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狙われている暇ではない

 宇宙軍情報部のセリカ・クルーズ少佐からの情報によれば、軍の一部の高級幹部がシンノスケの命を狙っているとのこと。 

 シンノスケにしてみれば、宇宙軍時代に自分を疎み、陥れた人物に心当たりはあるが、軍を辞めた今となっては命を狙われるような心当たりはない。

 それでも情報部からの情報だ、命を狙われているというのは事実なのだろう。


「・・・というわけで、私は命を狙われているらしい」


 共に仕事をする仲間達には隠しておくわけにはいかないので事実を説明しておくことにしたのだが、皆の反応は予想外なものだった。


「シンノスケ様が命を狙われているなら、常に私が一緒にいればいいことですわ。私の能力をもってすれば襲撃を予測して回避することなど造作もないことですわ」

「それに、仕事で宇宙に出れば危険なことばかりですよね?宇宙海賊や宇宙軍の特殊部隊にも襲われたこともありますし・・・。もし本当にシンノスケさんが命を狙われているのなら、暫くの間はどんどん仕事を入れて宇宙に出てしまえばいいのではありませんか?コロニーでシンノスケさんを狙うより、宇宙空間でフブキを狙う方が余程困難で手間が掛かると思うんですが?」


 ミリーナとセイラはあまり動じていない様子だ。


「俺も怖いっちゃ怖いけど、そんなこと言ってられないよな」

「そうよ。私達はシンノスケさん達についていくって決めたんだから覚悟を決めるわよ」


 アンディとエレンは少なからず動揺したようだが、そもそも2人にはツキカゲの運用を任せているため、常にシンノスケと行動を共にしているセイラ達に比べれば危険度は低いだろう。


 結局のところ、セイラの提案が一番現実的ということで皆の意見が一致したが、流石にシンノスケ自身が狙われている状況で護衛依頼を受けるわけにもいかない。

 当面の間は運送と貿易に軸足を置いていくことになった。


 そうと決まれば直ぐにでも行動だ。

 船の点検整備にはまだ2日程度掛かる予定だが行動開始は早いに越したことはない。

 シンノスケはマークスやアンディ達にそれぞれの船のエネルギーや弾薬の補充と、何時でも出航できるよう準備するように指示をするとミリーナを伴って自由商船組合に赴いた。


「相変わらずダムラ星団公国方面の運送依頼が多いな」

「そうですわね。帝国との戦況が気味が悪い程に拮抗して長期化していますが、そうなると国力において劣る公国が疲弊するのは必然です。物資が不足すれば他国から仕入れるしかありません。見てください、公国の民間企業からの依頼だけでなく、公国政府からの依頼もありますわ」

「それが帝国の狙いかもしれないな。戦争を長引かせ、公国の国民を疲弊させて心を折れば、その憎しみの矛先は帝国だけでなく公国にも向けられる」

「帝国出身の私が言うのもなんですが、下劣ですわね」

「それが戦争ってもんだよ。戦略や戦術に善悪はない。まあ、そうはいっても俺達にとってはそういった戦争のおかげで仕事が増えるんだけどな」

「戦時特需ってことかしら?」

「まあな、俺達自由商人だけでなく、依頼人の公国の企業も利益があるからな」

 

 結局、シンノスケは数ある依頼の中から医薬品や医療システム機器関係の運送依頼を受けることにした。

 依頼受諾の手続きをしようと受付カウンターを見てみるが、いつものカウンターにリナの姿が見当たらない。

 別のカウンターにいたイリスに聞いてみたところ、今日は休みだということだ。


「仕事から戻ってきたばかりのカシムラさん達は直ぐには次の仕事を受けることはないだろうからって、有給休暇を使って休んでいるんですよ。カシムラさんを食事にでも誘おうかと言ってましたよ」


 リナと共に商会の担当を担ってくれているイリスが手続きを進めながら余計な情報をぶっ込んできた。

 シンノスケの傍らにいるミリーナからピリピリとした気配が漂ってくる。


「でも、実家から急な呼び出しがあったみたいで、急遽実家のあるコロニーに帰省しているんですよ」


 イリスの言葉に傍らの殺気に似た気配が消えた。

 恐る恐る視線を向けてみると、ミリーナはスンッとしたすまし顔で何事もなかったような表情でいる。

 これは余計な藪は突かずに流すことにして、速やかに手続きを済ませることにした。


 今回の仕事の目的地はダムラ星団公国の惑星ウェスリーのコロニー。

 リムリア銀河帝国の領域に近い激戦地だ。

 危険も大きいが、その分報酬もいい。


「はい、手続き完了しました。物資搬入は3日後でよろしいですね」

「はい。積み込みが完了したら直ちに出航します」

「分かりました。よろしくお願いします。でも、カシムラさんが連続での依頼受諾なんて珍しいですね」


 イリスの問いにシンノスケは肩を竦める。


「はい、ちょっと命を狙われているんでね」


 そう言いながらイリスに背を向けて歩き出すシンノスケ達。


「そうでしたか。それでは気をつけていってらっしゃい。・・・・・えっ?」

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 命を狙われているのに相変わらず平常運転な、シンノスケ一味。流石、死亡フラグを何度もくぐり抜けてきた猛者達だけのことはある! [一言] 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いい…
[一言] 軍籍を離れたとは言えバリバリの「いくさ人」でなぁ。
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