12:突風から現れた幼女
第三人称視点~
「なるほど。お前ら孤児院からあぶれちまったわけだな?」
そのころクマジロウは、スラムで路上生活をおくる孤児達と、話をしていた。
丁度王宮の訓練場で、リンネとアルフォンスの模擬戦が終了したころ、リンデルはスラムの孤児達に会いに行こうとしていたのだ。
そんな時クマジロウに見つかり、クマジロウも一緒に連れてくるはめになったのだ。
そこにはクマジロウとリンデルの他には、孤児が11人おり、男の子が6人、女の子が5人いた。
男の子は10~12歳くらいの少年が3人で、4~6歳くらいの幼児が3人だ。
女の子は10~12歳くらいの少女が3人で、4~6歳のくらい幼女が2人であった。
そのうち男の子の代表が、大柄の少年アイデンで、女の子の代表は、おっとりとした感じのジルダといった。
周囲はレンガ造りの建物に囲まれ、ちょっとした広場のようになっており、建物のすぐ下には、彼らが建てたと思われる今にでも壊れそうな、木材を積んだだけの、あばら屋が数軒あった。
「なあクマジロウ。お前聖獣なんだろ? か・・・女王に頼んで新たに孤児院を造ってもらうことはできねえのか?」
その話を聞いていたリンデルが、クマジロウに尋ねる。
逆に王子のお前がなぜ頼まなかったんだと、クマジロウは思うが、子供である彼には、思い至らなかったのだと思い返す。
そして母親であるアリスフィアを女王とよんでいることから、孤児達に王子である身分も明かしていないと予想する。
「今の国の財政じゃあ難しいな。資金が魔物の氾濫や、貧窮した地域に多く回されているぶんこちらに回らねえんだ。特に貧窮した地域については、領民の反乱の件もあるからな。今はそちらの比重が大きいな」
クマジロウは実はここへ来る前に、スラムの孤児の話を耳にしており、各所から情報を集め、そう結論を出していたのだ。
「ん~・・・。話は難しくてよくわからねえが、つまり孤児院を建てるのは難しいってことだな?」
リンデルや孤児達は、クマジロウの話から、孤児院の設営は難しいと判断した。
「ん?」
「どうしたんだクマジロウ?」
その時ふいにクマジロウが空を見上げたのだ。
その只ならぬ様子のクマジロウに、リンデルが尋ねる。
「・・・が来る・・・・」
そしてクマジロウはそう呟いたのだ。
「・・・? もしかしてリ・・・・」
ブワァァァ~!!
「「わああ!!」」「「きゃああ!!」」
「な、なんだ!?」
その時だった。
急に突風が吹き荒れ、砂煙が舞ったのだ。
「見て! なにかいるよ!」
孤児の一人が指し示す先を見ると、そこには小さな人影が見えた。
「嘘だろ・・・突風から人が現れやがった・・・」
「もしかして精霊か神様・・・・?」
孤児達はそのあまりにも常識離れした様子に、驚愕しながらその人物を見つめるのであった。
リンネ視点~
「リリちゃん、ルイーズ学園長! 急用を思い出しましたので失礼します!」
私は特別施設の2階にある、リリちゃんの研究室の窓から、身を乗り出して別れの挨拶をした。
「せめて玄関から出たらどうだ?」
その様子にルイーズ学園長が、呆れながらそう口にする。
現在私は久しぶりに魔術学園を尋ね、懐かしい人達との再会を果たしていた。
そしてリリちゃんから路上生活を送る孤児達に、リンデルがかかわっているという話を聞いたのだ。
心配になった私は、すぐにでもその場所に向かいたくなった。
「急ぎますので! では失礼!」
私はそう言うと、2階の窓から飛び降りた。
「大跳躍!!」
そして空中で風魔法の大跳躍を発動すると、空高く舞い上がる。
すると窓からその様子を呆れながら見ていた、リリちゃんとルイーズ学園長が、徐々に遠ざかり小さくなっていく。
「見えざる・・・・翼!!」
そのまま上空に躍り出た私は、最近覚えたての見えざる手を、大きな翼の形に変えた。
その翼に風を捉えて、空を滑るように滑空する。
この見えざる翼による滑空は、目立たず魔力消費も少ないようだ。
ただ下から見られると大騒ぎになりそうなので、光魔法の光学迷彩で姿を消しておくのを忘れない。
「スラム街の方に数人の子供と・・・クマさんとリンデルの気配?」
見えてきたスラム街の広場を、魔力感知で探ると、子供らしき数人の気配と、リンデルとクマさんの気配を感じた。
私はその上空付近に差し掛かると、翼をはためかせながら着陸を開始した。
そして地面が徐々に近づいてくる。
ブワァァァ~!!
「「わああ!!」」「「きゃああ!!」」
「な、なんだ!?」
地面が近くなると突風が巻き起こり、砂埃が舞ってしまったようだ。
これはすまないことをした。彼らを驚かせてしまったようだ。
どうやらこの翼による着陸は、周囲に突風をまき散らすので、気を付けないといけないようだ。
私は無事に地面に着地すると、光学迷彩を解いて姿を現した。
「嘘だろ・・・突風から人が現れやがった・・・」
「もしかして精霊か神様・・?」
孤児と思われる子供達が、その様子を見て騒ぎ立てる。
どうやら目立たないようにしたつもりが、逆に目立つ格好になってしまったようだ。
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