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護衛戦闘1

 単独で神聖リムリア帝国艦隊に接近するヤタガラスと、僅かに遅れて続くホーリーベル。


「リムリア艦隊に接近。対象からの通信や警告の類はありません。しかし、艦隊各艦から火器管制レーダーの照射を受けています」


 複数の敵艦に睨まれている状況でもセイラは冷静を保っている。


「了解。無駄だとは思うが、こちらの正当性を担保するために必要な手順だ。リムリア艦隊に対して通告を発してくれ」

「了解しました、通告を開始します。・・・本艦進路上に展開する神聖リムリア帝国艦隊に通告します。本艦はアクネリア銀河連邦サリウス恒星州自由商船組合所属の護衛艦ヤタガラス。本艦は現在・・・」

「マークスはホーリーベルのマデリアと連携、ホーリーベルを経由して船団各船にデータリンクを構築」

「了解」

「ミリーナは電子戦用意」

「了解ですわ」


 シンノスケはヤタガラスの速度を落としつつ、慎重にリムリア艦隊に接近していく。


「本船団の針路を防ぐ神聖リムリア帝国艦隊に重ねて通告します。航行中の艦船の進路を理由なく妨害する行為は国際法に違反します。航路の優先権はこちらにあります。直ちに進路を開けてください。繰り返します・・・」


 その間にもセイラの通信と発光信号による通告が繰り返されるが、リムリア艦隊からの返答は無く、火器管制レーダーの照射は続けられているが、そんな中でもシンノスケはじっくりと間合いを見極めている。


「駄目です、リムリア艦隊からの返答ありません」


 セイラの報告を聞いたシンノスケが頷く。

 

「了解!マークス、後続の各船に機関停止、慣性航行の用意を伝達!」

「了解しました。ホーリーベルとの連携を開始」

『ホーリーベル、マデリアです。データリンク確認』


 マークスとマデリアがデータリンクを駆使して各船に情報を伝達する。

 これで準備は整った。


「複数のリムリア艦に砲撃の兆候・・・攻撃、来ます!」

「了解!エネルギーシールド最大出力!回避機動に入る!マークス、船団各船機関停止、進路そのままで慣性航行に移行。ミリーナ、妨害波の出力80パーセント!」

「「了解」」


 リムリア艦隊からの攻撃が開始され、船団から離れて先行していたヤタガラスに攻撃が集中する。

 ヤタガラスは攻撃をエネルギーシールドで受け止め、回避運動で躱しながら電子戦を開始した。


 実験艦として従来の電子戦艦とは全く違うシステムを装備するヤタガラスの妨害波はリムリア艦のレーダーのみならず、あらゆる機器やモニターをブラックアウトさせ、艦を行動不能に陥らせる。

 電子戦防護機能を有しない通常の艦船なら様々な機器が致命的に損傷する程に強力な妨害波だが、リムリア艦が防護機能を備えていたとしても、強力なヤタガラスの妨害波なら少なくとも数分から数十分の間は重大な影響を与えることが可能だ。


「リムリア艦隊からの攻撃が止みました。艦隊に混乱がみられます」


 状況を見極めて淡々と報告を続けるセイラ。

 その報告のとおり、リムリア艦隊は妨害波の影響をまともに受けて混乱に陥っており、同士討ちを避けるためだろうか、攻撃が止んだ。


「よし、今だマークス!」

「了解!各船に通知します」


 妨害波の影響を受けないように全ての機関を停止して慣性航行に入っていた船団の各船が再始動して速度を上げ、ヤタガラスに続いてリムリア艦隊の真っ只中に突入する。


「敵艦隊を突破した後、本艦は船団の殿を守る。先頭はフブキに任せる。ホーリーベルは船団の中央に移動、データリンクを維持してくれ」

『了解よ!任せておいて』

『ホーリーベル了解』


 リムリア艦隊を突破したヤタガラスは速度を落とし、船団の最後尾につく。


「全船突破に成功しました。・・・一部のリムリア艦が混乱から復旧しつつありますが、全体としては未だに混乱しています」

「了解。船団は今のうちに離脱しろ」


 船団は速度を上げて離脱を始め、殿を守るヤタガラスも船団がリムリア艦隊の射程外に脱したのを確認すると、船団を追って宙域から逃げ出した。 



 シンノスケの策が高じて1撃の砲火も発することなくリムリア艦隊を突破することに成功した船団だが、これで安心だという筈はない。

 目的地である惑星モルダバイトは目前だが、ここまでコケにされた神聖リムリア帝国軍がこのまま黙って見逃してくれはしないだろう。

 本当に危険なのはこれからだ。

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