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宇宙艦隊出撃

 ダムラ星団公国宇宙軍第3艦隊は5百隻以上の艦艇を要する公国宇宙軍の主力の一翼を担う艦隊だった。

 リムリア銀河帝国侵攻の際には艦隊配置の関係で参戦が遅れたものの、主力艦隊の名に恥じぬ奮戦で幾度も帝国の猛攻を押し戻した第3艦隊だが、ダムラ星団公国が敗北し、神聖リムリア帝国になった今、残された国民の殆どはヘイゼル中将率いる第3艦隊を裏切り者、卑怯者として憎悪の対象としている。


 損害らしい損害もなく帝国艦隊と渡り合ってきた第3艦隊は確かに精強だったが、戦況は1個艦隊の戦力で覆ることのできない状況にまで悪化してしまっていた。

 公国の敗北を目前にしてヘイゼルはある決断をする。

 麾下の艦隊の殆どを連れて国外に逃亡してしまったのだ。


 いかに敗戦濃厚であったとはいえ、守るべき国家と国民を見捨てて逃亡したヘンゼル達は残された国民からリムリア銀河帝国、その後の神聖リムリア帝国以上に国民から恨まれることとなったのである。


 そのダムラ星団公国第3艦隊を含めたリムリア銀河連邦艦隊がサリウス恒星州の宙域に集結した。

 総司令官アレンバル大将の座乗するアクネリア銀河連邦第2艦隊旗艦のアストライアーを総旗艦とし、第2艦隊5百隻、第6艦隊4百隻、第9艦隊3百隻、第11、14、15、17艦隊で合計6百隻、M19艦隊が250隻とアクネリア艦隊だけでも2千隻を上回り、それにダムラ星団公国艦隊4百隻を加えた大艦隊だ。


 アストライアーの指揮席に座るアレンバルは全艦隊に向けて出撃前の訓示を行う。


「さて、我々はこれより神聖リムリア帝国に侵攻し、ダムラ星団公国の領域を奪還する!これはダムラ星団公国と我が国の間で締結されている相互軍事援助協定に基づく行動であり、国際法上の正当性も我々にある。しかしながら、我々は大艦隊ではあるが、一国を攻めるには十分とはいえない戦力だ。しかし、神聖リムリア帝国は現在リムリア銀河帝国と内戦状態にあるため、我々とリムリア銀河帝国を相手に2正面作戦を強いられることになり、短期決戦に持ち込めば勝機は十分にある。なお、今作戦構成は二段階になっている。第一にダムラ星団公国領の奪還、これが至上目標だ。そして第二にダムラ星団公国の権利回復の後にはリムリア銀河帝国に対する警戒と牽制だ。諸君の中には他国のために命懸けで戦うことに疑問を感じている者もいるだろう。しかしながら、我々は軍人であり、命令があればそれに従って戦うのが軍人の仕事である。各艦隊は各級指揮官の指揮に従い秩序ある行動と作戦目標の完遂を期待する。・・・それでは諸君、仕事の時間だ。戦争を始めようではないか。各艦隊出撃!」


 アレンバル大将の命令一下、ダムラ星団公国奪還艦隊が出撃した。


 宇宙軍の大艦隊が出動したとなれば、これ以上情報を秘匿しておくことは不可能だ。

 アクネリア銀河連邦政府から全銀河に向けて『神聖リムリア帝国』に対する軍事行動の開始と、その正当性が発信された。

 無論、神聖リムリア帝国もリムリア銀河帝国にも伝わることとなる。

 尤も、アクネリア国内とはいえ、大規模な艦隊の移動が行われていたのだから、リムリアとて何の情報も掴んでいないということはないだろう。

 どちらのリムリアを攻めるのかを見極めていたのだろうが、何れにしても迎え撃つ準備はされている筈だ。


 こうして、アクネリア銀河連邦と神聖リムリア帝国は戦争状態に突入したのである。



 情勢が大きく変化した時、シンノスケはシンノスケで面倒な事態に曝されていた。

 

「シンノスケ、採掘行こうぜっ!」


 例によって空気を読まないグレン達が誘いに来たのだ。


「採掘って、何処に行くんですか?」


 アリーサの運転する車に乗せられたシンノスケは組合に強制連行される道すがら採掘現場の確認をする。

 情勢が情勢だけに場所によっては非常に危険を伴うことになるだろう。


 逃げるつもりは無いのに、シンノスケの左側をカレンが、右側をメリーサが固めているが、これではまるで犯罪者の護送だ。


「おう、今回はちょっとばかし危険が伴うが、がっぽり稼げる場所だ」

「でっ、目的地は?」

「ん?ここだ」


 助手席に乗るグレンからシンノスケの端末に送信された情報を確認してみれば、採掘現場はアクネリアと神聖リムリア帝国の領域の中間地点。

 両国の戦闘宙域ではないが、情勢の悪化に伴い航路の治安も悪化している宙域だ。

 流石のシンノスケも戸惑ってしまう。


「よりによってここですか?流石に危険過ぎでは?」

「確かにリスクはある。だが、この宙域の小惑星帯の潮目が良くてな、激レアの鉱物が狙えるんだ。この機会を逃せば二度とこんなチャンスは無い。勿論、無理にとは言わないぜ。俺も無茶な依頼であることは自覚しているからな。組合に行って依頼の内容をよく確認してから決めてくれればいいさ」

「・・・・」


 口ではそう言うが、シンノスケが断ることなど考えていなさそうだ。


 組合に連行されたシンノスケはそのままリナの待つ受付カウンターに向かった。


「あっ、シンノスケさん。・・・あ〜、やっぱりグレンさん達に捕まっちゃったんですね」


 シンノスケの姿を見て笑顔を見せたリナだが、背後にいるグレン達を見て表情を曇らせる。


「はい。有無を言わせず連れてこられました。・・・ということで指名依頼の内容を見せてもらえますか?」

「ハァ〜・・・分かりました。グレンさん達からの依頼の内容はこちらになります」


 リナは諦めた様子でシンノスケに対する指名依頼のデータを表示してシンノスケに見せた。

今年最後の更新となります。

今年も本作を含めた私の作品を読んでくださった皆様に感謝申し上げます。

来年は新たな形での本作をお届けできると思いますが、そちらも読んでいただけると嬉しく思います。

本作を読んでくださっている皆様、良いお年を。

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― 新着の感想 ―
お疲れ様です。来年も良い年でありますように。
いやいやグレンさんよ、危険は避けるべきやぞ…… 年末まで更新お疲れ様でした。 良いお年をお迎えください。
昔踊る大捜査線で、捜査本部が置かれて大捜査してる最中に主人公達は雨の中検問してたの思い出すね。 また、思いがけない接触があるのかもしれないが… 取り敢えずは酔い御歳を
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