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宇宙クジラを救え2

「あれはリムリア帝国軍標準装備の対艦ミサイルです」


 マークスの報告にブリッジにいた全員が表情を強張らせた。


「でも、何でこんなことになっていますの?何故リムリア帝国軍のミサイルが宇宙クジラに?」


 ミリーナの怒りに満ちた疑問にサンダースとヤンも同意する。


「確かに、何故対艦ミサイルなんかが?」

「しかも、軍用のミサイルが2発も不発なんて。不自然ですね・・・」


 そんなミリーナ達の疑問に答えるのはシンノスケだ。


「多分、リムリア帝国の軍艦が宇宙クジラの子供を捕獲しようとしたか、面白半分に撃ち込んだんだろう。通常のミサイル攻撃では宇宙クジラの外皮を貫いて身体に食い込んで爆発し、宇宙クジラの身体を粉々にしてしまう。そこで、一撃で殺さないように、ミサイルの速度と撃発のタイミングを調整しようとして失敗したんだろう」

「そんなっ、そんな理由ですの?」

「あくまでも俺の想像だけどな。胸クソの悪い想像だが、多分これが真相だ。リムリア帝国の連中は戦争中なんだから戦争に集中していろってんだ!」


 唾棄するかの如く言い放つシンノスケ。


「・・・シンノスケさん、そんなことよりも、あの子を助けてあげないと!」


 目の前の惨状に言葉を失っていたセイラが我に返り、そんなセイラの声に皆が冷静さを取り戻す。


「セラの言うとおりだな。よし、先ずは状況の確認だ。ヤンさんとセラ、ミリーナは親クジラの動静を注視しつつ調査を続行してくれ」

「「わかりました」わ」

「サンダースさんとマークスは子クジラと思われる小惑星の情報を収集・・・というか、あれが宇宙クジラだとして、生きているのか?マークス、分かるか?」

「無理ですね。宇宙クジラは擬態すると完全に小惑星になりきってしまいます。どんな探知機能を駆使しても小惑星としての反応しかありません」


 マークスの返答にシンノスケは考え込む。


「・・・まあ、親クジラが我々に助けを求めているのだから生きているものとして対応する必要があるな。しかし、宇宙クジラの生態も身体構造も分からないから、これは難しいな」


 フブキは一定の距離を保ちながら子クジラの周囲を回り、その状況を確認する。

 子クジラに突き刺さっているのは対艦ミサイルが2発。

 不発弾とはいえ、このままだと何時爆発してもおかしくない。


「身体に食い込んでいるのはミサイルの先端から中央部だな。これは不幸中の幸い、といったところだなマークス」

「はい、そうですね」


 実際のところ、何時爆発するか分からない不発弾のミサイルだが、これの処理についてはシンノスケもマークスもそれほど問題視していなかった。

 事実、対艦ミサイルの不発弾処理は然程難しいものではない。

 標準的な対艦ミサイルは本体後部にあるスイッチを操作するだけで起爆装置を機能停止させることができる構造になっているのだ。

 というのも、宇宙機雷や時限爆弾とは違い、高速で飛翔するミサイルは解体されることを想定しておらず、不発だった時や事故が発生した時に簡単に無力化することが出来る構造になっているのである。


「取り敢えず、2発とも機能停止スイッチは露出している。後はあれをどうやって操作するかだが・・・マークス、内火艇で処理できるかな?」

「はい、本艦に搭載している内火艇の作業用アームは精密作業にも対応しています。作業用アームの操作をマスターでなく私がするなら問題はありません」


 シンノスケとマークスにとっては不発弾処理自体は問題ではないが、その後の処置については問題だらけだ。

 そこでシンノスケはサンダース等と協議して宇宙クジラ救助作戦を綿密かつ慎重に立案した。


 諸々の準備も終わり、いよいよ救助作戦が始まる。

 シンノスケとマークス、ヤンの3人が内火艇に乗り込み、フブキに残るのはセイラとミリーナ、サンダースの3人だ。

 フブキを正規に操艦できるシンノスケとマークスがフブキから離れることになるが、幸いにして大型艦艇の操縦資格を持つサンダースがいるので、サンダースの指導の下という名目でミリーナが操縦席に座っている。


 フブキに搭載されている内火艇は操縦室に3人、後部搭乗室に4人が乗船可能で、敵船への強行接舷も可能だが、武装は自衛用の対空機銃を2門しか装備していないため、主に本船で事故が発生した際における脱出や他船への移乗するのに運用する他、作業用アームを駆使しての船外作業を行うことも可能な多用途の小型艇だ。


 操縦席に着いたシンノスケは内火艇の各種システムを起動した。


「よし、準備完了、発艦する。ミリーナ、内火艇を船外に出してくれ」

『了解ですわ』


 フブキの艦首底部のハッチが開き、ラッチで吊された内火艇が船外に出る。


「エンジン始動。ロック解除」

『了解、ラッチのロックを解除しますわ』


・・・ガクンッ・・・


 ラッチから切り離された軽い衝撃と共に内火艇がフブキから離脱した。

 シンノスケはゆっくりとスロットルレバーを押し込み、内火艇を前進させ、小惑星に擬態している宇宙クジラに向かう。


「さて、慎重に行くぞ」


 宇宙クジラ救助作戦が始まった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 数百m級の宇宙生物が移動するのは、どういう推進器官によるものなんだろ。生体イオンエンジンかな、重力制御かな。活動エネルギー源も気になるわ。妄想が広がるからSFジャンルは好き。
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