トレジャーハント2
小惑星に含有する鉱物をシーカーアイが検知してマーキングをし、2隻の採掘艇で採掘して回収する。
普段どおりの作業の流れだが、今回は違った。
『こいつは予想以上だ!』
グレンの言うとおり、希少鉱物が次々と掘り出されているのだ。
『シーカーアイからビック・ベア、こちらの小惑星にNo.1524の反応があります。予想埋蔵量約30トン』
『No.1524だと!激レアも激レアじゃないか!マイキー、シーカーアイがマークした小惑星を掘りまくれ。アンディ、マイキーの1号艇に寄せろ、そっちの船に載せてやる』
『ホーリーベル了解です』
掘り出されたレアメタルが続々とビック・ベアとホーリーベルに積み込まれてゆく。
さすがに10日間にも及ぶ採掘作業ともなれば不眠不休のぶっ通しというわけにもいかない。
探索艇シーカーアイのアリーサ、メリーサや採掘艇のオペレーターであるランディ、アレン、マイキー、トッド達の休息は必要だし、堅い岩盤を掘り、レアメタルを削り出す採掘艇のメンテナンスや部品交換も必要だ。
グレンも今回の採掘には万全を期しての心づもりらしく、ゆとりをもって作業を監督しているし、カレンも今回は採掘艇のバックアップに徹しており、作業には参加していない。
それでも十分以上に儲けが見込めるそうだ。
作業にはゆとりがあっても警戒に当たるヤタガラス、フブキ、ファントムや、作業が止まっている時には警戒に当たるホーリーベルに休息はない。
その中で問題となるのはアイラが1人で運用しているファントムだ。
さすがに1人で10日もの間不眠不休というわけにはいかないので、アイラが休憩をする時にだけマークスかマデリア、ミリーナやセイラがファントムに移乗して警戒の隙を生じないようにしていた。
そのような体制で場所を変えながら作業を進め、一団はどんどん小惑星帯の奥に進んでいく。
それは採掘作業が始まって7日目のことだった。
小惑星帯の奥、そこまで深いと宇宙海賊すら寄り付くことがない程の場所での作業をしていた時だった。
レアメタルが含有されている小惑星を探していたシーカーアイの船内。
「・・・メリーサ、小惑星じゃない変な反応を捉えたわ」
探索レーダーを操作していたアリーサが操船を担当していたメリーサに声を掛けた。
「了解。・・・何、これ?」
操縦席のモニターで確認したメリーサも首を傾げる。
モニターに映し出されたのは小惑星とは全く別の反応が点在している宙域。
レーダーの反応では表面は岩石に近いが、その内部はまるで違う反応で、レアメタル等の鉱物反応ではない。
「シーカーアイからビック・ベア及びヤタガラス。小惑星ではない反応が密集している宙域を確認しました。調査に向かいたいと思います」
アリーサの報告を受けたグレンが2人を止める。
『待て、先ずはデータを送れ!こっちで判断する』
グレンの指示を受けたアリーサはビック・ベアとヤタガラスにデータを送信した。
ヤタガラスでもシーカーアイから送信されたデータをシンノスケ達が確認する。
「これは、確かに小惑星ではなさそうだな。例の宇宙クラゲか?」
首を傾げるシンノスケにセイラが答える。
「いえ、宇宙クラゲのような信号は発信されていません。宇宙クジラでもなさそうです」
確かに、宇宙クラゲの特徴であるコミュニケーション信号は検知されていない。
『ビック・ベアからヤタガラス。シンノスケ、どう思う?』
「こちらでも分かりません。懸念していた宇宙クラゲ等ではなさそうですが・・・」
『どうにも気になるな。シンノスケ、シーカーアイと一緒に調査に向かってもらえるか?』
「了解。ヤタガラスからシーカーアイ、本艦が同行します」
『了解しました。よろしくお願いします』
ヤタガラスとシーカーアイは調査のために小惑星帯のさらに奥へと向った。
シーカーアイから送られてくるデータを確認しながらヤタガラスを進めるシンノスケ。
確かにその宙域だけ小惑星の密度が極端に薄くなっているが、それとは別の反応が密集している。
「間もなくカメラモニターでも確認できます」
セイラがブリッジのモニターを切り替えるのと共に、シンノスケは操縦席のモニターも切り替えた。
「なんだこれは?」
モニターに映し出されたのは、岩石のような物質に包まれた物体で、外観的には完全に小惑星だ。
しかし、シーカーアイからのデータではそれが別の物質であることを示している。
「シンノスケ様、これっ!」
ミリーナがモニター上の異変に気づく。
小惑星のように見えるが、それは全くの別物で、岩石のような体表を持つ宇宙生物、宇宙クジラだった。
シンノスケ達はモニターを見て息を呑んだ。
「これは、まさか宇宙クジラの・・・死骸か?」
その宙域には多数の宇宙クジラの死骸が漂っている。
言うなれば、宇宙クジラの墓場だった。




