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穏やかな会食

 シンノスケがビビりまくっていたエミリアとの会食だが、シンノスケの心配とは裏腹にそれはとても穏やかで、和やかな席となった。

 エミリアが滞在しているサイコウジ・カンパニー傘下のホテルは一般大衆から富裕層まで、客を選ばない上品なホテルで、会場になったレストランVIPルームでも特にドレスコードも無いのだが、ファッションデザイナーとしての側面を持つエミリアが面白半分に皆の衣装を準備しており、マデリアを含めた女性陣には上品なドレスを、マークスを含めた男性陣には立派なタキシードが贈られた。

 唯一堅苦しい衣装(制服は除く)が嫌いなシンノスケは断固としてタキシードを拒否したことから制服姿なのだが、どういうわけかマークスはノリノリ?でタキシードを着用している。


 会食の場でエミリアは子供の頃からのシンノスケとの思い出話を披露し、ミリーナやセイラは最近のシンノスケとのエピソードを話す。

 互いの共通の話題がシンノスケのことしか無いからなのだが、要はシンノスケだけが辱められる席となってしまった。

 そこにシンノスケの拒否権は存在せす、こともあろうにマークスまでもが嬉々として?会話に参加している有り様である。


 リラックスした雰囲気の中、シンノスケの恥ずかしエピソードも出揃った頃、ふと先の超空間に落ちた事故の件について話が及んだ。


「サリウスへの視察のついでに久しぶりにシンノスケの様子でも見ようと思っていたら、事故に遭遇しているものですから、そのタイミングの悪さに程々呆れました。挙げ句に自力脱出して戻ってきたかと思えばアクエリアスを見て逃げ出そうとするんですからね・・・」


 義弟の事故を瑣末事のように話すエミリア。


「でも、シンノスケ様が事故に遭ったと聞いて心配したんじゃありませんの?」


 ミリーナの問にキョトンとした表情を見せると、直ぐにコロコロと笑い出す。


「フフフッ、心配なんかしていません。サイコウジが開発、建造したフブキは超空間に落ちた程度でどうにかなるような脆弱な艦ではありませんし、シンノスケが舵を取るなら、どんな手段を行使しても勝手に抜け出してくるでしょうからね。それに、シンノスケは今や一端の自由商人ですし、サイコウジの取引相手でしかありません。もしもシンノスケが宇宙の塵と化したとしても、それは星の数程ある取引相手の1つが無くなるだけ。そして、義姉として、家族として見れば、好き勝手に宇宙を駆け回るシンノスケをいちいち心配するだけ無駄だと思っています」


 かなり厳しい言葉のように聞こえるが、それがエミリアの本心であり、信頼からくる言葉であることが分かる。

 それはシンノスケが一番理解しているし、理解しているからこそ何も反論できないのだ。


 その後、穏やかな会食もそろそろお開きとなる空気になったところでエミリアが表情を改めながら口を開いた。


「シンノスケ、間もなく世界経済が大きく動きます。元軍人で、宇宙を駆け回るシンノスケならば、この情勢の変化は分かっているでしょう?だから、その渦に呑まれることなく、機運を見逃さず、しっかりと波に乗りなさい」


 真っ直ぐにシンノスケ達を見るエミリア。

 昨今の世界情勢を踏まえての助言なのだろう。

 

「心得ています」


 シンノスケは頷いた。



 翌日、出航するアクエリアスを見送り、宇宙環境局に宇宙クジラについての報告を済ませたシンノスケは新たに採用予定の者達の面接に挑む。


「私の名はアッシュ。このメーティスとシオンの3人でチームを組んでいたんだけど、ちょっとドジを踏んじゃってね。大切な護衛艦を沈めちゃったの。新しい船を手に入れるにもお金がもったいないと思っていたそんな矢先にこちらの求人を見つけたのよ」


 シンノスケの目の前に現れた3人組はなんとも個性的な面々だ。

 先ずはアッシュ。

 艦長資格を有するチームリーダーの『男性』だ。

 細身で顔立ちも整っており、非常にハンサムな男性だが、精神の方はどちら寄りなのかさっぱり分からない。


 次に、メーティスと呼ばれたのはザリード人の女性だ。

 通信、航行管制員とのことだが、シンノスケ達のような人類とは別の進化を辿り、爬虫類から進化したザリード人は見てくれだけではシンノスケ達には男女の差が分からない。


「メーティスよ。アッシュがこんな調子で驚いたでしょう?でも安心してね、アッシュはこう見えてもちゃんと女性『も』好きなのよ。ややこしくてゴメンナサイね」 


 こう見えても、どう見えても、何を安心するのかも分からないが、シンノスケにしてみればそれを説明するメーティスも十分にややこしい。


 シンノスケの横に座るミリーナですら頭の上に?マークが飛び回っている。


 そして、3人目はピット人のシオン。


「はじめまして、僕はシオン。こう見えてもちゃんとした大人だよ」


 シオンは年齢15、6歳の少年に見えるが、ピット人はある程度まで成長すると外観的な成長が止まる種族であり、見た目と実年齢に乖離がある種族だ。

 シオンも、その見た目から少年だと勝手に思っていたのだが、聞けば年齢は28歳で船員資格だけでなく、操縦士の資格も持つれっきとした大人の『女性』だとのことだ。


 なんともややこしい3人組がやってきた。

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