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到着したものの・・・

 空間跳躍を脱したフブキとツキカゲはポルークス侯国手前の国際宙域に出た。

 ダムラ星団公国領を飛び越えたとはいえ、国際宙域でも戦闘が行われている以上、まだまだ安全だとはいえない。

 それでも両国間の国際宙域は狭いので、3日も進めば国際宙域を抜けるし、ポルークス領内に入れば2日程で目的地であるポルークスの首都星ポルークスだ。


「付近を航行する艦船はありませんわ」


 休憩中のセイラに代わってオペレーター席に座るミリーナの報告を受けたシンノスケは頷いた。


「了解。あと少しだ、気をつけて進もう」


 そうはいっても航行は平穏そのもの、特に何事もなく順調に進む。


「あの、そういえば、これから行くポルークス侯国もそうですけど、銀河国家って帝国とか、公国とか、そういう国が多いですよね?」


 ミリーナがオペレーター席を使用しているので座る場所が無く、副操縦士席に座っているセイラが首を傾げる。

 休憩中なのだから自室で休んでいてもいいのだが、ブリッジにいた方が落ち着くそうだ。


「それは、銀河国家は国が広すぎて全体を掌握し辛いことが1つの要因だよ」

「?国が広いと皇帝とか王様も大変なんじゃないですか?」


 シンノスケの説明にセイラは更に首を傾げた。


「君主1人で国を纏めようとするのは大変だよ。でも、君主制国家には君主から所領を与えられた貴族がいて、それぞれの所領を治めている。そういった貴族領の集まりが1つの国家を形成するんだ。君主は所領を持つ貴族を掌握すればいいから、広大な国を効率的に治めることが出来るんだ」

「なるほど、そういうことなんですね」

「因みに、アクネリア銀河連邦だって君主制国家ではないが、5つの恒星州が集まった連邦国家だし、6325恒星連合も似たような連合国家だな」

「あっ、そうか。君主制国家である必要はないということですね」


 セイラの言葉にシンノスケは頷く。


「逆に宇宙には単一国家も山ほどあるから、連邦国家や君主制国家ばかりが多いというわけでもないけどな」


 そんなことを話しながら航行を続け、シンノスケ達は特に何事もなく目的地であるポルークス侯国に到着した。



 ポルークス侯国は首都星ポルークスの他に2つの居住可能惑星を有する小国だ。

 君主であるキストリン侯が首都星ポルークスを統治し、2人の領主がそれぞれ2つの惑星を所領として管理しているのだが、今回の仕事はそのキストリン侯からの依頼で採掘用重機を輸送して首都星ポルークスまでやってきた。


 惑星ポルークスには防衛艦隊の基地と航路の管理、管制、輸出用の貨物ステーションを兼ねた宇宙ステーションがあるのみで、運んできた荷物の引き渡しは惑星に降下する必要がある。


「ポルークス宇宙管理ステーションから惑星ポルークスへの降下の許可が出ました」

 

 セイラの報告を受け、フブキとツキカゲはポルークスの大気圏に降下して入港する港に向けて進む。

 眼下には広大な大陸が広がっている。


「居住可能惑星なので緑豊かな風景を想像していたんですけど、全然違いますね・・・」


 思わず呟いたセイラの言葉のとおり、モニターに映し出された風景に緑は殆ど見られない。

 平地も山地も地肌が露出し、あちこちに巨大な穴が掘られており、殺伐としている。

 周囲に工場のような建物があることをみると鉱物資源の採掘場なのだろう。

 但し、見た限りではそれらの施設が稼動している様子はない。


「何か事情がありそうだな・・・」


 2隻は航行を続け、ポルークスの首都の上空にまでたどり着く。

 ポルークスの首都は不思議な街並みの都市であり、近代的な建物と古い石造りの建物が混在して建ち並んでいる。

 宇宙船用の港はその首都の外れに位置しており、港の周りには採掘した鉱物を軌道上のステーションに打ち上げるマスドライバーが設置されている。


 フブキとツキカゲが管制に従って港に入港すると、2隻は予め港で待機していたポルークス軍の陸戦隊に取り囲まれた。

 完全装備の兵士が15名、1個小隊規模と2台の装甲車まで配置されている。


「武器を持って、物騒な歓迎ですわね。無礼ではありませんの?」


 ミリーナが不快感を示すが、彼等はシンノスケ達に敵対しているわけではない。


「ポルークス側からの通知によると、治安上の理由で船と積荷の警備に着くらしい。ただ、周囲の警備のみで、艦内に立ち入ることはないとのことだ。その辺はポルークス側も弁えているみたいだな」


 国際法上は他国の港に入港しても基本的に船内はその船が所属する国の領内とみなされ、余程の事情がない限りは訪れた先の国の権限が及ぶことはない。

 ポルークス側もその辺の規則は遵守するつもりのようだ。


 とはいえ、船をがら空きにして上陸するわけにはいかない。

 後は事務的な手続きをした後に積荷を引き渡すだけだから皆が揃って上陸する必要もないので、シンノスケ、マークス、セイラ、ミリーナの4人が上陸して諸々の手続きを行い、アンディ、エレン、マデリアの3人が船に残ることになった。


「さて、さっさと引き渡しの手続きを済ませてしまうか」


 ポルークス侯国には自由商船組合は無く、国の機関である外務・貿易管理事務所が他国の商船との各種手続き等の任を担っている。


 その事務所は港から10分程歩いた所にあるとのことで、上陸したシンノスケ達は事務所に向かうことにしたのだが、港を出て直ぐに不穏な雰囲気を感じ取った。

 現地の住民達がシンノスケ達のことを遠巻きに見ているが、その視線が好意的とは程遠く、シンノスケ達を睨みつけるように何やらヒソヒソと話をしている。


「様子が変だな。マークス、気をつけておいてくれ」

「了解しました」


 フブキとツキカゲ(主に積荷)は手厚く警備してくれているが、シンノスケ達クルーはそれほど重要視されていないようで、シンノスケ達には道案内の兵士2名が同行するのみ。

 積極的に警備してくれるわけではなさそうだ。

 いざとなったら自分達の身は自分達で守らなければならない。


 周囲を警戒しつつ歩くことほんの数分、突然背後から声を掛けられた。


「あんたら、採掘用の機械を運んできたんだろう?」


 振り返ってみると、歳の頃10歳位の1人の少年がシンノスケのことを睨んでいた。

 頭部には犬のような耳、ラーダ人の少年だ。

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