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決戦4

  【フブキ:ブリッジ】

「マスター、このままでは惑星カーパーの重力に捕まります」

「分かっている、それも最悪の事態として想定内だ」

「最悪の事態を想定して最悪の事態に嵌っては本末転倒です」

「・・・・うるさい」


 フブキのブリッジ内には惑星の重力に対する艦の姿勢制御が保たれていないための警報が鳴り響いている。

 元々大気圏突入と離脱の機能を有するのだが、そのためには惑星の重力に対して正しい姿勢を保つことが必要だ。

 その姿勢を保てないと降下速度の制御や惑星の重力を振り切ることが出来ず、大気圏に引き込まれて燃え尽きてしまう。


 フブキを大気圏に押し込もうとするベルベット等の攻撃に対応しているため、惑星から離れることも、艦の姿勢を固定することもできない。


「惑星の重力に捕まりました。高度が下がります」

「集中攻撃を食らうから重力離脱の姿勢を取ることができない。このまま降下するぞ!」

「降下姿勢を取ることも危険です」

「上昇するより、降下する方が敵との距離が広がるからまだマシだ。俺達を大気圏に押し込みたいならそのとおりにしてやる。ギリギリまで回避を続けて最後の最後で飛び込むぞ」

「了解」


 その間にも敵船からの砲撃は続いているが、是が非でもフブキに頭を上げさせないつもりだろう。

 既に惑星の重力に捕まっているフブキは急激な機動をすることができない。

 シンノスケは最小限の機動で敵の攻撃を躱してゆく。


「危険速度に達します。姿勢制御を」

「了解!艦首上げ角60」


 既に降下する船体により圧縮された空気が危険な程の高温になりフブキを赤く包んでいる。

 シンノスケは船体を回転させながら艦首を上げた。

既に危険な程の速度と温度に達しているため敵船からみれば重力に引かれて制御不能に陥って落下しているように見える筈だ。


「電離層を観測、突入します。レーダー等の機器が制限されます」


 惑星カーパーは非常に強く厚い電離層に覆われている。

 その電磁層に突入するとフブキのレーダー等が機能しなくなり、レーダーのモニター等から敵船の反応が消失した。

 無論ベルベット達のレーダーからもフブキの反応は消失しており、それまでの一連の状況からフブキが大気圏で燃え尽きたように見えたのである。



  【ブラックローズⅡ:ブリッジ】

「見えないね。本当に燃え尽きたかね」


 ブラックローズⅡのブリッジではベルベットがフブキの反応が消失した位置を額の目で凝視していた。

 第3の目、予知の能力でフブキの行く末を視ようとしているのだが、何も視えない。

 戦闘中というイレギュラーな状況での大気圏突入の経験の無いベルベットはフブキを大気圏に押し込んだという結果の思い込みから予知の能力に希望的観測が作用してしまい、フブキの正しい状況を導き出すことが出来なかったのだ。


「大丈夫そうだね・・・」

「姐さん!レーダーに新たな反応。高速船が接近してきます!」

「新手かい?」

「おそらく・・・高速船から強制通信。定型の警告、護衛艦です」

「せっかく獲物を仕留めたところなのに面倒だね。まあいいや、彼奴等に相手させよう。5隻もいれば十分だね」

「アイサー」


 ベルベットの指示で5隻の海賊船が新たに現れた護衛艦に向けて砲撃を開始した。



  【パイレーツキラー:ブリッジ】

「あれっ?シンノスケの奴、惑星に落ちちまったのか?まあいいや、おかげで獲物がごっそり残っている。稼ぎ時だぜ」


 ザニーは救難信号と交戦信号を発信すると同時に海賊船に対して強制通信を発する。


「おらっ!よく聞け海賊共。こっちはアクネリア銀河連邦サリウス恒星州所属の護衛艦パイレーツキラーだ!死にたくなければ機関を停止して降参しろ!警告に従わないなら容赦しねえぞ!」


 警告というよりは脅迫のような内容だが、これで必要な手順は整った。

 あとは海賊船の出方次第だが、この状況で宇宙海賊が警告に従うことはあり得ない。

 案の定、集団から離れた5隻の海賊船がパイレーツキラーに向けて攻撃を開始してくる。


「そうこなくちゃ面白くねえ!行くぜ!」

 

 ザニーはトリガーを引いた。



  【ブラックローズⅡ:ブリッジ】

「姐さん、こちらの攻撃に対して護衛艦が発砲。ミサイル4と宇宙魚雷2・・・護衛艦に向かったグレイハウンドとスコーピオンの2隻が撃沈されました。護衛艦、他の3隻の囲みを突破してこちらに向かってきます」

「あれは高速ミサイル艇かい。ちょっとばかり厄介だねえ。面倒だから逃げ出そうかね。エンペラー、クラーケン、トライデント、ラッキーカードの4隻はブラックローズⅡの護衛についてきな。他の連中はあの護衛艦を足止めするんだよ。目的は達成したんだから無理をする必要はない、私等が離脱したら適当に逃げて構わないからね。報酬が欲しければしっかり役目を果たして生き残りなよ!」


 ベルベットは反転すると4隻の海賊船を率いて離脱を図る。

 その時、ブラックローズⅡのブリッジに警報が鳴り響くのと同時にベルベットは操舵ハンドルを切った。

 ブラックローズⅡの鼻先をビーム砲の光が掠める。


「っと、危ない!どこからの攻撃だい?」


 反射的に攻撃を躱したベルベットだが、レーダーのモニターには新たな反応はない。


「すみませんっ、観測できませ・・・新たな砲撃!エンペラーに命中、ヤラれました。惑星カーパーの大気圏の中からです!」

「ちっ!敵の位置の特定を急ぎなっ!」

「アイサー!」 

「なんだい、生きていやがったのかい。ホント、しつこい男だよ」


 ベルベットは惑星カーパーに向けてブラックローズⅡを回頭させた。

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