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監獄コロニー制圧

 強襲揚陸艦バイソンが突入したコロニーは監獄コロニーとされているが、なにも犯罪者を収容する監獄のみの施設というわけではない。

 いくつかの階層に分かれているこのコロニーの上階層には現在は神聖リムリア帝国軍艦隊が駐留している沿岸警備隊の駐屯地があり、別の階層には航路局の管制センターや、旧ダムラ星団公国への入国の中継地点として出入国管理局や税関事務所等が集約されていた、いわば司法、行政施設の合同コロニーだ。

 無論、それらの施設で勤務する者やその家族等が居住しており、その生活のための都市もあるが、下層の監獄施設とは物理的に遮断されており、コロニー内を通っての行き来ができないようになっている。


 そんなコロニーの下層部分に突入した宇宙軍海兵隊第25戦闘大隊第3中隊は管制室を目指して前進を急いでいた。

 このコロニーは収容者による暴動等が発生した時に備えて下層部分のみをパージする機能や、下層部分を自爆させる機能がある。

 故に真っ先に管制室を押さえて中枢システムを掌握する必要があり、それを成し得ないと後続の部隊が突入してこれないのだ。


 突入して数分、第3中隊は帝国の守備隊を排除しつつ管制室の手前まで到達していた。

 管制室を守るのは2個小隊程度の帝国兵だが、時間を掛けてはいられない。

 中隊長のウェルターズ大尉は特殊鋼製の大盾を持つ隊員を前面に並べた。


「これより管制室に強行突入する!第1、第2小隊、大盾密集突撃、前っ!」


 大盾を密集させた隊員を先頭に第1、第2小隊が突撃する。

 一刻も早く、管制室を確保しなければならない。

 強襲揚陸艦バイソンとバッファローの海兵隊2個大隊で管制室や港湾管理施設、通信関連施設等を押さえなければ後続の部隊が突入してこれないのだ。


「グレット伍長、タリンズ兵長が被弾。軽傷です!」

「負傷者を下がらせろ!だが、怯むな!足を止めたら被害が拡大するぞ!」

「了解!トップス、ザリートが前に出ます!」


 管制室を守る帝国兵からの激しい抵抗を受けるが、突撃を開始した以上はおいそれとは止まれない。

 

 最前列の隊員がバリケードを蹴散らし、大盾を構えたまま帝国兵に体当たりする。

 第3中隊の一気呵成な攻撃の勢いに帝国兵の連携が崩れた。


 管制室に閃光・音響爆弾を放り込むと同時に第1小隊の第1、第3分隊が管制室になだれ込んで室内に制圧射撃を加える。


「第3小隊、今だ!」


 続いて第3小隊が突入し、管制室内の点検と管制システムの乗っ取りに取り掛かった。



【強襲揚陸艦バイソン・ブリッジ】

「ウェルターズ大尉より報告。管制室を占拠、システムを掌握したとのことです」


 報告を受けたボッシュ少佐は艦長席でコーヒーを飲みながら頷く。


「21分58秒・・・流石はウェルターズ大尉ですね。バッファローの方はどうですか?」

「本艦に遅れること13分、すでに突入し、第14戦闘大隊は所定の行動に入っています。なお、強襲揚陸艦バッファローは誘爆は免れましたが、大破し、航行不能に陥り、突入したドックで擱座しています。ハイネン少佐以下乗組員はバッファローを放棄して本艦に向かっています」

「よろしい。バッファロー乗組員の受け入れ準備を。ドックの警戒に当たっている第2中隊から1個分隊を迎えに差し向けなさい」

「了解しました」

「それから、第3中隊にはコロニーのドック全てを解放、後続部隊をナビゲートするように指示してください」

「了解」


 強襲揚陸艦バイソンが突入してから数十分、後続の強襲揚陸艦4隻が到着し、宇宙軍海兵隊1個連隊がコロニー各所に突入し、収容者の救出とコロニー全体の制圧に取り掛かった。



【交戦宙域・9-12戦隊】

 コロニー周辺の制宙権を確保する任務を担っていた軽空母アリエス所属の9-12戦隊は20機中5機の損失を受けながらもその任務を完遂していた。


 周辺宙域の神聖リムリア帝国艦隊は第9艦隊の猛攻を受け、その多くは撃沈、生き残りは任務を放棄して撤退し、戦闘はすでに終結している。

 ハーディン少佐の9-12戦隊も周辺の警戒に当たっているが、間もなく帰還指示が出る筈だ。


(初めての大規模戦闘で部下を5人失った・・・。最終的に何人連れて帰れるか・・・)


 これほど激しい戦闘の最前線で戦っておきながら、その損害が20機中5機ならば、軽微な損害とされ、その指揮を執り、損害を抑えたハーディンも高く評価されるだろう。

 だがその評価は軍内部からのもので、戦死した部下やその家族達の思いは全く違うのものかもしれない。

 ハーディンは軍の士官として、戦隊指揮官としてその思いを背負っていかなければならないのだ。

 

 恋人の写真を入れている懐に手を当てるハーディン。

 無論、自分自身が帰れない可能性があることも理解している。

 しかしそれでも、自分は無事に帰れると信じているし、その自信もある。

 『自分は大丈夫、無事に帰れる!』その気概が無ければ宇宙軍の戦闘艇乗りは務まらないのだ。


 そんなハーディンの部隊に帰還指示が出たのは海兵隊がコロニーを制圧し、収容されていた旧ダムラ星団公国の要人達が救出されて今回の作戦の全てが完了した後のことだった。

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