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新たな商機を狙って

 新たな販路の構築を狙って6325恒星連合国へ向かうことを決めたシンノスケ。

 今回の商品はリナの助言を受けてメタルNo.35。

 船やコロニー等の一部の材料として使用される特殊金属で、希少価値は少ないながらも安定した取引が期待できる。

 特に6325恒星連合国では採掘量が少ない反面、宇宙船を含めた工業製品を多く製造して輸出しているため、あらゆる企業が常に買い取りを行っている金属だ。


「No.35だと儲けは少ないでしょうが、6325恒星連合国では大手企業だけでなく中小企業や個人企業でも買い取りをしていますからリスクは少ないと思いますよ」


 リナの説明はシンノスケの考えとも一致する。

 6325恒星連合国での初めての貿易だから様子見を兼ねて大きなリスクは避けることにした。


「そうすると、No.35を仕入れて6325で取引をして、ついでにダムラ星団公国に向かってレイヤード商会にNo.1247を売りつけて来るか。宇宙クジラの調査もできるから丁度いいな」

「そうですね」


 マークスと話すシンノスケの言葉にリナが表情を曇らせる。


「やっぱりダムラ方面にも行くんですね・・・。ま、仕方ないですよね。シンノスケさん達の貿易の主戦場がダムラ星団公国なんですからね」


 直ぐに明るい笑顔を取り戻すリナ。


「まあ主戦場と言っても取引先のレイヤード商会相手には防戦一方ですけどね」


 自虐的に笑うシンノスケにリナは更に明るい笑顔を見せた。


「引いてばかりではダメですよ、時には強気で迫らないと。商売も恋愛もね」

「恋愛?」

「そうですよ。時には引き、時には押し、勝機を見つければ一気に攻める。駆け引きは目の前の相手だけでなく、周りのライバルまで十分にきを配らなければいけません。商売も恋愛も一緒ですよ」


 リナの言葉にシンノスケは頷く。


「なるほど、参考になります」


 今ひとつ響かないシンノスケの態度にリナが頬を膨らませる。


「参考にって、もう・・・」

「・・・鈍感ですね」


 呆れて言葉を発したのは、まさかのマークスだ。


「ん?マークス、何か言ったか?」

「言っていません。言ったところでマスターには理解出来ないでしょう」

「なんだそりゃ・・・」


 その後、6325恒星連合国用のNo.35を300トンとレイヤード商会用のNo.1247を100トン仕入れる手続きを済ませたシンノスケ達。


「気をつけて行ってらっしゃい」

 

 手続きを済ませると笑顔のリナに見送られて組合を後にした。

 出航予定は運送業務に出ているツキカゲと点検中のフブキが戻ってきてからだが、来週には出航できるだろう。



 2日後、先ずアンディのツキカゲが戻ってきた。

 アンディとエレンが休息を取る傍らでシンノスケ達は注文しておいたNo.35の受領とツキカゲへの積み込みを進める。

 今回の仕事でツキカゲは戦闘を行っていないので、エネルギーの補充だけて済むので作業はスムーズだ。

 そして、フブキが点検から戻ってきてNo.1247を積み込めば準備完了。


 出航日も決まったそんな時、シンノスケの端末に自由商人で護衛艦乗りのアイラから連絡が入った。

 とりあえずフブキのブリッジにあるモニターに繋いで話を聞くことにしたのだが、どういうわけか、シンノスケの背後にはミリーナとセイラが立っており、アイラに鋭い視線を向けている。

 そんな2人の視線を全く意に介していないアイラはシンノスケに本題を切り出した。


「ねえシンノスケ、組合で聞いたんだけど。貴方達、6325に行くんでしょう?何時出発するの?」

「明後日です。6325に貿易に行って、その後ダムラ星団公国にも行く予定です」

「なら丁度良かった。シンノスケ、ちょっと相談なんだけど、6325までの航路だけでいいから護衛任務を手伝ってくれない?」

「護衛任務の手伝い?どういうことですか?」


 アイラによれば、サリウス恒星州の自由商船組合に所属するラングルド商会が6325恒星連合国に大型貨物船1隻、中型貨物船3隻の船団を運行するに当たり組合に船団護衛の依頼が出されたらしい。

 その報酬はなかなかの高額だったのだが、元々評判の悪いラングルド商会からの依頼ということもあり、受諾する者が現れなかったそうだ。

 普段のラングルド商会なら商会が金を貸していたり、装備品等を融通している護衛艦乗りに安価で護衛をさせるのだが、今回は失敗が許されない大きな取引らしく、組合に所属する上位ランカーの護衛艦乗りを護衛に求めたらしい。

 普段であれば、評判の悪いラングルド商会とはいえ、別に犯罪企業ではないし、報酬目当てで引き受ける護衛艦乗りもいるのだが、今回はタイミングが悪く、ラングルド商会が求める能力を持つ護衛艦乗りがことごとく別用務中で、依頼を引き受けたのがアイラともう1隻の護衛艦乗りしかいなかったということだ。


「他に引き受ける護衛艦もいなかったから、私ともう1隻で護衛に当たるつもりだったんだけど、ちょっと心許なくてね。シンノスケが6325に行くなら手伝って欲しいのよ」


 元々自分達だけで貿易に向かう予定だったシンノスケ達だが、船団護衛を引き受けるとなると仕事の危険度はグッと増してくる。

 アイラが示した報酬額は確かに高額だが、今回の船団護衛はそれだけ危険度が高いのだろう。


「まあ、考えても良いですけど、我々が引き受けると報酬の割当が減ってしまうと思いますが、大丈夫ですか?」


 今回の依頼は報酬総額が決められていて、引き受けた護衛艦の数で山分けをすることになる。

 つまり、1人しか受けなければ文字通り独り占めだし、10人が引き受ければ報酬も10分の1だ。

 アイラともう1隻しか引き受けてないなら報酬は折半だが、シンノスケ達を引き込むとなると、フブキとツキカゲで2隻、単純計算で報酬が4分の1になってしまう。

 アンディは上位ランカーとは言えないからアンディのツキカゲはフブキの僚艦の扱いになり、報酬もそれなりに調整は必要だが、それでも報酬の取り分は大きく減ってしまうのだ。


「報酬の分配なら大丈夫よ。もう1人にも了承を得ているわ」


 そういうことならばシンノスケ自身は引き受けても問題ない。


 シンノスケは背後に立つミリーナとセイラだけでなくアンディ達の了解を得た上でアイラの頼みを引き受けることにした。


「それでは、アイラさんが引き受けた護衛依頼、私達も参加します」

「助かるわ。組合の手続きはこっちで済ませておくから、貴方の担当者には自分で報告しておいてね」


 思わぬ大仕事になってしまった今回の仕事。

 出航は2日後だ。

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