迫る危機
犯罪船エンジェルⅤを制圧したシンノスケ達は、後を追ってきたアンディのツキカゲ、ダグのシールド艦、そしてアンディ達に帯同してきた沿岸警備隊と合流し、沿岸警備隊に捕縛した乗組員とエンジェルⅤをはじめとした証拠品、そして、被害者を引き渡した。
『それでは、後は我々が引き継ぎ、法に従って適正に処理します。犯罪船検挙に関する協力報酬は自由商船組合を通してお支払いします』
「分かりました、よろしくお願いします」
『それから、ここに来る途中でツキカゲとシールド艦が行っていたことに関しての正当性は沿岸警備隊第32戦隊司令官の責任の下に保証します。報酬と併せて証明データを組合に送信しておきます』
「ありがとうございます」
現場での引き継ぎを終えたシンノスケ達は帰還の途についた。
サリウス恒星州までの帰路はフブキ、ツキカゲ、シールド艦(パイレーツキラーを収容)の3隻で帯同していくのだが、ツキカゲは寄り道をする必要がある上、帰還後のことについて思うところのあるシンノスケはアッシュとシオン、マデリアに加えてマークスをツキカゲに移乗させており、フブキはシンノスケとミリーナ、セイラの3人で運行しての帰還だ。
『そうしますと、俺達はドックに戻る前にサイコウジ・インダストリーに立ち寄って例の手続きを済ませればいいんですね?』
「ああ、どうにも嫌な予感しかしないのでな、そっちの件はアンディ達に任せたいんだ」
『了解です。こちらのことは任せてください』
「頼んだぞ、詳しいことはマークスに聞いてくれ」
『了解しました』
アンディとの通信を横で聞いていたミリーナとセイラは訝しげな目でシンノスケを見ている。
「シンノスケさん、嫌な予感って何ですか?」
「・・・・」
シンノスケに質問するセイラだが、ミリーナは無言のままシンノスケを見据えているだけだ。
「ん?ああ、まあ、ちょっとな。これは艦長としての俺の責任だし、今後のことを考えると2人に詳しいことを説明するわけにはいかないんだよ」
明らかに誤魔化している様子のシンノスケに対しミリーナは更に厳しい視線を向ける。
常にシンノスケと行動を共にする相棒のマークスを離れさせ、別行動をさせる必要がある程の事態だ。
勘がよく、頭も回るミリーナは読心の能力を使わずとも薄々感じているのだろうが、それ故にシンノスケに信を問うようなことをしないのだろう。
やがて3隻はサリウス恒星州惑星ペレーネ中央コロニーの管制宙域に入った。
この時点で3隻は別れてそれぞれの目的地に向かう。
ツキカゲはサイコウジ・インダストリーに直行し、フブキとシールド艦はそれぞれの拠点ドックに帰還する。
『じゃあな、シンノスケ。今回の件は俺達からも組合にしっかりと報告するからな。お前も気をつけろよ』
「了解しました。それではお疲れ様でした」
2隻と別れて管制宙域内を進むフブキだが、ここまで来てセイラも異様な雰囲気に気づいた。
「何これ・・・監視されている?」
管制宙域に入って以降、宇宙軍の艦船2隻が付かず離れずフブキを追尾しているのだ。
実際には管制宙域に入る前、アクネリアの領域に入った時点から監視されていたのだが、管制宙域に入ってからはあからさまに追尾してきている。
「気にしないでいい。こちらから手を出さなければ管制宙域内でちょっかいを出してきたりはしない筈だ」
追跡する2隻を相手にせず、普段通りの手順でドックに入港したが、その際にシンノスケは組合のリナに対して今回の仕事のデータの洗いざらいを送信しておく。
これは普段は行わないことだが、これでこれから予想される事態に対する備えは整った。
システムチェックを終えてフブキを降りたシンノスケ達3人。
それを見計らったかのようにドックのインターホンが鳴る。
(やはり来たか。思ったより早かったな)
全てを悟ったかのようなシンノスケは背後に続くミリーナとセイラを見た。
「お客さんだ。招かれざる客だが、2人は何が起きても手出し、口出し無用だ。俺に全て任せておいてくれ」
「シンノスケさん、どういうことですか?」
「・・・」
シンノスケはそれ以上は語らずにドックの扉を開ける。
扉を開けると、そこにいたのはダークスーツを着た5人の男達。
「宇宙軍警察隊です。自由商人シンノスケ・カシムラさん、貴方達を逮捕させていただく」
軍警察を名乗った男達はシンノスケにブラスターを向けた。
「シンノスケ様っ!」
「・・・シンノスケさんっ!」
咄嗟にサーベルに手を掛けるミリーナと少し遅れて腰のブラスターに手を伸ばすセイラ。
「2人共待てっ!武器を抜くな!」
シンノスケに一喝され、2人は手を止める。
辛うじて2人が武器を抜くまでに至らなかったことを確認したシンノスケは男達を見た。
「罪状等の詳しい説明を求めます」
1つ告知させていただきます。
今までは基本的に1つの小説にのみ集中して投稿してきましたが、近いうちに別の小説の投稿を開始する予定です。
というのも、元々投稿ペースの早くない私ですが、次回作(職業選択の自由シリーズ)の構想が固まり、その構想を忘れないように少しずつ書き始めていたものが形になりつつあるので、少し早めに、本作と同時進行で投稿してみようと思ったためです。
とはいえ、私自身それほど器用ではなく、2つの小説をコンスタントに進めることは出来ないと思いますので、基本的には本作を中心に、週に1、2回程度の投稿ペースを維持しつつ、新作の方はゆっくりと進めていくことになると思います。
実際に新作の投稿を始める際に改めて報告します。




