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離脱

 無事に戦闘宙域を抜け出したシンノスケ達はいよいよリムリア銀河帝国帝都コロニーの管制宙域へとたどり着いた。

 今のところ戦火は帝都周辺にまで及んでいないが、周辺には帝国艦隊が展開している。


「以前にも見かけたが、この辺にいる帝国の艦船もやたらに突起物が多いな」


 展開している帝国艦隊を眺めながらシンノスケが呟く。

 

「この艦隊は帝国の近衛艦隊ですわね。儀礼艦隊の側面もありますが、リムリア銀河帝国最強の艦隊ともいわれていますわ」


 ミリーナの説明によれば、帝都コロニー周辺宙域に展開しているのは船体を赤と黒のツートンカラーで統一した近衛艦隊。

 皇帝の玉体と帝都の守りを担う近衛艦隊は、保有艦船が300隻にも及ぶ帝国最大の艦隊であり、その全てが最新鋭の高性能艦なのだそうだ。

 シンノスケが言った突起物が多いというのも、皇帝の権威を象徴するというだけでなく、各種センサーユニット等を強化した上での実戦的な外観ということらしい。


「近衛艦隊は超エリート艦隊で、入隊基準は能力と人格が最優先され、貴族の家柄等で入隊できるような甘いものではありませんのよ。配属されている艦も、戦艦だけでなく巡航艦や駆逐艦でも、通常型の戦艦と互角以上に渡り合えると言われてますわ」

「それはおっかない艦隊だな」


 今回は護衛対象のヴィレット船団が帝国の物資を運んでいるから誰何を受けることもないが、間違えてでも砲火を交えたくない相手だ。



 いよいよ帝都コロニーが視界に入る。


「凄いな、サリウスのコロニーよりも遥かに大きい。・・・そして、相変わらず突起物が多い」


 シンノスケの言うとおり、リムリア銀河帝国の首都星リムリアの軌道上に浮かぶ帝都コロニーはサリウス恒星州の中央コロニーよりも遥かに大きい。


「当然ですわ。あのコロニーにはリムリア銀河帝国の首都機能が集まっているだけでなく、皇帝の住まう宮廷もあるのですからね」


 ミリーナの説明にシンノスケが首を傾げる。


「ん?皇帝って軌道上のコロニーに住んでいるのか?首都星に住んでいるのでなくて?」

「はい。首都星にも宮殿はありますが、皇帝が住むのはコロニーの宮廷の方です。皇帝が惑星上の宮殿に住むと、コロニーに住む臣民が皇帝を見下ろす形になるということで、宮廷がコロニーにありますの。つまらない面子の問題ですわ」

「皇帝っていうのも色々面倒なんだな」


 そんな話をしているその間にも船団はコロニーに近づいていく。

 コロニー周辺宙域も近衛艦隊や他の艦隊が警戒しており、さらには数多くの戦闘艇が飛び交っていて警戒厳重だ。


「ヴィレット船団及び私達に入港許可が出ました」


 港湾局と連絡を取っていたセイラが報告するが、シンノスケは何やら難しい表情を浮かべる。


「あの、シンノスケさん?どうしましたか?」

「シンノスケ様?」


 考え込んでいたシンノスケが口を開いた。


「予定変更だ。ヴィレット船団の安全を見届けたら我々は入港することなく直ぐに帰還する。セラ、航行予定の変更を航路局に申請してくれ」

「えっ?はっ、はい。了解しました」


 ここまで来て休息も取らずに突然の予定変更。

 セイラは直ぐに手続きを始めるが、ミリーナは首を傾げている。

 

「どうしましたの?もし、私の立場を気にしてのことなら大丈夫だと思いますわよ」

「いや、それとは別だ。なるべく早くリムリアを離れた方がいいと思ってな」


 その間にセイラが新たな航行計画を立案して申請した。


「シンノスケさん、申請しましたが受理されませんでした。アクネリア銀河連邦、6325恒星連合両国に通じる航路で激しい戦闘になっているそうです。加えて神聖リムリア帝国の艦隊が航路を封鎖しているとのことです」


 報告を聞いたシンノスケは舌打ちする。


「チっ!展開が早いな。やはり神聖リムリア帝国の方が優勢か」


 計画変更の却下は亡命者のミリーナやそれを手助けしたシンノスケに対する政治的な判断ではなく、純粋に他国の民間船に対する安全配慮からのものらしい。

 しかし、シンノスケの言ったとおり、神聖リムリア帝国側が優勢ならば状況が好転する保証はないのだ。


「それでは改めて計画変更だ。我々はポルークス侯国側の国際宙域に抜けて、そこから空間跳躍で帝国領を飛び越えて帰還する。セラ、これで申請してみてくれ」

「了解しました、航行計画を変更。・・・受理されました」


 シンノスケは頷く。


「それではツキカゲとフブキに計画変更を伝達してくれ」

「了解しました」

「ミリーナにはヤタガラスの操艦を任せる」

「お任せください」


 その間にもヴィレットの船団は帝都コロニー宇宙港に入港してゆく。

 ここまでくれば護衛任務は完了だ。


「ヤタガラスからエレファントA3。護衛依頼ですが、これで完了として、我々はこのまま帰還します。依頼完了のデータ・ファイルを送信してください」

『こちらエレファントA3了解しました。データ・ファイルを送信します。ここまでの護衛に感謝します。カシムラさん達のおかげで私達の仕事も無事に完遂することができました。帰りの航路の安全を祈ります』


 データ・ファイルと共に未だ宇宙港に入港途中のエレファントA3や他の船から発光信号が送られてくる。

 全銀河共通の航路の無事を祈る国際信号だ。


 シンノスケはヴィレット船団に対して敬礼で応える。

 無論、船団からは見えるはずもないが、これもまた船乗りとしての礼儀だ。


「それでは我々は直ちにポルークス侯国方面に向かう」


 シンノスケの指揮の下、ヤタガラス、ツキカゲ、フブキの3隻はリムリア銀河帝国の帝都コロニーから離れ、帰還のためアクネリア銀河連邦とは真逆のポルークス侯国方面に向かった。

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