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新しい船は慎重に2

 サイコウジ・インダストリーに移動してハンクスが見繕っていた船を確認してみるシンノスケ達。


「アラナミ型輸送艦ですか」


 ハンクスがピックアップしていたのは、これまた宇宙軍の現用艦であるアラナミ型輸送艦だった。

 ゲッコウ型の後継艦で、ペイロードは1300トン、ゲッコウ型と同様の緊急用ブースターを装備している輸送艦だ。


「こちらの船なら在庫がございますので速やかな引き渡しが可能です。ゲッコウ型の後継艦ですので、艦種転換もスムーズかと思います」


 確かに、ツキカゲからの乗り換えなら全く問題ないだろう。

 しかも、こちらの船は完全武装の状態だ。


 値段についてはオルカ級よりも僅かに安価だが、それでも中古ではないのでやはり高額であり、やはりアンディが石化している。


「これは、新造艦ですか?」

「はい、宇宙軍で欠損が生じた際に速やかに補充出来るように備えていた艦ですが、他にも在庫がございますので問題はありません。カシムラ様がご検討中のピレニーFCのオルカ級と比べても見劣りすることは無いかと思います。まあ、性能については一長一短、それぞれの船の特色とカシムラ様の求めるものを踏まえて判断していただければと思います」


 ハンクスの言うとおり、オルカ級とアラナミ型を比べれば、それぞれに優れている点、劣っている点があるが、どちらも魅力的な船だ。


「まあ、新しい輸送護衛艦の艦長はアンディだからな、アンディが決めればいいさ」

「・・・えっ!おっ、俺ですかっ?」


 突然のキラーパスに石化を解いて飛び上がるアンディ。


「艦長でもない俺が決めても仕方ないだろう?実際に使うアンディが決めるべきだぞ」

「でも・・・」

「それともエレンに決めてもらうか?」

「私に決めさせるとよく分からないからコイントスで決めちゃうわよ」


 エレンに煽られてアンディは覚悟を決める。


「わっ、分かりました!・・・でも、ちょっとだけ考えさせてください」 

 

 覚悟は決めても決断が出来ない。

 一旦保留することにし、ひとまず引き上げることにした。



 そして2日後、アンディが決断し、新たな護衛艦の注文を済ませたシンノスケはアクネリア首都に向けて出航する準備を進めていた。

 とはいえ、積荷の積み込みは済んでおり、後は運送管理責任者の到着を待って出航するのみだ。


「シンノスケさん、気を付けて行ってきてください。変な物を食べてお腹を壊しちゃダメですよ」

「マークス、シンノスケ様が都会の悪い女に騙されないようにしっかりと見張っていてくださいね」


 明日から訓練航行を行う予定のセイラとミリーナはわけの分からない心配をしている。


「お待たせしました!さあ、行きましょうか」


 明るい声に振り向いたシンノスケとミリーナとセイラ。

 そこに立っていたのは大きな旅行カバンを持った組合職員のリナだ。


「「「えっ!!」」」

「運送管理責任者のリナ・クエストです。シンノスケさん、マークスさん、よろしくお願いします」


 悪戯っぽく笑うリナ。


「シンノスケさん!どういうことですか?私、聞いてませんよ!」

「俺も聞いてない・・・」

「やりやがりましたわね!都会の女じゃなくて組合の女に騙されたのですか?」

「俺、騙されたのか?」  


 2人に詰め寄られるシンノスケだが、シンノスケが一番混乱している。


「マスターは気付いていなかったのですか?手続きの際のリナさんの様子を見れば一目瞭然でしたが。てっきり必然的な展開として気付いていたものかと思いましたが」

「マークス、そういうことは事前に伝えてくださいまし!」

「そうですよ?」


 2人の矛先がマークスに向かうが、マークスはポーカーフェイスだ。


「私に言われましても仕方ありません。気付かないマスターが悪いのです」

「マークス、お前っ!」

「そんなことを言っている間に出航時刻です」


 シンノスケの批難をあっさりと躱すマークス。


「そうですよ。さっ、行きましょう!」

「あっ、ちょっと!」


 シンノスケの手を取ってヤタガラスに向かって歩き出すリナ。


「ちょっと待ちなさい!帰ってきたらただじゃ済みませんわよ!」

「そうです!しっかりと説明してもらいますよっ!」


 今更ついて行くと言えない2人から投げ掛けられたその言葉はシンノスケかリナのどちらに向けられた言葉なのか分からない。

 ただ、シンノスケだけが混乱したままだ。 


 諸々の混乱?を乗り越えてヤタガラスの出航準備が整う。

 ここまでくればシンノスケも気を取り直して出航のシークエンスを進めている。


「出航準備完了。船台が移動します」

「了解。・・・って、あの2人は何をしているんだ?」


 ふと外部モニターを見ると、ミリーナとセイラが揃って白いハンカチを噛み締めながら見送っている。


「あれはお2人の今の心境を具現化して表現し、マスターに罪悪感を植え付けようという意図かと推測します。分かりやすく言えばヤキモチというものです」

「・・・本当に何をしているんだ」


 呆れてため息をつくシンノスケの背後で仮に副操縦士席に座るリナがクスクスと笑っている。


 シンノスケは何も悪いことをしていないのに、罪悪感に苛まれながらアクネリア首都へと旅立った。

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