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用が済んだらさっさと帰還

『直ちに要救助者の受け入れを開始します』


シンノスケのトーチギ訛りに圧倒され、思わず従ってしまった沿岸警備隊の隊長は完全に面子を潰されたことにより、それ以上の越権行為はせずに沿岸警備隊としての責務を果たすことにしたらしい。


「いーから、臨検すんのか、しねーのか、こっちも記録して報告する必要があんだから、はっきりしとこれっ!」

【銀河標準語訳:そんなことよりも、臨検をするのか、しないのか、こちらも記録して報告する必要があるのですから速やかに決定してください】

『いえ、臨検は行いませんのでこちらの隊員は移乗しません。連絡用通路を接続したら要救助者をこちらの巡視船に移乗させてください』


 普段の彼等の行いはともかく、これ以上はシンノスケ達に絡んでくるつもりはないようだ。

 それならばシンノスケもこれ以上の衝突は望まない。


「了解しました、本艦への接舷を許可します。それではこちらも必要以上の記録や報告は行いませんので、よろしく願います」


 突然銀河標準語に戻ったシンノスケ。


((戻った・・・))


 ハラハラしながら見守っていたセイラとミリーナが顔を見合わていせたところにマークスが様子を見にブリッジに入ってきた。


「あの、マークスさん、シンノスケさんが・・・」

  

 困惑してマークスに助けを求めるセイラ。


「ああ、戻りましたね。大丈夫ですよ、マスターのトーチギ訛りは無意識に炸裂するもので、本人はトーチギ訛りの自覚はなく、少し強めの口調で銀河標準語で話しているつもりなんですよ。ですので、訛りと標準語がコロコロ変わっても別に誤作動ではありませんのでご安心ください」


 確かにシンノスケは先程のトーチギ訛りとは一変して何事も無かったように沿岸警備隊と話を進めている。


「「意外な一面を見ました・・・」」


 先程までのハラハラした様子とは打って変わってセイラとミリーナはご満悦の表情を浮かべた。


 フブキと巡視船の間に連絡用通路が接続され、いよいよ要救助者の引き渡しが始まろうとしている。

 隊長の言ったとおり、沿岸警備隊員はフブキに乗り込むつもりはないらしく、連絡用通路の接続口で気をつけの状態で要救助者を迎え入れるつもりのようだ。

 シンノスケも引き渡す側の礼儀として接続口の前に立ち、要救助者達を見送ることにする。


 マークス、マデリアと沿岸警備隊員の誘導で次々と巡視船に移乗してゆく人々だが、皆が口々にシンノスケ達に感謝の気持ちを告げてゆく。

 そんな中、アリシアがシンノスケの前で立ち止まった。


「本当にありがとうございました。次に旅行に行く際には是非カシムラ様の船で旅をしてみたいものですわ」


 ミリーナの言うとおり旅行好きなアリシアはそんなことを言ってきたが、シンノスケは苦笑しながら肩を竦める。


「生憎私の商会はまだ護衛業務と貨物輸送業務しか行っていません。旅客業務への展開はまだ考えていないのですよ」

「あら、それは残念です。まあ、機会があればアクネリア銀河連邦にも旅行したいと思っていますので、ご縁があればまたお会いしましょう」


 最後にほんの数秒だけ額の目を開いてシンノスケを見上げたアリシアは穏やかな微笑みを残してフブキを降りていった。


 最後にブルー・ドルフィンの船長がシンノスケの前に立ち、敬礼する。


「カシムラ様達の救助に心から感謝いたします。私は船を失いましたが、カシムラ様達の尽力により乗員乗客の生命を守るという船長としての最低限の責任を全うすることができました。今回の救助に対する謝礼については後日本社の方から連絡が行くと思いますのでよろしくお願いします」

「皆さんがご無事でなによりでした」


 シンノスケが答えると船長はシンノスケの手を強く握った後に巡視船へと乗り込んでいった。


 全ての乗員乗客の移乗が完了したところでシンノスケと巡視船の隊員は互いに敬礼を交わし、その後に連絡用通路が切り離されて巡視船が離れてゆく。

 これで今回の救助活動は全て完了だ。


 シンノスケはブリッジに戻り、操縦席に座るとフブキを回頭させた。

 これ以上はリムリア銀河帝国領に逗まる理由はないし、むしろさっさと帰還したい。


「さて、長居は無用、さっさと帰還するべ!」

【銀河標準語訳:さて、長居は無用、さっさと帰還しよう】


 フブキは速度を上げると一目散に帝国領から離脱して帰還の途についた。

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― 新着の感想 ―
シンノスケは茨城軍人だったのか…
[一言] マークスもらってから訛ることあったんかな
[一言] トーチギ訛り最強!
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