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6325恒星連合国に到着

 空間跳躍を抜けたヤタガラス。


「空間跳躍完了しました。周辺宙域に異常ありません。間もなくヴィレット船団が空間跳躍を抜けてきます。周辺警戒を!」

「・・・了解」


 セイラの報告を受けて警戒態勢を執るが、何か釈然としない様子のシンノスケ。


「ヴィレット船団がワープアウト。続いてツキカゲ、フブキがワープアウトしてきます」


 この宙域は6325恒星連合国の排他的経済宙域の目前であり、軍や沿岸警備隊が警戒に当たっているので宇宙海賊も殆ど出現しない宙域だ。

 ここまで来れば問題なく経由地である6325恒星連合国首都コロニーに到着出来るだろう。

 それなのに、シンノスケの表情は浮かないままだ。


「シンノスケ様、どうしましたの?」


 シンノスケの様子が変なことにミリーナが気付く。


「いや、何だか・・・肝心な部分が飛んだというか・・・空間跳躍、俺が操艦したんだよな?」

「何を仰ってますの?小惑星帯通過の時からシンノスケ様がずっと操艦していたじゃありませんか」


 シンノスケは首を傾げる。


「俺、空間跳躍実行時に何か言ったか?何か掛け声的な・・・」


 シンノスケの言葉にを聞いたミリーナとセイラの方が首を傾げた。


「シンノスケ様、一体何を・・・」

「シンノスケさん、どうしたんですか?」


 突然そんなことを聞かれても2人も困惑するだけだし、日常の何気ない言動なんていちいち覚えていない。


「お2人共、お気になさらずに。マスターの抗うことの出来ない宿命というか、呪縛のようなものですから」

「「???」」

「因みに、先程の空間跳躍時にはマスターは操艦と周辺警戒に集中していました。その際の言動については私も興味がありませんので記録していません」


 マークスの言葉を聞いたシンノスケはがっくりと肩を落とした。



 その後も順調に航行を続け、無事に6325恒星連合国の領域に入り、首都コロニーの管制宙域に入る。


「6325恒星連合首都コロニー港湾管理センター。こちらアクネリア銀河連邦サリウス恒星州自由商船組合所属のカシムラ商会の護衛艦ヤタガラス以下3隻です。リムリア銀河帝国ヴィレット・インペリアル・トレーディングの貨物船団の護衛任務中です。入港許可願います」

『こちら港湾管理センター、了解しました。各船は指定のドックに入港してください』


 無事に中継地に到着したシンノスケ達。

 ヴィレットの船団はこのコロニーに3日間滞在する予定なので、シンノスケ達もその間に補給を済ませ、もう1つの仕事である金属取引を片付けることにする。

 前回は失敗したメタルNo.35の取引だ。


 補給の手配をマークス達に任せたシンノスケはミリーナとセイラを伴って取引に向かった。

 相手は前回も取引し、失敗しながらもとりあえず顔繋ぎをしておいたMC12公社とケレンズ32商会だ。

 今回の商品はメタルNo.35が300トン。

 到着時に取引相場を確認したが、前回と違って価格は安定しているので大きな利益は期待できないが、手堅い取引の上で、それなりの利益は挙げられるだろう。


 2つの企業と交渉してみた結果、MC12とケレンズ32共に、まあ納得のいく内容だった。

 満足ではなく、納得のいくという微妙な結果は、どちらの企業も取引価格を割り込むことなく、仕入値と諸費用を差し引いても『それなり』の儲けが出る程度だったからだ。

 今回は護衛業務のついでということで300トンという金属取引としては少量の取引だったが、護衛業務無しで単体での仕事だったとしたら手間ばかり掛かって割に合わない内容である。

 同じ取引をするならば、少なくともツキカゲの最大積載か、加えてフブキにも満載してきたいところだ。


「交渉する時間も無いし、納得できる内容だから今回はこれで良しとするか」

「欲の無いことですわね。私に交渉を任せてくださればもう少し釣り上げられますわよ」


 自由商人としてはミリーナの言う通りだろう。

 シンノスケは商人として良く言えば堅実なのだが、見方を変えれば欲が無さすぎる。

 欲の無さ故に大きな失敗をすることもなく、商会を拡大してきたのだが、ミリーナに言わせると、もう少し大胆に勝負に出れば、今頃はあと2隻は船を増やしていても全く不思議ではないということだ。


「まあ、俺は商人としての専門教育を受けていないからな。護衛業務を主として、その他はついで位が丁度いいよ」

「まったく、ホントに欲がないことですわ。もう少しガツガツしていても宜しいと思いますの」

「あのっ、でもそんなところもシンノスケさんらしいと思いますよ。常に私達クルーのことを考えてくれていますし。私は今のままでも良いと思います」


 シンノスケのフォローをするセイラだが、ミリーナはそんなセイラの耳に口を寄せ、シンノスケに聞こえないように耳打ちする。


「堅実なのも結構ですけど、私生活においてはもっと欲深く、ガツガツしていても良いと思いません?」

「えっ?それって・・・」

「考えてもみなさい、私達シンノスケ様のクルーになって随分と経ちますけど、お互いに何か進展ありまして?少し位デートした程度じゃないですか?このままだと、シンノスケ様をその気にさせる前に私達、お婆ちゃんになってしまいますわよ」

「そっ、それは困ります!」

「でしょう?シンノスケ様にはもう少し肉食系?になって欲しいところですわ」

「・・・でも、シンノスケさんが肉食系になったらライバルが増えちゃいませんか?例えば、事業拡大して護衛艦が増えると、きっとシンノスケさんの周りにもっと女性が増えちゃいますよ。私が言うのもなんですけど、シンノスケさんって女運が良いのか悪いのか、よく分からないところがありますよね?」

「それも・・・そうですわね」


 内緒話をする2人に怪訝な目を向けるシンノスケ。


「2人で何をコソコソ話してるんだ?」

「「何でもありません」わ!」

「そうっ、私達のこれからの展望について話していたんですのよっ!」

「そうです。あのっ、私達の未来っていうか、将来っていうか・・・」


 2人の言葉を聞いてシンノスケは深く頷く。


「そうか。2人共、頼もしい限りだ」


 勘違いも甚だしい。


((このままじゃダメだ・・・))


 その後、MC12とケレンズ32の双方との取引を終えたシンノスケはミリーナとセイラの2人に食事に買い物と、彼方此方に連れ回される羽目になった。


 6325恒星連合での一時。

 それはシンノスケ達を待ち受ける運命の前の束の間の安らぎだった。

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― 新着の感想 ―
?だったけど、言えたのにワープを言い忘れたってことか
盆暗お兄ちゃんの反乱か さてさてどれだけの貴族がついているのやら。
前回誰一人言わなかったのは戦闘中だからといった理由ではなく、運命のせいか……不憫な……
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