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戦闘訓練2

「敵船4隻、方位10から12までの範囲に回り込もうとしています。我々の足を止めることが目的と推定」


 報告するマークスが設定した想定のデータを見たシンノスケは笑いをこらえるのに必死だ。


(マークスの奴、ずいぶんと意地の悪い想定をするな・・・)


 そんなこともつゆ知らず、目の前の敵船に集中しているミリーナとセイラはマークスの罠に気付いていない。


「主砲と艦首速射砲の砲撃で敵が回り込むのを妨害します!」

「了解。本艦はこのままの位置と進路を維持しますわ」


 セイラは速射砲を進路左前方に向けて連続発射して敵船を牽制すると、主砲を精密砲撃モードに切り替えて照準器を覗き込む。

 それほど距離は離れていないため自動照準でも狙えるが、貴重な訓練の機会なので敢えてマニュアルで挑戦してみる。

 狙うは進路前方を塞ごうとしている敵船B。

 スコープの中のマーカーが敵船Bを捕捉しており、そのマーカーに照準点を合わせてロックし、トリガーに指を掛ける。


「敵船Bをロック!主砲発射!」


 セイラがトリガーを引き、主砲から発射されたビームが寸分違わずに敵船Bを撃ち抜いた。


(おっ、マニュアルで命中か。まぐれではなさそうだな)


 然程距離が離れていなかったとはいえ、初めてのマニュアル射撃で一撃で命中とは大したものだ。

 しかも撃沈後の周辺警戒も怠っておらず、左舷方向から接近しようとした敵船を速射砲とバルカン砲で牽制して接近を阻んでいる。

 残りの敵船は3隻。



 ここでマークスの罠が発動した。


「新たな所属不明船3隻、方位4から急速接近。識別信号の発信なし。民間船オメガを狙っています」


 現在対応している敵船と真逆の方向からの新手の出現。

 宇宙海賊としてはセオリーの1つだが、護衛艦1隻ではこれがなかなかに対処が難しい。

 

「民間船オメガの後方に着けます」


 ミリーナはフブキを民間船オメガの後方に下げた。


「了解しました。左舷側の敵船に対して1番ミサイルランチャーを使用します。・・・敵船A、C、Dをロック。1番から6番ミサイル発射!」

 

 左舷の敵船に向けて6発のミサイルを想定発射しながらも右舷後方に現れた敵船3隻に対する警戒も怠らない。


「判定。敵船A撃沈。敵船C大破、航行不能」


 シンノスケの判定。

 データ上では敵船Cの方は中破判定だったが、大サービスだ。


「敵船Dが距離を取ります。代わって右舷の所属不明船3隻、民間船オメガに対して砲撃。民間船オメガ小破、航行に支障なし。新たな不審船を敵船E、F、Gと呼称します」


 淡々と状況を報告するマークス。

 獲物である民間船を撃沈しては元も子もない。

 狙っている船に対して強力な攻撃を加えないのは宇宙海賊の常套手段だ。


 それでいながら護衛対象に攻撃を加えるのはミリーナとセイラの動揺を誘うため。

 意地の悪いマークスの作戦だ。


「敵船Dは速射砲の自動攻撃機能で警戒しつつ新たな敵船に対応します。ガトリング砲で牽制しながら2番ミサイルランチャー、1番から4番ミサイル発射!」


 判断は悪くないが、距離が遠すぎた。


「判定。2番ミサイル命中、敵船F中破。機動力低下するも航行に支障なし。その他のミサイルは命中せず」


 残る敵船は4隻だが、護衛対象に近づかせないことにばかり注力した結果、敵船が射程距離外に離れてしまい、膠着状態に陥ってしまう。


「困りましたわね。これでは手も足も出せませんわ」

「すみません、判断を間違えました。距離が離れる前に速射砲や宇宙魚雷でもっと確実に攻撃しておけばよかったですね」


 自分の反省点を冷静に見極められているのも上出来だ。


 フブキは護衛対象から離れられないので、このまま膠着状態が続いても訓練の時間の無駄だ。


 マークスが状況を動かす。


「敵船Dに動きあり。徐々に接近しつつあり」


 左舷側の敵船Dがジワジワと接近してくる。


「気をつけなさいセラ。シンノスケ様とマークスのことですから何か企んでいますわよ」

「そうですね。シンノスケさんとマークスさんのことですからね」

  

 見え透いた敵船Dの陽動には引っかからないミリーナとセイラ。


(なんで俺とマークスなんだよ)


 訓練想定を設定したのはマークスだ。

 シンノスケは心の中で抗議した。


「右舷敵船E、F、Gが急速接近!」  

「ほらっ、来ましたわよ!」

「はいっ!」


 マークスは仕上げに入る。


「敵船Gから射出体2!艦載機の類と推定。戦闘機1、2と呼称」


 仮想敵船は平均的な宇宙海賊の船に倣ってそれなりの動きだったが、新たに出現した仮想戦闘機は速度も機動性も段違いだ。


「戦闘機って、そんな宇宙海賊聞いたことありませんわよっ!」

「流石はシンノスケさんとマークスさんです。訓練とはいえ厳しいですね」


 思わず声を上げる2人。

 

「宇宙海賊が戦闘機を運用する可能性もゼロではありません」

(だから設定したのはマークスだって・・・)


 文句があろうが無かろうが、状況は動いているのだ。

 モタモタしている暇はない。

 ミリーナもセイラも直ぐに対応する。


「フブキを民間船オメガの右舷に回し、盾にしますわ!左舷側の敵船Dに注意」

「了解しました。対空機銃の自動迎撃機能で弾幕を張りつつ、戦闘機を最優先に、確実に撃墜します」


 セイラは艦首と艦尾のガトリング砲を操作して2機の戦闘機を狙う。


 訓練もいよいよ大詰めだ。

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