11:ザゴラの街
第三人称視点~
「すご~い! まるでアラビアンナイトだ!」
葵がサゴラの街を見て、感じた印象がそれだった。
城門から見える街の建築物は、その城門も含め、全て砂のような色の石で造られてる。
その周辺には南国にあるような、ヤシの木がいくつも植えられていた。
その見た目はまさに、アラビアナイトの街だ。
「ニャウードか? その普人族の娘はどこで拾った?」
門番は豹の頭をもつ、いかつい男だった。
その身長は180cm程だろうか?
体も葵より一回りは大きい。
何やらニャウードの知り合いのようで、気安く話しかけてきている。
「この娘さんはすごい魔術師ニャんだ! にゃ~もこの旅で命を救われたニャ!」
葵は必死であの地竜アストロンを追い払っただけで、ニャウードを助けた気はなかった。
だが結果的にニャウードの命を救ったことになったのだ。
ニャウードによれば、あの地竜アストロンに追いかけられれば、逃げのびるのは難しいようだ。
その地竜アストロンを追い払ったのだから、助けたも同然だという。
「魔物に襲われたのか? それは大変だったな・・・・」
「もう凄かったニャ! あの地竜アストロンを竜巻やら爆炎の魔法やらで、追い払って見せたニャ!」
「へえ・・・。あの地竜アストロンをこの娘がねえ・・・・」
豹頭の門番はその話が信じられないのか、葵を胡散臭げにじろじろ見た。
「お前が魔術師というのはわかった。この国には普人族を嫌う者もいる。そんなやからに絡まれることもあるだろう。だが間違っても危険な魔法を街中でぶっ放さないでくれよ?」
「は、はい! 気を付けます!」
そう言ったものの葵には、【ばくはつ】はなんとかなるが、【風の精霊】の制御には心配があった。
風の精霊は葵がピンチになると、勝手に現れて暴れるのだ。
葵にはそんなピンチに、遭わないように、願うばかりだった。
ついでに街に入るのには通行税が必要だが、葵の分はニャウードが支払った。
ニャウードによれば、この旅で葵が出した食事に比べれば、通行税程の金額は、大したことがないという。
その話を聞いて葵は、この旅でニャウードにご馳走した、料理の数々を思い出していた。
初日の昼はハーブと塩で味付けしたパスタと、鮭の切り身となった。
パスタが味気ないものになった理由は、【そうぞう】を使った時に、パスタと塩と、鮭の切り身は出せたものの、ミートスパゲティーのタレを出そうとして、失敗したからだ。
だが日本のメーカーのパスタは、塩だけでも十分食べられる味で、その上ハーブと鮭の切り身が合わさると、それなりには美味しい料理となったのだ。
ちなみにニャウードは猫なのに、魚が苦手だという。
葵はすかさず突っ込んだが、獣人というからには、普通の猫とは違う生物なのかもしれない。
葵は野草とか調味料とかを、普通に口にして喜んでいるニャウードを思い起こす。
まあそれでも鮭の切り身は、気に入ったようで、苦手と言いつつも、勢いよく口に運んでいた。
鮭の切り身は万人受けする、偉大な食べ物のようだ。
その翌日にはお米を、1袋2kg出すことに成功し、小躍りしたのを思い出した。
その米は長持ちで、今でもニャウードの荷物と一緒に積んであるのだ。
ニャウードが一番喜んだのは、意外にもアイスクリームとか、紅茶飴などの甘味だった。
この国の人々は、どうやら甘味に飢えているようだ。
そんなことを考えているうちに、ニャウードは門番との挨拶を終えたようで、城門を抜けて街の方に向かった。
ザゴラの街に入ると、そこには行きかう多くの獣人がいた。
その多くが犬や猫の獣人で、稀に他の動物がいる感じだ。
獣人には動物がそのまま立って、歩いているような姿の者から、人の姿に動物の耳や尻尾がはえた者まで様々だ。
暑い日差しを避けるためか、長袖姿の者が多く、頭に布まで巻いている者までいる。
「安いよ! 買った買った!」
「こっちも安いよ!」
しばらく歩くと市場に差し掛かり、売り子の威勢の良い声が聞こえて来た。
市場には野菜や布製品、装飾品など、様々なお店があり、葵の目を引いた。
「ニャウードは何を売っているの?」
「にゃ~は服飾も扱っていますが、主に雑貨を扱っていますニャ」
店舗を持たないニャウードは、露店で商品を販売することが多いようだ。
最近は東の村々を巡り、行商人をしているらしい。
魔物が徘徊する森を抜け、村々を巡るのは危険だが、そうでもしないと儲けが出ないそうだ。
しばらくすると狭い路地に差し掛かり、地面で雑魚寝をする、浮浪者を見かけるようになった。
この辺りの治安は、あまり良くないようだ。
その狭い路地を抜けると、目的の孤児院が見えて来た。
孤児院のすぐそばには教会の建物もあり、どうやら孤児院は教会の管轄であるようだ。
その孤児院がしばらく葵が、お世話になる予定の場所だ。
「ニャウード兄ちゃんだ!」
「兄ちゃんが帰ったよ!」
孤児院の敷地内に入ると、ニャウードに気付いた子供たちが、次々とこちらへ駆けつけて来た。
可愛らしい獣人の子供たちが、駆けてくる様子は、葵にとって至福であった。
しかし貧しいのか、誰もかれもが痩せこけているのが、少し残念に思えた。
「兄ちゃん腹減った!」「なにか恵んで~!」「私もお腹空いた!」
そしてニャウードに食べ物を強請る姿が痛ましく見える。
「こら~お前たち! 挨拶が先ニャろう!」
そんな子供たちを、ニャウードが叱りつける。
「あらあら・・・・。誰かと思ったらニャウードが帰っていたのね・・・?」
そこへ犬の獣人の、初老と思われる女性が出て来て、ニャウードを出迎えた。
おそらくこの女性が孤児院長なのだと、葵は思った。
【★クマさん重大事件です!】↓
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