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危険航路に進入

 ヴィレット・インペリアル・トレーディングの船団と合流したシンノスケ達は最初の経由地である6325恒星連合国に向けて出発する。


 ヴィレットの船団は5千トンクラスの中型貨物船5隻で編成されているが、何れも自衛用の対空火器程度しか装備していない。

 空荷であるとはいえ、よく護衛も無しにリムリア銀河帝国から航行してきたものである。

 聞けば、サリウス恒星州に到着するまでの間に小規模の宇宙海賊の追撃を受けたが、どうにか振り切って来たそうだ。

 尤も、勘の良い宇宙海賊なら貨物船団が護衛も無しに航行しているのは空荷なのか、沿岸警備隊等による取締りの囮の可能性があるので、リスクを冒してまで襲撃しないこともあるだろう。


 しかし、貴重な商品を積み込んだ場合には別だ。

 海賊に襲われて積荷を奪われるだけではなく、貴重な船とクルーを失うことによる損失は計り知れない。

 その辺のリスクとそれを回避するための判断が難しく、それを誤れば取り返しのつかないことにもなるのである。

 その嗅ぎ分け能力が商人や貿易商には必要なのであり、今回、ヴィレットはシンノスケのカシムラ商会を護衛に選んだというわけだ。


 因みに、カシムラ商会の護衛の請負料は他の同クラスの護衛艦に比べると若干であるが安い。

 民間船を改造した護衛艦を運用する護衛艦乗りが多い中、ザニーやアイラもそうだが、生粋の軍用艦を運用する護衛艦乗りの信頼度は高いが、カシムラ商会は保有する3隻の護衛艦全てが軍用艦だ。

 軍用艦を運用しているとなるとコストが高くなると思われがちだが、実はそうではなく、民間用の船に装備を後付けしている護衛艦に比べて最初から戦闘運用に特化した軍用艦は船自体が高価であるものの、運用のコストパフォーマンスは民間船改造型に比べてはるかに良いのである。

 

 その上で、カシムラ商会は激安というわけではないが、儲けを低く設定しているため、他に比べると安価でありながら、高性能護衛艦を有し、今のところは護衛依頼の達成率は100パーセントであるのだから業界内での評価が上がることも当然だ。

 今回、カシムラ商会は所属の護衛艦全艦出動の大盤振る舞いだが、それはヴィレットにとっても襲撃のリスクと護衛費用を抑えられて大儲けのいい事尽くめなのである。


 ヴィレットが乗る船団の司令船エレファントA3を含めた5隻と合流したシンノスケ達。

 緊急時を除いてシンノスケは護衛隊の指揮に専念することにし、ヤタガラスの操舵ハンドルを握るのは副操縦士席に座るミリーナだ。


「ヴィレット・インペリアル・トレーディングの船団と合流、データリンク完了しました。・・・護衛司令艦ヤタガラスからエレファントA3、本護衛隊はこれより貴船団の護衛任務に就きます。よろしくお願いします」

『こちらエレファントA3、こちらこそよろしくお願いします』

 

 通信・航行オペレーター席に座るセイラが航路の選択と船団全体のナビゲートを行うことになっている。

 ミリーナもセイラも訓練ではなく実戦要員としての大役を担う。


 エレファントA3を中心にダイヤモンド陣形を組むヴィレットの船団に対してヤタガラスは船団の後方上位、ツキカゲは船団の下方、フブキが船団の前方にそれぞれ位置して周辺宙域の警戒に当たる態勢だ。

 

「各艦、各船所定の配置につきました」


 セイラの報告にシンノスケは頷く。


「了解。それでは出発する。護衛隊はヴィレットの船団の巡航速度に合わせて航行する。各艦は互いの位置と距離をしっかりと保ち、警戒の隙を作らないように留意!」

『2番艦ツキカゲ了解です』

『3番艦フブキ、了解』


 ヴィレットの貨物船5隻と護衛艦3隻の8隻は隊列を組んで6325恒星連合国に向けて出発した。



 アクネリア銀河連邦領を抜けて国際宙域に入っても特に海賊船の姿は無く、ここまでは順調だ。


「間もなく空間跳躍ポイントです」

「了解。それでは、先ず本艦が空間跳躍を行い、続いてツキカゲ。ヤタガラスとツキカゲで跳躍先の安全を確保し、その後にヴィレットの貨物船5隻、最後がフブキだ」


 シンノスケの指示を受け、ヤタガラスとツキカゲが船団の前方に出た。


「空間跳躍ポイントに接近しました」

「了解、ヤタガラス跳躍後、30秒でツキカゲが跳躍。3分後に貨物船団とフブキが跳躍を実行する」

「了解しました。座標計算及び跳躍先の座標の固定、完了です。ミリーナさん、お願いします」

「了解ですわ!」


 ミリーナはスロットルレバーを押し込み、ヤタガラスを加速させる。


「跳躍突入速度に到達。跳躍ポイント接近、行きますわよ!カウントダウン。5、4・・・」

「あっ、それは俺が・・」

「2・・・ワープッ!」


 ミリーナの声と共にヤタガラスは空間跳躍を実行した。

 


 ヤタガラスに続いてツキカゲ、貨物船団、フブキが空間跳躍を実施し、目標宙域に次々とワープアウトしてくる。

 跳躍先の宙域はアクネリア銀河連邦と6325恒星連合の中間に位置する国際宙域で、危険な小惑星帯が張り出し、更に宇宙海賊も出没する危険宙域だ。


 周辺宙域に異常は認められないが、最大限の警戒が必要だ。

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