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セイラが踏み出す一歩

「戦闘機1が接近!戦闘機の速度と機動力じゃ抜かれますわ!時間差で戦闘機2も来ますわよ」


 民間船オメガの盾になるフブキだが、戦闘機が相手では分が悪い。


「分かりました。先ず、戦闘機1を排除します」


 セイラは艦尾と艦底部のガトリング砲をオートに切り替えて対空機銃と併せて自動迎撃モードにすると、艦首のガトリング砲の操作に専念することにした。

 照準もつけずに戦闘機が自動迎撃に追われる先に目星をつけてビームの弾幕を張る。

 自動迎撃機能は目標を自動で照準をして攻撃するが、機動力の高い戦闘機が相手だとロックオンを察知して回避される可能性が高い。

 セイラはそれを逆手に取り、自動迎撃に追い込まれる先を予測し、手動で操作するガトリング砲は敢えてロックオンせずにビームをばら撒いて、その弾幕に目標を誘い込んだのだ。

 

「戦闘機1を撃墜しました」


 狙いは的中。

 弾幕に飛び込んだ戦闘機1が爆散する。

 熟練の火器管制オペレーターならよくやる手法であり、セイラも教本等で知識を得たのだろうが、ぶっつけ本番で成功させたのだから大したものだ。


「直ぐに戦闘機2に対応しま・・・左舷の敵船Dが接近!宇宙魚雷・・いえ、ミサイルランチャーの対艦ミサイルで対処します。・・・照準よし、発射!」


 マークスの意地悪が発動したが、セイラは冷静に対処する。

 切迫した状況で命中率は高いが速度の遅い宇宙魚雷よりもミサイルを選んだのは正しい選択だ。

 事実、判定は命中。

 接近中の敵船Dに真正面からミサイルが直撃した判定だ。


「判定。敵船D撃沈」


 シンノスケも文句のない判断であり、訓練想定を担当しているマークスが心なしか悔しそうだ。


 セイラは気を緩めない。


「戦闘機2と敵船E、F、Gに対応します。ミリーナさん、民間船オメガから離れて残りの敵船に向かってください」

「了解ですけど、いいのですね?護衛対象の守りが疎かになりますわよ」

「大丈夫です。時間は掛けません」


 ミリーナは頷くと右に舵を切った。

 照準器を覗き込むセイラは中破判定を受けて機動力が低下している敵船Fを狙う。


「敵船Fに照準合わせ。・・・主砲発射!」


 フブキの主砲が敵船Fを撃ち抜いた。


 これで撃沈6、大破航行不能が1、戦闘機1機を撃墜。

 訓練としては十分過ぎる成果だ。


「よしっ!訓練終了」


 標的機はまだ残っているが、全部破壊してしまうのはもったいない。

 シンノスケは訓練終了を宣言した。


「了解しましたわ」

「はっ、はい。分かりました・・・」


 訓練とはいえ、数時間にわたって緊張状態が続いていたのだ。

 気がつけばミリーナもセイラも汗まみれだった。


「ミリーナ、操艦を交代する」

「了解ですわ。ユー・ハブ・コントロール」

「アイ・ハブ・コントロール。マークス、残った標的機を回収してくれ」

「了解しました」


 標的機を回収したフブキは反転して帰路についた。



 サリウス恒星州、中央コロニーに帰還しながらシンノスケは今回の訓練について総括を行う。

 火器管制オペレーターとしてのセイラの訓練成績は申し分ない。

 しかし、それは標的機を相手にした訓練の結果に過ぎない。


「セラは火器管制オペレーターとしても優秀だ。これならば直ぐにでも資格を取得できるだろう。しかし・・・」

「分かっています。訓練は訓練、実戦ではありません。実戦では私の失敗でクルーを危険に曝すことになります。それに、今日の訓練で私は7隻の仮想敵を撃沈、大破させ、戦闘機を撃墜しました。これが実戦なら、私は数十人の命を奪ったことになりますね」


 セイラはちゃんと理解しているし、頭の中では覚悟もしているようだ。

 今はそれで十分だろう。

 シンノスケは頷いた。


「船乗りとして火器を扱うということはそういう業を背負うということだ」

「そうですね。でもそれは護衛艦のクルーとして働く以上は同じだと思いますし、私も今までシンノスケさんの船のクルーとして同じ業を背負ってきたと思っています。ただ、直接手を下す責任を皆さんに担ってもらっていただけなんです。だから、私は護衛艦のクルーとして、皆さんと同じ、本当の責任を背負おうと決めたんです」


 やはりセイラは全て覚悟の上で自分自身で選択し、船乗りとしてのさらなる一歩を踏み出そうとしているのだ。 

 セイラが資格取得試験を受けるための業務経験は十分に満たしているので、あと2、3回の訓練を重ねた後に受験すれば問題なく資格を取得することができるだろう。


 自らの手を汚す選択と覚悟。

 その覚悟があるならばシンノスケが止める理由はない。

 全てはセイラが自分自身で選択した道であり、船乗りとしての成長だ。


 

 帰還すればまた忙しい日々が待っている。

 セイラも立ち止まっている暇はない。

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