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激動の始まり

 新しい仲間を迎えたシンノスケ率いるカシムラ商会だが、その滑り出しは平穏なものとはいかなかった。


 リムリア銀河帝国がダムラ星団公国に侵攻した戦争がダムラ星団公国の敗北という結末を迎えたのである。

 アクネリア銀河連邦はこの戦争にダムラ星団公国の支援という名目で軍事介入していた。

 しかし、公国の劣勢のまま進められた戦況を覆すことは敵わず、最終的には支援の縮小が決定されたのだが、その矢先に公国首都が陥落してダムラ星団公国が消滅。

 その結果、ダムラ星団公国内に展開していたアクネリア宇宙艦隊には即時撤退の命令が下されたのだ。


 一方で侵略戦争に勝利したリムリア銀河帝国は銀河中の銀河国家に対して旧ダムラ星団公国に滞在する帝国と友好関係にある一部の国以外の各国の大使や外交官を含む全ての他国民に対して2ケ月の猶予を与えた上で国外退去するように命じたのである。

 その上で、他国の軍艦の領内航行は認めないが、国民の退去のために護衛艦を含めた民間船の航行は認め、それらの船を使用して速やかに退去するように各国に通告したのだ。


 この通告に対して各国は直ちに自国民保護のために行動を開始した。


 アクネリア銀河連邦はリムリア銀河帝国、旧ダムラ星団公国側の領域内に第2、第7艦隊をはじめとする宇宙艦隊を、更に排他的経済宙域に沿岸警備隊を展開させて最大限の警戒を図ると共に旧ダムラ星団公国に取り残された自国民を救出すべく、軍用ではない連邦政府所管の艦船をはじめ、自由商人を含む民間船を派遣することを決定したのである。


 その救出作戦の最前線となったのがサリウス恒星州とイルーク恒星州だ。

 サリウス恒星州は旧ダムラ星団公国に隣接し、次いでイルーク恒星州が近いことからそれは当然のことであり、特にサリウス恒星州からなら退去期限内に旧ダムラ星団公国のどの星にでも往復可能だし、足の速い船であれば目的地によるが、2往復することも可能だ。

 その一方で連邦国の他の恒星州からでは遠過ぎて目的の宙域に到達出来ても期限内に退去することは出来ないため、必然的に救出作戦の主力はサリウス、イルークの両恒星州が担うことになったのである。


 隣接するアクネリア銀河連邦ですらこの有り様なのだから、更に遠い銀河国家では救出のための艦船の派遣すら間に合わない。

 そこで、それら遠方の銀河国家はアクネリアをはじめとした艦船の派遣が間に合う銀河国家に国民の救出を委託する他に選択肢が無く、サリウス恒星州でも派遣する艦船がいくらあっても足りないという事態に陥り、自由商船組合にも大量の救出依頼が出されることになった。


「これは引き受けない手は無いな」

「はい、政府からも、民間企業からも、果ては個人からの依頼でもよりどりみどり。ここで動かなければ船乗りの名折れですわね」


 組合のデータベースで依頼を吟味するシンノスケとミリーナ。

 船乗りとしても、人道的に見ても引き受けないという選択肢は無いし、自由商人としてもこんな稼ぎ時を見逃すわけにはいかない。


 組合としてもこの一大事に全力で対処することとし、所属する自由商人の船の性能と適性を鑑み、各商人に対して最適な依頼を選別して推奨している。 


「今回、シンノスケさんはフブキとツキカゲの2隻での受諾ですよね。だとすると、推奨するのはこのあたりでしょうか?」


 そう言ってリナがピックアップしただけでも30程の依頼がある。

 フブキもツキカゲも大型船には遠く及ばないキャパシティだから救出対象が比較的少ない惑星やコロニーを2、3個所に向かい、複数の依頼をこなす計画だ。


「あとですね、他にシンノスケさんに指名依頼が出てますよ」


 リナに言われて確認してみれば、それはレイヤード商会からの鉱物の注文である。


「この状況でも平常営業か。流石というか、強かというか・・・まあ、流石はレイヤード商会、というところだな」


 半ば呆れるシンノスケだが、当のレイヤードにしてみれば国が変わろうとも何とも思っていないのだろうし、むしろこの混乱を好機と見ているのかもしれない。


 結果、シンノスケはレイヤード商会が指定した惑星リブリナでの鉱物取引と避難民救出、リブリナ付近のコロニーからの避難民救出を引き受けることにした。



 ドックに戻ったシンノスケは早速クルーに今回引き受けた仕事の内容を説明し、出航準備を指示する。


「今回はフブキとツキカゲ2隻での仕事になるが、新しく仲間になった3人はフブキとツキカゲに分かれて乗艦してもらう。アッシュとメーティスはツキカゲに、シオンはフブキだ」


 シンノスケの言葉にアッシュが頷く。


「任せて頂戴。私達が役に立つところを見せてあげるわよ」


 今回、フブキとツキカゲの両方に避難民を乗せることになるが、当然ながらツキカゲの方に多くの者を乗せることになる。

 そのため、万が一に備えて沿岸警備隊上がりの2人をツキカゲに配置したというわけで、船医の資格を持つアッシュがツキカゲに乗るのも当然の選択だ。


 シンノスケ達はありったけの食料と飲料水、医薬品等に加えてレイヤード商会からの注文の鉱物を積載してリムリア銀河帝国領、惑星リブリナに向けて出航した。

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