の8時間前までには宙域に到着して潜伏する必要があります」

「ギリギリだな。急いで行くか。初戦で遅刻したり失敗したり、撃沈なんかされたら目も当てられないからな」

「そうですね。盛大な前フリの挙げ句にあっさり終了では、間が抜け過ぎています」

「そりゃ大変だ。・・・行くぞっ!」


 シンノスケは目標の宙域に向けて舵を切った。

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