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早速の依頼

 シンノスケの新しいドックは100メートルを超えるフブキとツキカゲを収容可能な程に広いが、ドック内にあるのは宇宙船を固定する船台が2基と事務所を兼ねた小屋があるだけだ。

 加えて宇宙船が発進するための気密扉や船台の移動は自由商船組合のドック管制室で一括管理されており、勝手に操作出来ないようになっている。


 そんなドックに並んで停泊しているフブキとツキカゲを見上げるシンノスケとマークス。

 まだ早い時間であり、セイラはフブキ内の自室で休んでいる。

 今日は予定も無いのでツキカゲに住むアンディ達もまだ休んでいるし、ミリーナもまだ顔を見せていない。


 シンノスケが宇宙軍を除隊して自由商人の護衛艦乗りとして独立し、マークスと2人、ケルベロスを駆って宇宙に飛び出し、サリウス恒星州の自由商船組合に加入してから今までの間に様々な仕事をこなして経験と実績を積み重ね、その中でセイラが加入し、ミリーナが押しかけてきた。

 やがて宇宙海賊との戦闘でケルベロスを失い、その際にシンノスケも重傷を負って左目を失い、その後にケルベロスに代わり護衛艦フブキを手に入れた。

 そして今、アンディとエレンの危機に手を差し伸べて2人を雇い入れ、カシムラ商会を立ち上げ、新たな護衛艦ツキカゲを手に入れたのである。 


「壮観だな」

「そうですね」

「2人で始めて、ここまでくるのもあっという間だったな」

「そうですね」

「これからも・・・」

「マスター、ちょっとお待ち下さい」

「ん?何だ?」

「会話の流れが・・・何というか、最終回が近いとか、何かの布石のような雰囲気になっています」

「何をわけの分からないことを言っているんだマークス」

「言っている私にも分かりません・・・」


 意味の無い不毛な会話を交わすシンノスケ達。

 セイラやミリーナがいない時の2人の会話はいつもこんな調子だ。


 放っておくと何時までもグダクダな会話を続けてしまう2人だが、今回は幸運?にも2人の会話はドックに備え付けられたインターホンの音に遮られた。


「ん?誰だ?ミリーナか?」

「ミリーナさんはパスキーを持っているのですからインターホンを押すはずがないでしょう。来客ですよ」


 マークスに促されてインターホンの応答ボタンを押したシンノスケ。


「シンノスケッ!採掘行こうぜっ!」


 モニターの画面一杯に映し出されたグレンの顔に思わず仰け反る。

 グレンの顔のどアップの背後にも複数の人がいるようで、グレンの一味が総出でお出迎えのようだ。


「グレンさん、採掘の護衛なら依頼を出してくださいよ」


 シンノスケは呆れながらグレン達を招き入れた。

 

「ごめんなさいね。グレンが迷惑をかけて・・・」


 謝罪しているようだが、相変わらず感情が込もっていないカレン。

 グレンを諫めるような行動は絶対にしていないだろう。


「これがシンノスケの新しい船か。立派なもんだ!問題はなさそうだな」


 困惑するシンノスケを余所にツキカゲを見上げるグレン達。


「いや、ですから護衛の依頼なら組合を・・・」

「組合には昨日のうちに依頼を出してある。ただ、どうにも待ちきれなくてな、こうやって迎えに来たわけだ」

「だったら私の端末に連絡をくれればいいじゃないですか」

「それもそうなんだが、今回の仕事は護衛艦の他にシンノスケの新しい船が必要でな。せっかくだから直接見に来たんだ」

「ツキカゲがですか?」

「そうだ!軍の小型輸送艦だったと聞いたが、ペイロードも十分にありそうで、今回の仕事におあつらえ向きだ。だから早速組合に行こうぜ!」


 グレン達に取り囲まれたシンノスケはため息をつく。

 こうなっては無理矢理にでも組合に連れていかれるだろう。


「依頼を受けるかどうかは内容と報酬を確認してからですよ」

「おうっ、任せておけ」


 マークスを残し、グレン達に連行されるようにドックを出たシンノスケだが、ちょうどそこで出勤してきたミリーナと鉢合わせになった。

 

「あら、シンノスケ様。お出かけですの?」

「ああ、採掘業者のグレンさん達の頼みでな。組合に行ってくる」

「でしたら私も行きますわ」


 慌ててついてくるミリーナ。

 シンノスケはグレン達に連行されつつもミリーナを連れて組合に向かった。


 シンノスケ達が自由商船組合に到着したところ、リナがばつが悪そうな表情で待ち構えていた。


「・・・グレンさん、あれほど私がシンノスケに取り次ぎますって言ったのに、結局シンノスケさんのドックに押しかけちゃったんですね」

「おう。久々にデカい仕事をやれると思ったら待ちきれなくてな!」


 そんなリナとグレンのやり取りを見るシンノスケだが、半ば強引に連れてこられたとはいえ、依頼を受けるかどうかはその内容を聞いてみないと決められない。


「リナさん。私もここまで来てしまいましたから仕方ないです。依頼の内容を聞かせてください」


 シンノスケに促され、リナはため息をつきながらもグレンからの依頼の内容を説明する。


「グレンさんからの依頼ですが、レアメタル採掘の護衛と、採掘したレアメタルの輸送です。グレンさんはシンノスケさんのフブキとツキカゲの2隻での護衛と輸送を希望しています。目的地はシーグル神聖国です」

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― 新着の感想 ―
[一言] シンノスケ「まだ、登り始めたばかりだぜ。この、自由商人坂をよ」 今までご愛読ありがとうございました! 新米少尉先生の次回作にご期待下さい!! か、 宇宙大魔王「人質は痩せてきたのでファミ…
[一言] 会話の流れが不穏すぎる……。 フラグが立たないよう。カシムラ商会非公式条例をつくりましょう。余計にフラグが立ちそうだけど(笑)。
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