001 ファーストコンタクト
例えば・・・
うちの苦手な17歳くらいのギャル子の魂を
うちの大好きな5才くらいの超かわいいショt・・・男の子の魂が食べたら
10歳くらいのギャル夫になってまうんやろか????
なんて、よく分からへんコト考えてたら
魂を食べたり、食べられたりなんて事
そうそうある事じゃないって、誰かにツッコまれた。
・・・ような気がする。
で、えっと、その続き、なんやったっけ?
ボッ・・・ ボボッ・・・
(あっ、そうやった。
うち、今から、火ぃに魂、食べられるんやった・・・)
“ はむっ!! ”
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地球から遠く離れた
ある星の深い森の中
ネコ族と呼ばれる亜人種が暮らす村があった。
「こっち来んにゃ! この、顔面ハゲ!」
「・・・はいはい。
にゃら、ミャーにはお肉やらにゃいのだ。」
「に”ゃッ?!
そ、それはにゃいにゃ・・・ 卑怯じゃにゃいか!
ルーのあほー! まっしろー!
ぶさいくー! 顔面ハゲー!!」
「知らんのだ。」
プイッ
ルーと呼ばれた彼女の名前はルニャ。
彼女を説明する時
真っ先に挙げられる事は
その異様な色の毛並みで
全身の毛が、真っ白だという事だろう。
ルニャ以外のネコ族たちは皆
決まって森や闇に溶け込める地味カラーで
それが種の進化というものだ!
などという者が多く、それもあってか
暗い色ほど憧れの眼差しを向けられる事が多い。
そしてさらにルニャは
まだピッチピチの若さだというのに
年々顔の生え際が後退しており
村で、益々うく存在になっていた。
しかし、ルニャはそれを恥ずかしいなどと
思った事は一度もない、どころか・・・
(はぁ・・・
ブサイクの嫉妬は、ほんと醜いのだ。)
にゃんて事を、最近では考えだすようににゃっていた。
あぁ、ちにゃみに、ネコ族のネコ舌では
「な」という発音は、ちょっと手強く
打率1割にも満たにゃい。
そしてルニャは・・・
(にゃんでルーだけ、こんにゃ綺麗にゃんだろ?)
こんなセリフを真顔でフツーに言える
ナルシストでもあった。
綺麗・・・という感覚はいつだって主観的なものだ。
他のケモっ娘や、ケモボーイたちが
いくらこの真っ白で
ハゲ散らかした顔を
異様でおぞましいと感じようが
どれだけ狩り場で目立ってしまおうが
彼女自身は、この毛並みを
美しく綺麗で、高貴なものだと感じている。
そんな異様な風体のルニャなのだが
彼女が、この村で、フツーにやってこれたのは
「強い」という事が大きい。
ネコ族では
強いとは正義であり、憧れだ。
だが同時に、地味カッケー! でもあるという事だ。
なので、ルニャが1人で、大きな獲物を持ち帰ると
「ルー、マジすっげぇぇなッ! きんもいけど。」
といった、ネコ族特有の
ちょっと正直すぎる感想で迎えられる。
他にも、ネコ族は、濡れる事を嫌うので
水浴びをしない事が普通だったり
オスたちがマーキングと称して
そこら中にスプレーをまき散らしたりする事も
ネコ族では当然の事なのだが・・・
ルニャはイチイチ感覚がおかしく
綺麗好きで、毎日のように近くの川で水浴びをする。
一同 「キモい・・・。」
さらにオスたちのマーキングに
砂をかけてまわったりする。
特に彼女の住処の近くにそんな事をしようものなら
不機嫌に身を任せた彼女に、フルボッコにされる。
ボコられA 「まじアタオカ。」
そんな、ちょっとここでは浮いているルニャは
他にもいろいろと、残念な感覚の持ち主だった。
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ある日の昼下がり
ルニャは、最近見つけた
お気に入りスポットへと向かっていた。
小川・原っぱ・でっかい木!
1行で表現するなら、そんな感じの場所なのだが
ルニャたちが暮らす深い森で
こんなに広くひらけていて
こんなに太陽の光にあふれている場所は
ここくらいしかない。
川で水浴びするもよし
1本だけドドーンと生えている大樹の木陰で
涼みながら昼寝をするもよし。
なかなかのリゾート地だ。
だがまぁ、ここも他のネコ族にとってはおそらく
身を隠す場所すらも少ない、落ち着かない不快な場所、なのかもしれない。
だがまぁ、ルニャにはそんな感覚などまったくなく
この日も、このお気に入りの場所へと向かっていた。
(・・・・お??
らっきぃーにゃ♪
バカにゃごちそうがいるのだ・・・ペロリ)
スススッ・・・ ソローーーリ・・・・
幸運な事に今日は
珍しく群れからはぐれ
ポツンと1匹で居るシカを見つけた。
※ シカ:地球でいう鹿のような草食動物。
ネコ族よりひとまわり程デカい。
ルニャにとっては
群れていても大差ないのだが
襲い掛かるまでに見つかる可能性がグンと下がるので
全力で走るダルい時間が、短くてすむ。
楽チンだ。
ジリジリ・・・
スッ――
シュピン・・・・
「 ・・・ッ!? 」
(ぃよぉぉーーーしッ! 決まったッ!!)
グラリ・・・ ドサッ・・・
獲物が倒れたのを確認すると
ルニャは決まってあることをする。
マウンティング アピールタイム!
このイケ好かない習性がなければ
もうちょっと視聴者うけしていたかもしれない。
「シカくんよ?
ミャーは狩られた事・・・
いや、死んだ事にすら
気付かにゃかったんじゃにゃいラ?
ふぅぅーーーっふっふーっ♪」
ドヤ顔と厨二口調で煽られたあげく
高笑いまで決められたシカには、同情しかない。
しかもちょっと噛んだくせに
しれっと無かった事にされては・・・
苛立たしくて死にきれないのではないだろうか?
心配になる。
とはいえ、自然界は残酷だ。
ルニャの言う通り
シカは何が起こったのかすら分からないまま倒された。
ちなみに、ルニャはその一瞬で
シカの首筋の半分ほどを
その長い爪で切断しており
完全な致命傷を与えている。
あぁ、『ミャー』と言うのは
ネコ族が良く使う二人称で
『あなた』とか『お前』とかいった意味である。
「ルーは最強にゃーっ!!!」
ピクッ・・・
だが、しかし・・・
ヨロ・・・ ヨロヨロ・・・
完全に仕留めたはずのシカは・・・
ふらつきながらも再び立ち上がった。
余程ムカついたのだろうか・・・?
「立った・・・にゃと???」
ネコ族の感覚では・・・
しっかり仕留めないと
傷を負った獲物が逃げ回りダルい。
無駄な傷も増え、味が落ちるし
場も乱れるしで、何もイイことがない・・・と感じる
なので当然、一撃必殺!
これ最高! カッケー! となる。
逆に・・・
狩りの下手な者程
手数が多く、仕留めるのも下手くそ、となり・・・
ぷぷーっw だっさーw なのだ。
なので、しっかりキッカリ
ちゃんと仕留めたと思い込み
なんならドヤってしまったまであるルニャは
立ち上がるシカを見て、耳を赤らめた。(恥)
(くっ・・・屈辱にゃ・・・・)
ルニャが若干イラッとしていると
立ち上がったシカは、なんとさらに
ルニャに向かって弱々しい足取りで歩き始め・・・
(・・・・・?????)
ルニャには目もくれず、そのまま横を素通りし
もう何歩かを歩いた後
なぜかクルリとまたこちらに向き直り
恐らくもう力が入らない4本の脚を
ややハの字型にしてまで踏ん張り、立ちふさがった。
「・・・・・・・・は?????」
いやいや、いやいやいや・・・
まだ動いている事も謎だが
シカのこんな行動など、見た事ない。
もちろんいつだって
シカは絶命の瞬間まで諦めず、逃げようとはする。
だからルニャも、いつだって
行動不能となる急所を狙っていく。
何より、かっこいいし
手は抜かない。
しかし、このシカはなんだ??
ダッシュすらできそうにないこんな態勢で?
棒立ちして?
え? 逃げないの???
は? あんた、何してるん?? 状態。
さっぱり意味が分からない。
そもそも、そんな知性というか
意思というか、そういった本能以外の何かを
亜人種でもない、ただの動物から
感じた事など、今まで一度もなかった。
(にゃにが起こってるにゃ・・・???)
「ハッ・・・」
ルニャは、その時初めて
シカの後方・・・
大樹の根本に居る“ 何か ”に気が付いた。
(にゃんだ・・・?
キラキラして・・・)
「 綺 麗 」
ルニャがその何かに目を奪われ
思わず 綺 麗 と口にした瞬間
シカは、ルニャがよく知る
ただの食料に変わり
重力に引かれるまま、地へ崩れ落ちた。
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いつものルニャなら、他に獲物が居ようとも
仕留めた獲物を持ち帰って終わりなのだが
今日は、目に入った綺麗な何かが
気になって仕方なかった。
地球の皆さんが見たのであれば
ソレはおそらく・・・
茶色い服を着た小さな女の子が
テディベア人形のように
両足を前に投げ出して、チョコンと座っている。
・・・だろうか?
実際、身体のフォルムは人型で
顔だって人だ。
死んでいるのか、眠っているのか?
ピクリとも動かず、大樹の根本にソレは居た。
うん、これ・・・
人間の子だよね。 と皆さんなら思うだろう。
付け足すなら・・・
一応、頭の上にシカの角っぽい何か付けているし
全身、雑にシカっぽい色合いで統一しているっぽいから
シカのコスプレ・・・のつもり? なのかな?
と、思うかもしれない。
しかし、人間や洋服など見たこともなく
そんな存在を知るはずもない
異世界のど田舎のネコ族の少女の目には・・・
異様!!!
異様そのものに映っていた。
「 ??????????
にゃ・・・にゃんじゃこのシカ・・・?」
だが、最初に「綺麗」と口から出たように
「異様」よりも目を引くものがそこにあった。
ルニャが目を奪われ「綺麗」と感じたのは
長くてサラサラの銀色のタテガミ(頭髪)だった。
ネコ族にとって
美しいタテガミは、美の象徴だ。
風に揺れるタテガミには
どうにも抗えない魅力があり
うっとりと目を奪われてしまうのだ。
地球の皆さんの感覚でいうなら・・・
それはまさしく
【 おっぱい! 】
それに匹敵するものだろう。
地球ではソレが揺れる姿に
抗える者はいない・・・とも聞く。
とにかくそんな
強烈な魔性のインパクトが、タテガミにはある。
なんなら、ちょっとムラムラくる!
まであるのが、ネコ族にとってのタテガミだ。
実はルニャ・・・
これまで、自分よりも長いタテガミを見たことがない。
村で1番の美ネコのフーシェでさえ
実はタテガミの長さだけで言うなら
ルニャの方が長かったりする。
なので、タテガミには絶対の自信があった。
だが! この生物のコレはなんだ?
長さもだが・・・
この風に流れるようなサラサラとした気品・・・
ゴワゴワで癖っ毛のネコ族では到底あり得ない極上の毛並み。
最初、ちょっとの間、長さだけなら自分の方が!
と、思った。
が、両サイドに結ばれた2本のしっぽのような
タテガミを見て、愕然とした。
(にゃ・・・にゃん・・・だと・・・ )
・・・と。
この生物、長過ぎるタテガミを
なんと結んでいたのだ。
結ぶ程長い・・・
いや、それ以前に
結ぶという発想がまずネコ族では既知の外だった。
まぁ・・・ ただのツインテールなのだが。
(ヤバっ!
ニャンヤバっ!!
これがもし、間違って黒だったりしたら・・・
間違いにゃくチヤホヤされるだけで
死ぬまで食っていけるレベルじゃにゃいか!
仔・・・仔ジカのくせに・・・。)
※ ニャン:とても・めっちゃ・超・鬼などの意。
ゴクリ・・・
(ルーは・・・
こっちのが、好きだけど・・・)
そう・・・ルニャは
地味カラー派ではない。
要するに、ルニャにとって
この銀色に輝くツインテールは・・・
どストライーーーーークッ!
それだった。
まぁ、地球のツインテにしてはむしろ短めかもだが
ネコ族のルニャにとってそれは
ニャンヤバ・・・ とやらだったらしい。
そうですね・・・
地球の皆さんにもうちょっと
共感しやすくちゃんと伝えるなら・・・
瑞々しく張りのある美ny【ピー】が
ぷr【ピーーーー】揺r【ピーーーーーー!】
あぁ・・・すいません。
さすがに規制さんがいらっしゃいました。
ここで・・・
ルニャが体感している事を
もう1つ説明しなければならない。
というのも、ちっこい人間がシカコスでもしている。
というのが、みなさんの認識かと思いますが
実は、直にこれを見ているルニャには
この生物が、ほぼシカに見えている。というのだ。
は?
あ、いや、マジで。
この適当なカッコの少女が
ルニャにはシカに見えているのだ。
なんだろう?
視覚ではこの変なチビッコをとらえているのだが
それを脳がシカだと解釈してしまうのだ。
そう認識させられている?
なんか、化かされてるとか
頭バグっちゃってるとか
そんな感じなんだと思われる。
兎にも角にも
事実、ルニャはこの姿を見つつも
これをちょっと感じがおかしいシカの子
・・・にしか思っていなかった。
(にゃんて綺麗で美しいタテガミにゃ・・・)
しかし・・・・
とはいえ、これはシカ! シカなのだ。
美しさに惹かれてるとはいえ同族どころか
亜人種ですらない、ただの動物だ。
皆さんだって
猫とか鹿に、魅力的なアレやコレをいくら付けたって
そこに付けられてもなぁぁ・・・キモっ!
・・・ってなるでしょう???
・・・・へ?
あ、あぁー・・・
地球、いや、特に日本といった特殊地域あたりには
そういったマイノリティー様が稀にいらっしゃると聞きましたが・・・
さすがに・・・
さすがにルニャには、そこまでの趣味はなかった。
だが・・・ もう1つ
もう1つ、ルニャにとって惹かれるパーツが
この謎生物にあった。
しかも、美タテガミのすぐとなりに。
そう、顔面だ。
謎生物の顔も、ルニャのタイプだったのだ。
多くの生き物で、顔というパーツは重要だ。
それに、知性が高くなるほど
目や口の形や動きに、個体差が出やすいらしく
ネコ族などの亜人種クラスになると
顔は、要チェックポイントの筆頭となってくる。
『 ただし、イケメンに限る!! 』
このイニシエの偉大な法は、異世界のネコ族にあっても
未だ幅を利かせているのだ。
しかし、まぁ、この顔に美しさを感じるのは
ネコ族では、ルニャだけなのではないだろうか?
なにしろ、つるッパゲで真っ白、なのだから。
だが、若くして生え際が後退しまくっている
ルニャにとっては、意外と、免疫? 親近感?
そんなものがあった。
いや、と言うよりむしろ、最近のルニャは
ツルツルスベスベの肌を気に入ってすらいた。
なので、なんなら、ネコ族の顔より
ツルツルな顔の方が好き。まで仕上がっていたのだ。
いや、正確には、この時
この謎生物に見惚れてしまったことで
その事に、気付かされた・・・と言うべきか。
トッ・・・ トッ・・・ トッ・・・・
そんな状態のルニャは
仕留めたシカの事も忘れて
謎生物に近付いた。
そして、見れば見るほど
ジワジワ、ジワジワと
綺麗・・・
いや、どちらか言うと
「 か わ い い 」
と感じる気持ちが強くなっていた。
しっぽが、ピーンっと立っちゃうほどに。
・・・だがシカだッ! 特に首から下が!!
(にゃんにゃのだッッ?!
どーーーしろと言うにゃッ?!)
ルニャ混乱。
それに、この謎生物
ずっと目が閉じたままで
人形のように座ったまま
ピクリとも動かない。
「ミャーは、死んでるにゃ?
それとも・・・寝てるだけにゃ?」
ルニャは人生・・・いや、
ネコ生で初めてシカに対して会話を試みた。
まぁ、予想通り返事はなく、生死も不明。
そもそも、シカを襲う前
大樹の根の死角だったとはいえ
ルニャはこの謎生物の近くを
素通りしてシカを襲っている。
それは、この謎生物から
まったく気配を感じなかったからだ。
これが生きたシカだったら
木の陰だろうと、寝ていようと
何らかの気配を感じただろう。
それくらいの気配察知能力を
当たり前にもっているのが、ネコ族だ。
それもあって
これが生きているなどと、思っていなかった。
(思ったより、子供だにゃ?
でも、ガリガリだし、不味そうにゃ。
それにしても、奇妙にゃ。
首から下はやっぱりシカにゃのに
首から上は・・・・ん? あれ?
シカじゃ・・・にゃい?)
流石にちょっとおかしいと感じるルニャ。
しかし・・・
じぃぃぃぃ・・・
(てかコイツ、にゃんでこんにゃ、可愛いのだ?
フーより・・・
ん? ひょっとして・・・
ルーより可愛いんじゃにゃいか???)
だが、おかしいよりも
興味が勝ってしまうのもルニャ。
ちなみに「フー」とは
先程も話に出てきた「フーシェ」という美ネコの事で
毛並みが黒く、村で絶大な人気を誇る
ルニャの幼馴染でもあり、親友のメスネコの事である。
しかし・・・
そんな美しさと奇妙さを堪能する時間は
長くは続かなかった。
じぃぃぃぃぃぃ・・・・
ブゥンッッ!!
ビクッ?!!! ズサッ!!
それは、唐突で、一瞬の出来事だった。
ルーが謎生物を凝視していると
いきなり、謎生物の顔も「シカそのもの」になったのだ。
・・・?
あ、いや、ほんとに。
説明をするなら
さらに強烈に頭をバグらされた。
ということになるので、このチビッコの容姿には何の変化もない。
だが、ルニャにとっては
言葉通りで全身がただの仔シカにしかみえなくなったのだ。
その驚きたるや・・・
反射的にバックステップをし
警戒時に見せる低ーーーい態勢をとっていた程だ。
だが、ルニャもまだ
完全に術中にハマってはいなかった。
これはシカなんかじゃない。
シカとは到底思えない
ひょろひょろで小さな体で
シカとしてありえないおかしなポーズで座っているこれは
断じて、シカなんかじゃない。
なのに、シカに思えてしまう・・・
もう、訳わからん! だった。
ゴク・・・
「キサマ・・・にゃに者にゃ!!!!」
返事はない。
だが、ただのシカバネでも
ただのシカでもない。
相変わらず生死不明で
気配のけの字も感じられない。
なのに・・・
(顔が・・・変わった・・・????)
ブルルルル・・・
この怪奇現象を見てしまっては
脳筋イケイケタイプのルニャも
さすがにちょっとビビって
しっぽも耳もやや後ろへ倒れる・・・
得体の知れない物への恐怖というやつだ。
が、ビビったことを自覚したネコ族のルニャは
それをプライドが否定した。
「ヒ、ヒヨってにゃいしッ!!!」
誰に向かってそのドモリを披露したのかは謎だが
その言葉のお陰か、なんとかまだ強がれていた。
「ミャ・・・ミャーはにゃんだ・・・
さっきのニャンカワの顔はどこいったにゃ!」
ヒヨったルニャは口数が多かった。
ついでに正直だ。
「ルー、知ってるぞ!
その顔は偽物にゃ!
さっきまで、ニャンカワだったのだ!
ルーはちゃんと覚えてるにゃ!!!
にゃ・・・ にゃんで隠したにゃ!!」
皆さんにちゃんと伝わるように説明を加えると
地球のおっさんがおっぱい丸出しだった女の子が
急におっぱい隠したのでもっと見せろ!
といっているのと全く同じである。
ここにきても、煩悩が凄い。
しーーーーーーーーーーーーん
だが、返事はない。
「ハッ!!
キサマ、まさか・・・
その仔ジカの中身を全部食いつくして
その中に・・・住み着いて・・・」
ゾゾゾゾゾォォォ・・・・・ガクガクブルブル
ルーは器用に自らの想像で
ダメージを受けた。
そして、追い打ちをかけるように
ルーの目は、またもや奇怪なものを認識してしまう。
「はッ?!
その手はにゃんにゃ?!
シカの手には全然見え・・・」
ブゥンッ!!!
ルニャがそう言った瞬間
手首から先もシカの手・・・蹄になった。
いや、そう見えるように化かされた。
ビクゥッ!!! ズサッ!!! あげいん。
さっきまでは、見た事もない
つるっパゲでガリガリな
骨ばった5本指の手だった。
ルーは知らないだろうが
そう・・・人の手だった。
「にゃ・・・・
にゃんにゃのだ?! ミャーは!!?」
気配もないし、動きもしないが・・・
こんなモノを見せられては
生きているんじゃないかと、感じてしまう。
いや、死んでいたとしても
未知の方法で襲ってくる化け物なんじゃ・・・
と、勘ぐってしまった。
ルーは、更に警戒を強めた。
その姿勢はめーっちゃ低く
そのヒヨりっぷりが盛大に透けて見える。
ネコ族はそれほど頭を使わない種族だし
あまり執着を持たない。
「さっき」綺麗だとか、かわいいだとかに夢中だったとしても
「今」危険を感じているのなら
優先されるのは、十中八九「今」だ。
そしてそれは、脳筋は脳筋らしい行動に表われた。
恐怖が時として、「暴力」に化けるのは地球もココも同じだった。
そして、ネコ族が1度決心したら、迷いなどない。
ググッ・・・・
ルニャは後脚に力を溜め
それを敵へと一気に解き放った!
ザッッ!!!!
戦闘を決意したネコ族に手加減などある訳もなく
瞬速で飛びかかったかと思うと
次の瞬間には謎生物の側頭部へと
得意の回し蹴りをぶちかましていたッ!!!
グワッッシィィーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
その瞬間・・・
グワヮヮヮーン・・・
激しい眩暈を感じたかと思うと
意識がブッ飛んだ・・・
(???????????????????
???にゃ、にゃにが起こったにゃ???
???????????????????)
数瞬遅れて意識が戻ってきて
慌てて謎生物に視線を向けると
シカの首は、横へカクンと曲がっており
おそらく首がへし折れたような形になっていた。
かろうじて、まだ座った状態とも言えたが
上半身も顔と同じ方向へ傾いており
死体のようにしか見えなかった。
(し、仕留めた????)
そう感じ、若干安堵した・・・が
しかし、それよりも、だ・・・
受けたダメージ
あれが何だったのかが、分からない。
(ルーがコイツの頭を蹴った瞬間
誰かに、頭をぶっ叩かれたにゃ・・・)
周りを見渡すが、何の気配も感じないし
何かが動いたような形跡すら見当たらない。
(コイツにカウンターをもらった?????)
いや、そんな動きがあったとは到底思えない。
手で自分の顔を触ってみるが
血が出ている様子はないし
ケガを負った様子もないっぽい。
????? おかしい。
受けた衝撃はこんなもんじゃなかった。
頭蓋骨を砕かれたんじゃないか?
とさえ感じた強烈な衝撃だった・・・はず。
それこそ、このシカ頭みたいに
首がへし折れていてもおかしくないような・・・
・・・と、混乱まっただなかのルニャの脳裏に
追い打ちをかけるように、今度は
ノイズが走った
―― d・・メ・・・xxxxmxx
xxxxxxm・・マ・・・
にk・・・食・・・・xxxxxxxxx
ビッックゥゥゥゥッッ!!!!!! ズザザザッッッ!!!
またもやこれも唐突だった。
いきなりおかしな声が頭に響いたのだ・・・
思わず大きくバックステップをしたのは
その声が、謎生物から聞こえた・・・と感じたからだった。
(にゃ・・・にゃんだ・・・ 今の・・・)
ブルブルブルブル・・・・
未知に継ぐ未知に
ルニャは、震えてだしていた。
それは音声という
耳で聞こえる声ではなかった・・・
さらには、言葉ですらも・・・
ただ、何かのイメージのような・・・感覚。
そう、感覚だけが・・・
直接、脳内に、入り込んできたような・・・
それを無理やりネコ族の言葉に言語化(?)したとしたら
そんな風に感じた。というような現象だった。
しばらく、震えながら身構えていたルニャは・・・
「もうイヤにゃ・・・・」
少しかすれたような小さな声でそう言うと
最大級の警戒を維持したまま
後ずさり、少しずつ、ソレから距離を稼いだ・・・
ネコ族のプライドとやらも
とっくにしっぽを丸めて逃げ出したらしい。
仕留めた本物のシカさえ通り過ぎ
とにかく、謎生物から離れようとした・・・
グラ・・・ バタ。
だが、本物のシカを通り過ぎたあたりで
謎生物は、上半身も完全に地面へと倒れ込み
それによって、首から折れたシカの顔も
もちろん白くて可愛かったあの顔も
地面へと伏され、見えなくなった。
少し安心したのか
ルニャはここで、止まっていた呼吸に気付き・・・
スゥーー ハァァァァァ・・・・・
と、深呼吸をした。
ルーはその場にヘニャヘニャと座り込んだが
もう数回深呼吸した後、気持ちを切り替え
仕留めた本物のシカを引きずって
自分の村へと帰っていった。
―― ジジッ・・・XXXXXXx・・・xxxxxx
XXxXxX・・・ザザァー・・・XXXXXXXxxx
==================================
村へ辿り着いたルニャは、いつものように
前述の、一番の仲良しで、ちょっと年上の幼馴染でもある
美黒ネコの『 フーシェ 』を見つけると
自慢げにシカを放り出した。
「ふっふっふーーーー♪」
この頃にはもう
さっきの恐怖体験の事など忘れて
ゴハンのことで頭はいっぱいだ。
やや信じられないかもしれないが
ネコ族というのは、誰でもこんなもんだ。
「さっすがルー!
いいシカじゃーーーーん♪
この季節のシカは油ものってるし
今日は最高のゴハンねっ♪」
「秋シカはジジィに食わすにゃ。って言うにゃ!
これは、2人占めするのだ!」
「あははw
使い方間違ってるけど賛成ーっ♪
とられる前に運んじゃお!」
(※ ルニャとフーシェの美ケモ姿は
次週の巻頭カラーで!)
フーシェとルニャは同じ家で暮らしている。
ネコ族の住処は、家とは名ばかりで
木の枝とか大きな植物の葉とかを雑に組み上げた
かろうじて雨が防げる程度のテントみたいなもので
人間の家とはまったくの別物だ。
だが、賢く器用なフーシェと
脳筋ハイパワーのルニャの家は
他とは違い、かなりちゃんとしていた。
違う点は、近くに生えている地球で言う
竹っぽい植物を使っているところで
ルニャが竹を切ってきて割り
フーシェが組み上げを担当するのだ。
竹の弾力を生かしてぐにーっと曲げたり
吊ったり貼ったり削ったり。
フーシェがやると、もはや芸術の領域になる。
綺麗に竹を切ったり割ったりするルニャも凄いが
やはりフーシェの組み上げ力がヤバい。
雨が入ってこないように
ちゃんと段々に組み上げられているし
出入口には、ちょっとしたドアまである。
最近ではさらに改築が進化し
床や開閉式の窓まである。
ちなみに、村にはもう2軒
2人が作った竹製の建物があるが
他はみなボロボロテントで
最近やっと、フーシェを真似て竹の支柱を数本
使った家が出てきた、といったところだ。
話が逸れたが
そんな自慢の豪邸へ
2人は今夜のごちそうを運び込むと
ドアを閉め、代わりに窓と天窓を開けた。
ネコ族は夜目も利くが
やはり明るい方がいい。
「早くするにゃ!」
「まかせてー♪」
チャポチャポ・・・ シュッ・・・シュッ・・・
調理担当のフーシェは
まず、慣れた手つきで
水桶で爪を洗い、マイ砥石で爪を研ぐ。
普段狩りをしないフーシェの爪は
ルニャと違って、薄く、鋭く、研がれている。
それこそナイフの様なその爪で
シカを捌く。
他のネコ族なら
皮すら剥がずに腹とかの
柔らかいところを喰い破り
内臓を食べた後
苦労しながら全身をほじくりかえしながら食べる。
手を、人やサルのように使う者などほとんどいない。
が、フーシェは違う。 そりゃーもう、全然違う。
どこに爪を入れれば簡単に皮が剥がれるか
筋肉の塊がどこでどう分かれているのか
そこまで、ちゃんと理解してる上に
それをする技術と器用さがあるのだ。
彼女にかかれば、ものの数分で
地球の精肉店のように
綺麗なブロック別にシカはバラされことになる。
違っている点といえば
血抜きをしていない点だろうか?
そんなこんなでバラされた肉たちは
さらに、部位によって、厚切りとか
薄切りスライスとか、繊維逆らって切られたり
逆にそって裂かれ、肉の麺のようなものになったり
時には叩かれたり、伸ばされたりして、その姿を変える。
こうして七色以上に姿を変えた肉だが
調理というのは、もうこれで終了だ。
あるとすれば
大きめの綺麗な葉を敷き詰めて
その上に盛り付けるくらいだ。
ここには塩もコショウもなければ
火を使う風習もない。
調味料があるとしたら
獲物自身の血だ。
程よい塩気がある血は
塩文化のないネコ族では
意外と旨い調味料的な存在だったりする。
部位によって綺麗な血、汚れた血があるが
フーシェは美味しい血がある場所も把握している。
とはいえ、血は数時間たつと
途端に味も臭いも酷いものになので
新鮮な獲物の時に限られる。
「おまたせー!」
「ふぉおぉぉぉ~~~!
うんまそぉーにゃぁーーー!!!
ゴロゴロ~♪ グルルルル~~~♪
むっふーーーーーん!」
「ルー、喉にゃらし過ぎw
鼻息あっらww」
「限界にゃーーーッ!」
ガブッ!!!!!!
「そんじゃ、ニャーも・・・」
ガブリッ!!!!!
※ ニャー:ネコ族の若いメスが良く使う一人称
「わたし」の意。
盛りに盛られた、ミートマウンテンに
2人は仲良く顔を突っ込み
「んまッ!」
「ニャンうまッ!」
フゴフゴッ!! フガフガッ!!!
と、幸せの音を喉で奏でながら
お腹と幸せが満たされるまで
極上のお肉を堪能した。
いや、・・・・するはずだった。
ガツガツ・・・ モグモグ・・・
「ル・・・ルー????」
「にゃ?」
「まだ、食べる気??????」
「ルーはまだ、ペコペコにゃ。
ん?
でも、おにゃかはもうパンパン・・・にゃ????」
「うん、ルーのポンポン、ぽんぽこぽん。
もはやデブ。」
「ほんとにゃ・・・ はれ? にゃんじゃこりゃ?
フーの料理がおいし過ぎるから
ルーは食べるのを諦めきれにゃい・・・にゃ???」
「にゃ訳あるか・・・。」
何やらおかしい?
そう感じたルーの頭に、真っ先に過ったのは
昼間出会った、謎生物だった。
思い出しただけで、ちょっと、ブルった。
「実は今日にゃ・・・・」
ルニャはフーシェに今日起こった事を
全部、丁寧に説明した。
「ニャニソレヤダ怖い。こっち来にゃいで。」
「ひどいにゃ!
でも、アイツ、ほんと、気味が悪かったのだ。
あ、でも、顔とタテガミはまじでニャンヤバだったにゃ。」
ス・・・・ スス・・・・
「にゃんでそんにゃ顔で
ルーから距離をとるにゃ?!??」
「え、だって、それ、呪いじゃん?
ニャーにまでうつったら、ヤだし。」
「にゃに言ってるにゃ?
そんにゃ訳にゃいのだ。」
「じゃぁ、にゃんでルーは
お腹膨れない病にゃのよ?
他に、今日、にゃにかあった??」
「・・・・さぁ?」
「あ、じゃあさ・・・
ルーはそのシカ頭のどこ蹴ったの?」
「右足で・・・こう! 頭にゃ。」
「で、どこにゃぐられたって?」
「ここにゃ。」
「ほらーーーーー
やっぱり、呪いじゃん?
だから、ちょっと離れてて?
シッシッ!」
「・・・・へ???」
フーシェが言うにはこうだ。
シカ頭の左側頭部を蹴ったら
ルーの左側頭部にも、それと同じ衝撃があった。
しかも、同時に。
なら、今、そのシカ頭がお腹減ってるから
ルーもお腹減ってるんじゃね?
・・・と。
「・・・・・は?」
「おい、やめろ。
ルーがニャーを、そんにゃ目で見るとか
あっちゃダメでしょ!
ルーは、ニャーより100倍おバカにゃんだから。」
「ぃや、そうだけど。
そーーだけど・・・・ は???」
「く・つ・じょ・くッ!
ニャーだっておかしにゃ事言ってる事くらい
分かってるわよーー!
でも、今日のルーは妙に首をクネクネさせたり
にゃんか寒そうだったり・・・おかしくにゃい?
こんなに暑い日に
にゃんでガチガチに丸まってるにゃ?」
「・・・・・・・へ?」
(そういえば、首ににゃんか違和感があって落ち着かにゃい?
でも、今日って、普通に寒いし・・・??
あれ? 暑い? でも、寒い?
あれ?あれ?あれ????)
「ルー?
ミャーは鼻の頭に汗かいてるし
きっと本当は、暑いんだと思うわよ?」
「・・・・・・。
ニャニソレヤダ! 怖いじゃにゃいか!!」
ザッ!! ガバーーーーッ!!!
「に”ゃーーー! 抱きつくにゃー!
天才を崇める目に戻ったのはいいけど
ニャーまで呪われたらどうしてくれるにゃーーーーー!
ただでさえ最近、ルーの顔面ハゲが
うつったかもしれにゃいのにーーー!!」
「無理むりムリっ!!
ルー1人でこんにゃの、絶対ムリにゃーーーー!!!」
ぎゃーぎゃー! わーわー!
やんややんや・・・ きゃっきゃうふふ♪
ひとしきりじゃれ合って騒げば
いつも通り楽しい気分になってきちゃうのがネコ族だ。
ちょっと寒かったり、お腹減った感じがしてても
もっと楽しいことしてれば大丈夫・・・
二人でいれば怖いものなんてない。
いつだって、そんな感じになれる。
それがネコ族、いや、この2人の絆・・・
というヤツなのだろう。
その夜、2人は一緒に眠った。
いつもよりちょっと多く敷き詰めた
干したての干し草の上で
仲良く寄り添って・・・
==================================
一方、同時刻、あの、謎生物の所では・・・
何やら2つの存在が話し合っていた。
(シカママ、死んでしまったのぉ。)
(せやな。)
(どこかに、ぽっかり穴でもあいたような感覚じゃ。)
(ステータス異常は、なさそやで?)
(シカママが、過去一優しかったからかのう?)
(かもしれへんなぁ。)
(妾、あんな気持ち、初の体験じゃった。)
(うん。 見たことない波形やった。
でも今は、生命維持・・・
水分ノ確保ヲ優先 しないと。)
(ふぅ・・ 面倒じゃのぉ。
次のママも、シカママみたいだと良いのぉ。)
(最強ちゃん・・・戻って来るかな?)
(ばっかもーん! あんな狂暴なヤツにママがつとまるかぁぁ!)
(そお?
『 ピッ・・・ 解析進行ニヨリ
言語スキル:フェリシアン Lv1 ヲ獲得シマシタ。』)
(なに? げんごすきる??)
そんな会話をする2つの存在が
謎生物の中に居た。
細かい指摘をするなら
これは音声による会話ではなく
テレパシーという方法でのやりとりで
こういった意味合いの『エナジー』を瞬時に送受信し合っている。
といった表現の方が近い。
ともあれ、その夜
謎生物の中のこの2つの存在たちは
水を求め、すぐ隣に流れる川へと動き出した。
==================================
翌日の早朝。
「ルー?
ほんとにこっち??
鳥の気配くらいしか感じにゃくにゃい?」
「うん、気配は感じにゃい。
けど、コッチ。」
ルニャとフーシェは
謎生物を探して、大樹へと向かっていた。
理由は、食べてもお腹が満たされない上に
寒くて仕方がなかったから。
フーが一緒に来たのは
ルーがヒヨっているからだ。
(シンカ?)
(うむ・・・ 噂をすれば、じゃな。)
(『 スキル:ご都合的感覚共有
上書キヲ実行シマスカ?』 )
(とりあえず、そうするかの。
蹴られるだけなのは、イラっとくるだけじゃしな。)
(『 更新・・・完了。 』
群れで来たみたいやし
戦闘はイヤやなぁ。)
(その時はアレじゃ! 最終奥義じゃ!)
(死んだふり・・・やな。)
「わぁぁー 大きにゃ木ぃー!
これが、ルーの言って―― 」
「――居た。
移動してる・・・」
謎生物は半身が川に浸かった状態で
そこに転がっていた。
ほぼうつ伏せ状態で顔は前髪でほぼ隠れており
なによりその姿勢は、死体か
糸の切れたマリオネットのようで気味が悪い。
「にゃ、にゃにあれ???
確かに仔ジカ?・・・みたいだけど
頭・・・キラッキラじゃん・・・って
あ、あれ???
シカ? シカって・・・?
はぁ???????????」
「やっぱりシカ顔は偽物だったにゃ。」
「キモ・・・にゃにあれ???
てか、あれ・・・ 生きてるの?」
(シンカ・・・???)
(う、うむ。
賢そうではあったが・・・驚きじゃ。
それに、いつも程度の“ 思い込ませ ”では
やはり効果が薄いようじゃぞ?)
(見えちゃってるっぽいなぁ?
それに、それをちゃんと“ 変 ”って分かってるんや・・・
かしこぉぉー・・・)
「げっ! 手、やば・・・
ニャーよりぜんっっぜん、毛がにゃいし
それに、ほとんど骨だけで
ニャーよりヒョロヒョロじゃん・・・
ぷw きんも!w」
「わ・・・
昨日は良く見えにゃかったけど
やっぱりおかしにゃ手してるのだ・・・
てか、にゃんでそんにゃに嬉そうにゃ???
それより、タテガミ!
手より、タテガミをよく見るにゃ!」
「・・・・・・。
にゃんやば。
奇抜だけど・・・
た、確かにタテガミだけは、ニャンクールじゃにゃい。」
「にゃっ! そうだろ?!」
「でも、長が過ぎて、顔すら見えにゃいってどうにゃん?
てか、それよりやっぱ、あの手はにゃいわー!
あんにゃ今にも死にそうにゃ、ほーっそい指・・・
・・・・?!
げっ、首までつるっぱげじゃにゃいかっ!!」
お気付きかもしれないが
ハゲをやたら指摘するこのフーシェ
実は彼女もハゲを患っている。
ルーの様にまぁまぁキテいるが
毛も肌も黒いので意外と目立たない。
あまりバレていない。
だが、彼女の場合、実は手もけっこーキテいる。
目立たないようにしてはいるが
肉球以外のところも最近ではツルツルだったりする。
で、そんなフーが、この謎生物の手を見て思う事といったら・・・
(わ! コイツ、ニャーよりハゲてんじゃん!w
ぷぷぷのぷぅーっ♪)
であり、ここぞとばかりに馬鹿にして
マウントをとりたがっている・・・
優越感マジおいしいです!って状態だった。
(のぉ?
なんじゃか盛大にバカにされておらぬか?)
(みたいやな?
複雑過ぎてイマイチ理解できへんけど。)
(毛や羽が少ないのは
陸ではブサイクという
非モテ種族になるのではないか?)
(かなぁ???
『 ピッ・・・Lv上昇
言語スキル:フェリシアン Lv2 』
なぁ? シンカ?
この子たち、どうも、言語? 使ってるようやで?)
(ふむ。 やはりコヤツら
今まで出会った動物とは
まったの別物のようじゃ。)
(せやな。
感情が豊か過ぎ・・・
てゆーか、頭? めっちゃやかましいねー・・・)
(と、言う事はじゃ!
おそらくコヤツらが!
探し求めたあn( 人 間 ! ! やなっ!!)
(おぉぉい! 豪快にかぶせてくれたのぉ?!
妾だって、言いたかったのじゃぞ? それ。)
(あ、ごめ・・・
でも、ならなんで、こんな見た目でドンびいてるん?
同族なら、多少ブサイクでも
もうちょっと親近感感じへん?
うちらのコレ、人間のボディちゃうん?)
(知らぬ。
首から下がシカ偽装じゃからではないか?
いっそ、キャストオフしてみるか?)
(あぁ、なるほど。
あ、でも、ツルツルお肌はキモいらしいで? 多分。)
(どうしろと言うのじゃ・・・
あぁじゃが、コヤツら、ネコっぽくないか?)
(ネコがしゃべる訳がない。
クルクル先生に書いてあるで?)
(知らぬわ。
そもそも、クルクル先生に書いてある事など
絵空事ばかりで、実際のこの世界とは
ぜーんぜん違ってばかりではないか!
それに、コヤツら“ しゃべる ”とはちょっと違わぬか?)
(たしかに。
会話にしては・・・ めちゃくちゃやんな?
いろんな事感じてるのに・・・
この子ら、ちゃんと意思疎通できてんのやろか?)
※ ↑ちなみに謎生物のこのやり取りは
テレパシーのような物なので
この間、2秒程度の出来事だったりする。
「昨日、顔見たけど
顔も・・・ツルツル、スベスベだったにゃ。
でも、それでも
綺麗なものは綺麗って、ルーは感じるにゃ。」
「・・・・・・・うん。
ニャーも、ルーの顔は
ハゲてもハゲても、可愛いって思ってるよ。」
「ぉ、ぉん・・・ にゃんか喜びにくいのだ。」
「ぁ・・・・
そういえば、前、キバが
ニンゲンはタテガミ以外、全身ハゲ・・・・・・ッ!!」
ピクッ・・・
その言葉をつぶやいてフーシェはしばらく黙った。
「・・・・・。」
そして、もう一度謎生物を凝視し・・・
「そっか。
分かっちゃった・・・」
「・・・・ん? どうしたにゃ? フー?」
ギロッ!!
「キ サ マ が ・ ・ ・
卑怯にゃ手を使ってルーを襲いッ!!!
ニャーたちの故郷を奪ったッ!!!!!
ニ ン ゲ ン かぁあぁぁあぁぁぁッッ!!!!!」
ブチッ・・・ ブチブチッ・・・
いきなりだった。
いきなりフーシェがブチギレたかと思うと
全身の毛を逆立て、鬼の形相で
“ 人間 ”に襲い掛かった
ダダッーーーーーッ!!!
その鋭く研がれた包丁のような爪には
微塵の迷いもなく、急所である首筋へ・・・
ジャキィィィーーーーーーン!!!
「ぅい”ぃいぃッッでぇえぇーーーーーーーーーーッッ!!!!」
( ぎぃやあ”ぁあぁぁあぁぁぁーーーーーー!!!! )x2
ピクピク・・・ビクンッ!!
「はッ!!!!
し、しまった!!
大丈夫???? ルーッ?!
ニャーったら、うっかり・・・」
「じッ・・・じぬぅぅーーー・・・
ルーは、 ルーはもう・・・」
「ご、ごめん!! ほんとごめんって!
でも、臨死体験中ごめんけど
斬れてにゃい・・・よ??
見た感じ・・・
うん、だから、大丈夫!
うんうん! へーきへーき! 多分!」
「そ・・・そんにゃ訳・・・」
実際、ルニャの首は血も出てなければ外傷も見当たらない。
ルニャが手で押さえていて、しっかりは見えないが
首が半分ぶっとんだような風には全く見えない。
「あれ・・・う、うん・・・?
ぃ痛ぅッ! でもまだ、すーーんごく痛いのだ!
ジロリ!」
「ご、ごめん。」
チラ・・・
一方、それに比べ、ニンゲン?の首の方は
血だら・・・け?
「へ・・・? あれ? うそん?」
確かに、血は流れた・・・っぽい。
が、これ以上血が噴き出てくるようには見えない。
首の一番大事な血管
いわゆる頸動脈というやつをその周辺ごとごっそり
念入りに4本の爪で広く深く切り裂いた。
実際、血が、首元にも、地面の草にも、フーの爪にもついている。
なのに、あるはずの傷が、ない。
斬った瞬間、血が出るのを見た。
痙攣したように身体をビクつかせてもいた。
だが今は、最初見た時の様に
ただそこに静かに転がっているだけで
人形の様にまるで動かない。
「え? どっち? 死んだ? 死んでた?
それとも・・・」
「死んだ感じじゃーにゃいにゃ・・・
ルーには分かr・・・・・?
ん? ちょ、ちょっと待つにゃ? フー?!
もし、ルーに呪いがかかったまま死んじゃったら
ルーはどうにゃるのだ???
死んだコイツの感覚とか、寒いのとか・・・
それどころか、最悪、ルーまで死んでたら・・・」
(ブルブルブル・・・)
「オマエ! どーーーーしてくれるのだッ?!?!」
「え・・・ にゃにそれヤダ最っ底ーーー・・・」
「ん”にゃっ?!
最低はフーの方にゃ!
・・・まぁ
死んでにゃいみたいだけどにゃ・・・コイツ。」
「ご、ごめん・・・」
「まったく、フーは癇癪を起すと
手に負えにゃくにゃるから嫌にゃのだ。
ほんとに酷い事ににゃったら
ルーがフーをずーーっと呪うからにゃ??」
「げっ! にゃにそれ酷くにゃい???
てか、それより、今は、このニンゲンよ!
大体、殺して、呪いも消えてたら
完璧だったって事じゃん!
ついでに、今日のゴハンにもにゃるし。」
「そうかもだけど・・・
ルーはもう別に、コイツを殺したいにゃんて
思ってにゃいし・・・
ん? ・・・ニンゲン?
にゃんにゃのだ? ソレ?」
「・・・・。
知らにゃい。言ってにゃい。」
クネクネ・・・ソワソワ・・・ ( ← フーのしっぽ )
「ふーん。
じゃ、故郷を奪ったってのは、にゃんにゃ?」
「・・・・チッ」
「チッ! ってにゃんにゃッ!!
ルーにだって、最低限の記憶力くらいあるにゃッ!!!」
「くっ・・・
それは・・・えっと・・・
ちょーっとした小芝居よッ!
ルーをいぢめた悪いヤツを成敗する
今日のハイライトにゃんだから
それにゃりににゃんか盛り上がった方がいいかにゃーって・・・・」
・・・ ペタン。
「・・・そっか。」
その後、しばらく2人は何も話さなかった。
ネコ族のしっぽがいきなりペタンとなる時は
大体、悲しかったり、元気がなくなった時だ。
ルーは、そんな話を続けるようなネコじゃない。
ルニャにとって
フーシェの気持ちより優先するものなど
この世にたいしてない。
とはいえ、この謎生物が
ニンゲンという生き物だとか
もしかしたら敵だとか仇だとか・・・
それは横に置いておいたとしても
呪いについては、なんとかしたい。
2人は少し落ち着いてから話し合いを始め
結局、この謎生物をとりあえず川から出して温めてみよう
という事で合意した。
ザバー・・・・・
「わ・・・
コイツ、すんごく水ハケいい・・・
ニャン羨ましいんだけど。」
「ほんとにゃ。
てか、キンキンにゃ!
こんにゃの、寒いに決まってるのだ。
オマエ・・・動けるにゃら
にゃんで自分から川に入っちゃったのだ?
かわいいのにバカにゃのか?
・・・・しゃべる訳にゃいか。」
「ニ・・・・・・・
コイツ、しゃべれるよ。 多分。」
「・・・は?????
そんな動物、いる訳にゃいにゃ。」
「おい、やめろ! その目!
コイツら、ニャーたちみたいに
しゃべったり、道具を使ったり、家を作ったりするし
動物も、植物も、にゃんでも食べるって
キバが言ってた。
それに、この顔・・・ニャーたちみたいに
あったま良さそうじゃん?
にゃんか、納得しちゃった。」
※ キバ : 村のリーダー的な存在で
地味カラーの青年ネコ。
「え・・・ 凄ぉ。
確かに、顔は可愛いし、動物っぽくにゃいけど・・・
こんなヒョロっとしてるのに
こいつ、強いにゃ??
それとも、こいつが死にかけで
ヒョロヒョロにゃだけとかにゃ??
それでこいつが、その
『 ニンゲン 』ってやつにゃのだ???」
「多分・・・ね。 キバが言ってた通りの顔してる。」
「「 ・・・・・・・・・ あっ 」」
「ごめ・・・うっかり。
嫌だったにゃ??」
「ううん・・・ もういい。
これは多分ニンゲンっていう種族で
もしかしたら、ニャーたちの生まれ育ったとこを
めちゃくちゃにしたヤツらかもしれにゃいんだって。」
「初耳にゃのだ・・・
にゃんでフーだけそんにゃ事知ってるにゃ???」
「ニャーはまだ脚がちょっと壊れてるから
いつも村にいるじゃん?
ゲテモノのルーと違って、ニャーはモッテモテだから
いろんにゃネコと話をしてるの。
で、キバからも、いろんにゃ事聞いたの。」
「ぉ、ぉん・・・
一言多くて、イチイチ聞きづらいにゃ。」
フーシェの話をまとめると
2人は元々別の村の出身で
2人が暮らしていたところは
人間に襲われめちゃくちゃになったらしく
その時、何人もの子ネコたちが
連れ去られたりもしたらしい。
さらに、フーシェの後脚の腱は
両方人間によって切られていて
2人が今の村に辿り着いた時には
ほとんど歩けなかったらしい。
フーシェの話は、そんな残酷で
怒りや恐怖ばかりを感じる話だった。
幼かった2人はある1人のメスネコに
連れられて村に辿り着いたらしいのだが
そのメスネコはこんな話は
2人には伝えないでくれと頼んだそうだ。
だが、ネコ族というのは
知ってのとおり、嘘も隠し事も苦手な種族で
何度も何度も聞いてくるフーシェに
キバは、どうしても少しづつポロポロと
話を漏らしてしまった・・・という事だった。
フーシェはネコ族にしては
頭も良く、口も堅い方と言えなくもないが
故郷や、両脚の恨みがある
人間の特徴とピッタリ一致する
この生物を目の前にしてしまっては・・・
癇癪もちのフーシェが
我を忘れない訳がなかった。
(重んーーもッ!)
(無理や。 チェンジで。)