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決戦5

  【フブキ:ブリッジ】

「・・・外したぞ、マークス」

「これは想定外ですね」


 惑星カーパーの重力に引かれたフブキは一旦惑星の大気圏に降下すると、即座に大気圏離脱のシークエンスに入り、電離層の中にまで上昇してきた。

 そして、フブキのレーダーでブラックローズⅡを捕捉し、ブラックローズⅡからはフブキを捉えられないギリギリの高度で停止し、そこからブラックローズⅡを狙ったのだ。

 惑星の重力とフブキの推力が拮抗するように調節して電離層の中でフブキを静止させたシンノスケ。

 非常に高度な操艦を強いられているため、シンノスケの代わりにマークスが主砲を放ったのだが、その砲撃はブラックローズⅡの鼻先を掠めただけで命中しなかった。


「おい、マークス。お前、俺には想定云々言っておきながら、この有り様か?お前、撃つ前に『私の狙いは完璧です』とか言ってなかったか?」

「はい、私の狙いは完璧でした。しかし、それを覆す程の事態が発生したに過ぎません。しかも、あの船はこちらの砲撃を観測する前に回避行動に入っています。まるで覚醒者のような能力です」

「まあ、そんなことだろうな」

「どうしますか?未だ敵は本艦を捕捉していません。もう1度狙ってみますか?」

「いや、宙域にザニーのパイレーツキラーが到着している。こちらも上昇しよう。行くぞっ!」


 シンノスケはスロットルレバーを目一杯押し込んだ。

 惑星の重力を振り切り、一気に上昇するフブキ。


「間もなく電離層を抜けます。敵船からも捕捉されます」

「了解。遠距離で駄目なら目の前で撃ち込んでやる!」


 シンノスケはグラスモニターでブラックローズⅡを狙いながら一気に距離を詰める。


「警告!敵船との衝突コースです」


 マークスの警告もお構い無しのシンノスケ。

 惑星の重力を離脱したフブキは加速を続けながらブラックローズⅡに迫る。


 他の敵船はザニーのパイレーツキラーに翻弄されてフブキに対応できない。

 フブキとブラックローズⅡの一騎打ちだ。


 真正面から衝突コースを接近するフブキに向けて砲撃を加えつつ回避しようとするブラックローズⅡだが、間に合わない。


「主砲、近すぎかっ!」


 シンノスケは即座に主砲から速射砲に切り替えてトリガーを引くと同時にフブキをローリングさせた。


 ブラックローズⅡの砲撃がフブキの左舷を掠め、フブキの速射砲がブラックローズⅡのエンジンの1基を貫く。

 衝突を回避したフブキは旋回しながらブラックローズⅡの背後を取ろうとしたが、ブラックローズⅡは既にフブキの右側面に回り込んでいた。 



  【ブラックローズⅡ:ブリッジ】

「クッ、やられた!エンジンはどうだい?」

「第1エンジン、大破。完全にダメです」

「新しいエンジンなんか手に入らないから、この船はもうダメだね。元々貰いもんだから構わないけど、癪に障るねぇ」

「姐さん、どうします?脱出しますか?」

「それはもっと癪だね。・・・そうだ、宇宙海賊らしくあの船を戴こうじゃないか。第2エンジンだけで全力機動はどのくらい出来そうだい?」

「もって15分。それ以上はエンジンだけでなく他のシステムにも影響が出ます」


 その間にもフブキはブラックローズⅡの背後を取るべく回り込もうとしている。

 モニターに映るフブキを舌舐めずりしながら見たベルベットはブラックローズⅡを回頭させるとフブキの右側に回り込んだ。


「ホントにいい腕だけど、私とどっちが上かねえ。舞踏会の第2幕といこうじゃないか」


 残された1基のエンジンの出力を最大にし、ブラックローズⅡを急加速させてフブキに急接近する。

 激突する程の勢いだ。


「強行接舷するからね、アレを準備しておきな」

「アレですか?動作が不安定で危険すぎますよ」

「構わないよ。元々拾い物の不良品だからね。敵船の中で好きに暴れてもらうさ。どうせ30分も暴れればエネルギー切れを起こすから、その後で船を戴けばいいよ。・・・そうだね、ブリッジを目茶苦茶にされても困るから対人装備で放り込んでやりな。10分と掛からずにクルーを皆殺しにしてくれるよ」

「アイサー」

  

 ベルベットはフブキ目がけて特攻するが、フブキも高速機動で回避行動に入り、砲撃を加えながらの突撃を2度、3度と躱される。


「アハハハッ、凄いね。でもね、女の情熱を甘く見ちゃいけない。焦がれた男のためなら地獄の底まで追っていくわ。逃がしゃしないよ!」



  【パイレーツキラー:ブリッジ】

「シンノスケ、逃げろ!」


 フブキとブラックローズⅡが格闘戦を始めた時、パイレーツキラーは他の海賊船を次々と撃沈しながらもベルベットの思惑通り足止めを受けていた。

 ザニーも既に6隻の海賊船を撃沈しているが包囲を突破することができない。


「シンノスケッ!俺は追いつけないが間もなくダグが到着する。ポイントを送るから敵船の攻撃を避けながらダグと合流しろっ!」

『了解!』


 フブキは指定されたポイントに向けて離脱しようとするが、ブラックローズⅡが巧みにそれを妨害する。

 ザニーの目から見ても操艦の腕はベルベットの方が一枚上手だ。


「ダグッ、シンノスケがヤバい!急いでくれっ!」

『了解だが、こちらにも海賊船が来ている。なんとか突破する』

「おうっ。俺もなんとしても追いついてみせる!」


 しかし、パイレーツキラーもシールド艦もフブキの戦闘宙域まではまだ距離がある。



  【ブラックローズⅡ:ブリッジ】

 格闘戦を繰り広げているフブキとブラックローズⅡ。

 幾度となくフブキの攻撃を受けるブラックローズⅡだが、船を諦めたベルベットに迷いは無い。

 船の損傷もお構い無しのベルベットに先を読まれたフブキが徐々に追い詰められてゆく。


「女にリードされるなんて、ちょっと役不足だね。・・・これで終わりだよっ!」

 

 一瞬の隙を突いてブラックローズⅡをフブキに衝突させて突入路を叩き込んで、強行接舷する。


「今だよ!アレを突入させなっ!」

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