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超空間の中で

「超空間に飛び込みました」


 重力波に引きずり込まれたシーカーアイを追って超空間に突入したフブキ。


「なんだこの空間は!」

「異常重力帯と思料されます」


 暗闇に包まれたその空間は無重力の宇宙空間と違ってあらゆる方向に向かって流れる重力波に艦が翻弄されてしまい、姿勢制御が困難な程だ。

 シンノスケはスロットルレバーと操舵ハンドルを巧みに操って姿勢制御を試みる。


「くそっ!マークス、シーカーアイはどこだ?」

 

 大出力のエンジンを有するフブキですらまともに航行することが困難な空間だ。

 小型艇のシーカーアイではひとたまりもないだろう。


「シーカーアイを捜索しま・・・発見。・・・方位2。きりもみ状態、コントロール出来ていない模様。遠ざかりつつあります。通信不能です」

「了解!通常収容は無理だな。無理矢理被せるぞ」


 シンノスケはフブキをシーカーアイに向けた。

 

 あらゆる方向に向かって発生する重力に襲われて激しく振動するフブキをどうにか制御しつつシーカーアイに接近する。


「マスター、シーカーアイの回転に合わせてください」

「了解!」


 きりもみ状態のシーカーアイに合わせてフブキを回転機動に入った。


「シーカーアイがスラスターを噴射。回転を止めようとしている模様」

「よし、とりあえず無事のようだな。収容を急ぐぞ!」


 フブキは艦首下部のハッチを解放させながらシーカーアイに接近する。


「シンクロしました。そのままの機動を維持。収容まで5・4・3・2・1」

「ドッキング!」


 シンノスケはフブキをシーカーアイに被せるように強引にドッキングした。


・・・ゴトン!・・


 半ば衝突するような勢いでシーカーアイを収容したフブキ。


「シーカーアイの収容に成功。シーカーアイに損傷は無いと思われますが、内火艇格納庫のラッチが損傷しました」

「了解した。マークス、シーカーアイを確認、2人の無事を確認したらここに案内してきてくれ」

「了解しました」


 マークスがブリッジを出ていくとシンノスケは脱出のための状況確認を始めた。

 超空間からの脱出の方法を探らなければならない。



 シーカーアイの操縦室では操縦士席と副操縦士席でアリーサとメリーサがぐったりしていた。


「うっ・・・メリー・サ、大丈夫?」

「・・・・ええ・・・どうにか・・・」

「きりもみが収まったということは、私達助かったの?」

「シンノスケさんのフブキに回収されたのよ・・・」


 辛うじて意識はあるものの、身動きが出来ない2人。


・・ガン!・ガン!ガン!・・・バゴンッ!


 そこにドアをぶち破ったマークスが飛び込んできた。


「ご無事ですか?救助に来ました」

「「・・・はい、大丈夫、です・・・」」


 アリーサとメリーサの状態を確認したマークス。


「両名共軽症の模様。フブキのブリッジに案内します」


 2人を抱え上げてシンノスケの待つブリッジに向かう。


 その頃フブキのブリッジでは重力帯の中での艦の制御に慣れたシンノスケが超空間からの脱出手段を探していた。


「通常空間への亀裂の位置はロスト・・・というか、既に閉じてしまっているか・・・。とはいえ、強引に飛び出すのは危険過ぎるな」


 超空間からの脱出は原理的には不可能ではない。

 空間跳躍航法でも超空間を通過して目的の座標まで一気に跳ぶのだ。

 しかしそれは跳躍開始地点と跳躍終了地点の正しい座標計算をした上で超空間へ飛び込むために必要な速度まで加速する必要がある。

 今の状況ではそのどちらも実行することが出来ない。


「これは、どうしたものか・・・」


 シンノスケが思案していると、マークスがアリーサとメリーサを連れて戻ってきた。


「マスター、戻りました。お2人は無事です」

「ご苦労さん、マークス」


 マークスは2人を空いている席に座らせる。


「こちらの席でお休みください」

「「はい、ありがとうございます」」


 マークスは総合オペレーター席に着いた。


「さて、マスター。超空間からの脱出方法は見つかりましたか?」


 端末を操作してフブキが置かれた現状を確認するマークス。


「いや、まだだ」


 シンノスケの返答にマークスはため息をついた、かのように見えた。


「はあっ・・・。マスター、私がお2人を救助に行っている間に、つまり人が働いている間にいったい何をしていたのですか?」


 呆れた様子のマークスをシンノスケは睨み付ける。


「おい、マークス。超空間からの脱出方法なんてそんなに簡単に見つかるわけないだろう。お前、ちょっと冷たいんじゃないか?」

「はい、私の体表温度は・・・」

「そうゆうことじゃない!大体な、超空間から強引に脱出したってどこに飛び出すか分からないんだぞ。下手をすれば宇宙ステーションの都市のど真ん中に飛び出して大惨事を引き起こしたり、燃える恒星の中に飛び出して一瞬で燃え尽きることだってあり得るんだ。そんな簡単にいくわけないだろう!」


 そんなシンノスケとマークスのやり取りを唖然とした様子で見るアリーサとメリーサ。

 その時、メリーサが外部モニターに映る異変に気付いた。


「シンノスケさん、あれをっ!」


 メリーサの声にモニターを見たシンノスケとマークス。


「おい、なんだこれは・・・まさかっ!」

「はい。・・・宇宙クジラです」


 モニターに映し出されていたのは宇宙クジラの群れだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 以前シンノスケが助けた宇宙クジラの親子が再登場するのでしょうか。 次話が楽しみです!
[気になる点] トビウオは大型の魚の捕食から回避するために、海上へジャンプする能力を獲得した。宇宙クジラが超光速空間活動能力を獲得してたということは、宇宙クジラを捕食する大型高速宇宙生物が存在するのか…
[一言] これは、宇宙クジラの恩返しかな?
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