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危険航路を突破せよ

「方位2、小惑星帯の張り出しがあります。方位11に変針してください」

「了解ですわ」


 船団はセイラのナビゲートで危険航路を進む。

 周辺の小惑星帯は予め収集しておいたデータとの若干の違いがあるが、セイラの想定の範囲内だ。


 セイラのナビゲートは完璧であり、小惑星帯を避けながら順調に進んでいたが、2日目に異変が生じた。


「レーダーに反応!右舷側小惑星帯に隠れるように追尾するアンノウンを感知。数7、識別信号の発信ありません」


 セイラの報告に緊張が高まる。

 レーダーを確認したシンノスケが頷く。


「了解。各種信号を発信し、アンノウンに警告を実施してくれ」

「了解しました。救難、戦闘開始信号を発信。アンノウンに対して警告を実施します。・・・接近中の所属不明船に警告します。こちらはアクネリア銀河連邦サリウス恒星州自由商船組合所属の護衛艦ヤタガラスです・・・」


 セイラが警告を行っている間にシンノスケは隊列の変更を指示する。


「ヤタガラスから各艦に指令。フブキは後退し、船団右舷中央部に着けろ」

『フブキ、了解!』

「ツキカゲは後退し、船団下部右後方の位置で警戒」

『ツキカゲ、了解しました』

「ヴィレットの船団は2列縦隊に変更し、予定通りの航路を進んでください」

『こちらエレファントA3、了解しました。よろしくお願いします』


 隊列を変更している間にもセイラの警告は続く。


「・・・警告する、本船団を追尾している所属不明船は直ちに識別信号を発信し、所属と航行目的を明らかにしなさい!返答なき場合は不法行為とみなし、法と規則に従って必要な措置を執る。これが最後の警告です」


 セイラの最終警告が行われた時点で護衛艦3隻は火器管制システムを起動させて臨戦態勢に入った。


「アンノウンからの反応なし!アンノウンの火器の指向を確認しました。明らかなる敵対行動とみなします。以後アンノウンを敵船AからGと呼称します」


 宇宙海賊による襲撃だと判断し、直ちに対抗手段を執ることにする。


「先ずは敵の目と耳を潰す。マークス、電子戦用意!」

「了解」

「ヤタガラスから各船、これよりECMを実行する!ジャミング実行中は通信とレーダーが使用できなくなるため、各船は本艦の動きを基準に隊列を維持!」

「敵船接近してきます。間もなく射程に入ります」

「了解。マークス、出力30パーセントでECMを実行!30パーセントを超えるとヴィレットの船団の機器まで破壊してしまうから出力には注意しろ」

「了解。ECM出力30パーセント、実行!」


 ヤタガラスを中心にジャミングが実行された。

 ヤタガラスと対電波妨害装置を装備しているフブキとツキカゲ以外の船の通信機器とレーダーが使用不能になる。


「敵船、ジャミングの影響により連携が取れなくなった模様です。敵船D、E小惑星帯の奥に入りましたが、離脱する様子はありません。距離を取って様子を見る模様。敵船C、Fが攻撃を開始しましたが、狙いが定まってなく、命中しません。・・・あっ、敵船Cが小惑星に衝突、爆散しました!」


 早速ジャミングの効果が現れた。

 

「了解。敵船からの攻撃を確認!これより自衛戦闘を開始する。各艦、ミサイルの類は使用できないから留意しろ。それ以外はそれぞれの判断で戦闘開始」

『・・ザザッ・ツキ・ザッ・ゲ、了解』

『フブ・・りょ・ザッ・・解』


 ツキカゲとフブキは対電波妨害装置を装備しているが、簡易的な装置なので通信には障害が出てしまう。

 それでも、自律追尾型のミサイル以外の兵器は使える筈だ。


「ヤタガラスも戦闘を開始しますわ!・・・指揮船、敵船Aを狙います」


 額の目を開いたミリーナが速射砲を操作して目標に狙いをつける。

 レーダー照準は使えるが、あえて覚醒能力を使い、マニュアル照準で撃つようだ。


「・・・速射砲、3連射!」


 ミリーナは規則的に3回トリガーを引く。


 発射された速射砲3発は全て目標に命中し、敵船Aを撃沈した。


「敵船Aを撃沈。続けてフブキの攻撃で敵船Fが大破、航行不能」


 これで残るは4隻だが、一方的な展開でまるで勝負にならない。

 加えてジャミングの影響で敵船同士の意思の疎通が出来ないようで、敵は戦線離脱の判断が出来ず、闇雲な攻撃を続けてくる。

 冷静な判断も出来ないようだ。


「敵船D、Eが小惑星帯の中から攻撃を開始、全く当たりません。・・・あっ、微弱な救難信号?・・・あっ、いえ、警戒信号を傍受しました」


 セイラが異変を察知した。

 受信したのは国際遭難信号に似ているが微妙に違う。 

 そもそもこれは宇宙船からの信号ですらない。


「宇宙クラゲか?」

「照合中・・・遭難信号とは違います。複数の小惑星に不審な動き・・・間違いありません、宇宙クラゲです!」


 戦闘に惹かれたのか、小惑星帯の中に生息する宇宙クラゲが集まってきたらしい。

 このままでは危険だ。


「マークス、ECMを中止しろっ!」

「了解、ECM中止しました」

「ヤタガラスから各艦、戦闘中止!周囲に危険な宇宙生物が集まってきている。全ての戦闘行動を禁止する」 

『ツキカゲ了解!』

『フブキ了解。戦闘中止』


 シンノスケはレーダーを確認し、脱出路を選別する。

 左前方の小惑星帯の切れ目だ。


「ミリーナ、操艦を替わる!アイ・ハブ・コントロール」 

「了解ですわ。ユー・ハブ・コントロール」

 

 シンノスケはヤタガラスを加速させながら操舵ハンドルを切る。


「本宙域から離脱する。方位10、本艦に続け!」


 船団は一目散に逃げ出した。

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― 新着の感想 ―
一時的に船団組んでる相手はともかく、自分のところの通信まで潰すジャミングってどうかと… 現代ですら周波数ホッピングでジャミング回避とかあるんだし。 船団組んでて近距離かつ機動も控えめならレーザー通信も…
電子戦なんて並の海賊はまず未経験だろうから、ジャミングかけられた時点で逃げる選択肢は無いわなあ。 そして彼らの気を引いたとΩ\ζ°)チーン
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