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長居は無用

 シンノスケ達が運んできたのは医薬品と医療システム機器だが、これらの品はウェスリーの企業からの発注されたものであり、公開されている情報によれば、それらの医薬品等は民生用に使われる品々のようだ。 

 仮にコロニーが帝国の手に落ちた場合にはどうなるのかは分からないが、そこまではシンノスケ達が関わるべきではない、そもそも関わることが出来ない問題である。

 契約上の仕事を終えた以上、このコロニーに危機が迫っているならば長居は無用、荷下ろしと諸々の手続きを終えたシンノスケ達は早々に帰還の途につくことにした。


 ウェスリー中央コロニーを出港したフブキとツキカゲだが、仕事を終えたからには急ぐ必要もないので、戦場を突っ切る必要もない。

 戦場と反対方向に向かい、大きく迂回して宙域を離れる。


「よし、戦闘宙域は離れたが、警戒を厳重にしつつ国際宙域に抜けよう。ミリーナ、周辺宙域の警戒を頼む」

「了解ですわ」

「セラにはミリーナの警戒を基に航路の選択を任せる」

「了解しました」


 フブキの警戒機能を最大限に活用し、徹底的に危険を避けたシンノスケ達はダムラ星団公国を抜け、1回目の空間跳躍を経て無事に国際宙域へと到達することが出来た。


 国際宙域を順調に航行すること2日。

 異変が起きたのはその2日目だ。


「反応!方位1及び10、索敵範囲ギリギリの位置に所属不明船18隻が展開しています」


 フブキのレーダーが多数の不審船を捉えた。


「了解。遠いな、フブキの索敵範囲ギリギリの位置ならば我々のことは捕捉できていないだろう。ミリーナ、レーダーモードはパッシブだな?」

「当然です。相手に気取られるようなヘマはしませんわ」


 シンノスケは不審船の位置からその意図を分析する。

 国際宙域で左右に分散して潜んでいるということは宇宙海賊と判断して間違いないだろう。

 それも18隻もの数だとすれば、狙いはシンノスケ達のような1、2隻の小物ではない、船団等の大物狙いだ。


「航路から大きく外れている位置に展開しているということは、此奴等は待ち伏せで、斥候役が狙いの獲物を追っている筈だな」

「シンノスケさん、どうしますか?見つからないように航路を変更しますか?」


 セイラの問いにシンノスケは首を振る。


「いや、このまま進もう。このまま進んでも奴等の索敵には引っ掛からないだろうし、仮に捕捉されたとしても他に狙いがあるならば俺達には手出しをしない筈だ」


 フブキのレーダー索敵範囲は並の船の比ではない。

 それこそ並の宇宙海賊が持つようなレーダーとは桁が違う。

 このまま進んでも問題はないだろうし、少なくとも相手に先手を取られることはない筈だ。


 それでもシンノスケは万全を期するべく宇宙海賊に最接近する箇所を通過する際にはフブキとツキカゲのエンジンをカットして慣性航行で切り抜ける。


「不審船の索敵範囲を抜けました。探知された兆候はありませんわね」

「よし、このまま通過してしまおう。奴等の狙いはこの先から来る筈だ。接触出来たなら情報を伝えよう。向こうからの要請があれば臨時に護衛を引き受けてもいいな」


 シンノスケは再びエンジンを始動すると先を急いだ。


 進むこと約3時間。


「方位12、民間船団が接近」


 ミリーナの報告にレーダーのモニターを確認する。

 接近してくるのは12隻。


「奴等の狙いはこれか。セラ、当該船団の所属は分かるか?海賊が待ち伏せしていることを伝えてやろう」

「了解。識別信号を照合します。えっと・・・アクネリア銀河連邦ガーラ恒星州所属、サイコウジ・トランスポートの貨物船団です」


 接近してくるのはサイコウジ・カンパニー傘下の通運企業、サイコウジ・トランスポートの船団だった。


「サイコウジ・トランスポートの船団か・・・。これは俺達の出番はないな」


 肩を竦めるシンノスケにセイラとミリーナは首を傾げる。


「シンノスケさん、どういうことですか?」

「いや、実際に接触してみれば分かるよ」


 やがてサイコウジ・トランスポートの船団との通信可能な距離に接近した。


「セラ、船団に回線を接続してくれ、俺が直接話す」

「了解しました。回線接続、どうぞ」


 シンノスケは船団に向けて通信を送る。


「前方から接近中のサイコウジ・トランスポートの船団へ、こちらアクネリア銀河連邦サリウス恒星州自由商船組合所属の護衛艦フブキの艦長カシムラです。宇宙海賊についての情報があります」

『こちらサイコウジ・トランスポート第1貨物船団、サイコウジです。シンノスケ君、久しぶりだな』


 モニターに船団の代表者の男性の姿が映し出された。

 恰幅がいい中年の男性だが、その口調はシンノスケに対してやけに親しげだ。

 セイラとミリーナがシンノスケを見るとシンノスケは2人に対して悪戯っぽい笑みを見せる。


「お久しぶりです、義兄さん。お元気でしたか?義姉さんが色々とボヤいていましたよ」

『ハハハッ、帰還する度にエミリアには怒られているが、私は現場の方が性に合っているからな』


 モニターに映し出されているのはシンノスケの義姉であるエミリア・サイコウジの夫であり、サイコウジ・トランスポートの経営責任者であるハワード・サイコウジだ。

 会社を取りまとめる立場でありながら船団を率いて銀河を駆け回る変わり者でもある。


 そうこうしている間にサイコウジの船団の姿がモニターに映し出された。

 大型貨物船が4隻、中型貨物船が5隻、そして船団護衛のコルベットクラスの武装船が3隻。

 その中の1隻を見たセイラとミリーナが驚きの声をあげる。


「「えっ?ケルベロス?」」

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