06:衝撃の再会
第三人称視点~
「こらリンデル! 貴方また王宮を抜け出していたわね!」
アリスフィア女王は、無断で王宮を抜け出した息子のリンデルを叱りつける。
先ほどまで執務室で、仕事をしていたアリスフィア女王だったが、王宮の2階の窓の前に息子リンデルの気配を感じ取り、急ぎ駆けつけてきたのだ。
「げ! 母ちゃんに見つかっちまった!」
「お母さま・・・でしょ! 貴方は王族なのよ! 言葉遣いにはもっと気を使いなさい!」
アリスフィア女王は、腰に手を当ててぷんぷんと怒り出す。
「まあそれくらいにしといてやれよアリス・・・」
するとリンデルの後ろから、見覚えのある子熊が姿を現した。
「やっぱりクマちゃんも一緒だったのね・・・」
アリスフィア女王は風魔法の風探知で、すでにこの聖獣の気配も感じ取っていたのである。
そう、その子熊こそが、昔一緒に旅をした、聖獣のクマジロウだったのだ。
「久しぶりに会ってクマちゃんはよせ・・・」
「ごめんなさい。久しぶりに会って、つい幼少時代の呼び方でよんじゃったわ」
アリスフィア女王は、幼少時代にクマジロウをクマちゃんとよんでいたのだ。
そのよびかたが条件反射的に出てしまったようだ。
「じゃあクマジロウ様?」
「その呼び方も他人行儀で嫌な感じだ」
「はあ・・・。学生時代はずっとその呼び方だったでしょ? じゃあクマジロウならいいの? 呼び捨てになるけど?」
「それでいい・・・」
クマジロウは笑顔でそう答えた。
クマジロウはアリスフィア女王に学生時代、クマジロウ様とよばれていたのだが、その呼び方は他人行儀で好きではなかったようだ。
「オレはなんてよぼうか? クマジロウでいいか?」
「お前もそうよんでくれてかまわない」
こうしてクマジロウの呼び方は、この親子の間では、『クマジロウ』に定着した。
「そんなことよりクマジロウ! 貴方がここにいるということは、もしかしてお姉さまもどこかに!?」
アリスフィア女王は、このクマジロウの気配を感じ取ってから、しきりにある少女の気配も探っていたのだ。
それはあの少女が、いつもクマジロウの傍らにいたからだ。
そしてもう一生会えないと言われていたあの少女に、どうしても会いたかったのだ。
「嬢ちゃんなら1週間も前に王都にやって来ていて、ずっと屋台を出しているぜ?」
「まあ! どうしてすぐに王宮に顔を出さないのかしら!?」
「お前にどの面下げて会っていいか、わからないんだと・・・」
「まあ! 呆れた! お姉さまったらいつも肝心な時にヘタレるのよね・・・」
あの少女はいつも肝心な時に、緊張のあまりつまらない冗談を言ったり、周りを困らせて自分を誤魔化したりしていたのだ。
その度にアリスフィア女王は「しっかりしろ!」と睨みつけたことを思い出す。
「明日時間を作ってその屋台へ行くわ。案内は頼めるかしらクマジロウ?」
「いいぜ。じゃあ明日昼過ぎに王宮に迎えにくるぜ」
そう言うとクマジロウは、2階の窓から飛ぶように出ていき、ぴょんぴょんと王宮の屋根を飛びながら、立ち去って行った。
リンネ視点~
「ヤキソバ1つお願いするわ!」
「オイラはあんこの入ったやつで・・・」
翌日再びクマさんが、お客さんを連れてきた。
現在昼過ぎで、ちょうど客足も途絶えたころだ。
クマさんが連れてきたのは、フードをかぶった大人の女の人で、背は180センチメートル近くあり、まるでモデルさんのような体系だ。
プロポーションは抜群だが、よく見れば筋肉もついていて強そうだ。
もしかしたらクマさんの、昔の冒険者仲間なのかもしれない。
クマさんの姫寵愛の二つ名も健在のようだ。
「あいよ。焼きそば1つに大判焼ね!」
私は気軽な感じでその注文を受ける。
だがその女性の魔力に、ふと懐かしさのようなものを感じた。
この魔力は誰だったか? 顔はフードで隠していて見えないし、これほどの魔力の冒険者には今までに会ったこともない。
でも身内には似たような魔力の子がいたな・・・。でもあの子の魔力はここまで大きくはなかったし、身長だってもっと低かったと思うけど・・・。
ジャ! ジャ!
「えっと・・・もしかしてアリスちゃん?」
私は無意識に、目の前の女性にそう尋ねていた。
「う、うぅ・・・・!」
すると目の前の女性は、大粒の涙を流しながら泣き出した。
「うぅ・・・・! お姉さまにもう会えないって聞いて、わたくしがどんな思いをしたかわかります!? それなのにお姉さまは、こんなところで屋台なんて開いて・・・・」
それを聞いて私は目の前の女性が、成長したアリスちゃんだと、初めて気付いた。
「うぅ・・・ごめんねアリスちゃん。私長いこと出かけてたから、皆に会いづらくて・・・それで・・・」
気付くと私も、大粒の涙を流しながら話をしていた。
私にとっては数ヶ月の出来事だけど、きっとアリスちゃんには、長い長い時間だったと思う。
その間にこんなに大人になって・・・・
嬉しいような・・・・悲しいような思いだ。
「お待ちどうさま。焼きそばと、大判焼ね・・・・」
私は涙をハンカチでふくと、出来上がった料理を、クマさんとアリスちゃんに渡した。
「ああ・・・懐かしい・・・。お姉さまの味だわ・・・とても美味しい・・・」
アリスちゃんは感動しながら、焼きそばを食べている。
懐かしい? 焼きそばソースは久しぶりなのかな?
「アリス、そろそろ本題を切り出したらどうだ?」
「そうね。この味に感動していたら、すっかり忘れていたわ」
本題? 再会の話以外に、いったいなんの話があるというのだろうか?
「ちょっとその前に・・・防音障壁を張るわ。アクセス・・・・サウンドプルー・・・」
アリスちゃんはなぜか本題とやらに入る前に、風の魔法の防音障壁でこの辺りを囲んだ。
どうやらあまり聞かれたくない話をするようだ。
「お姉さまには王宮に来ていただきます」
「え? 王宮? もしかしてアリスちゃん、王宮で働いているの?」
アリスちゃんは確か、冒険者になりたいと言っていた覚えがある。
心変わりして騎士か文官にでもなったのだろうか?
それか赤薔薇騎士団をまだ続けているのだろうか?
「ええ。わたくしアリスフィア・イーテルニルは、現在女王を務めさせていただいております」
「ふぁ?」
私はそのアリスちゃんの言葉に変な声が出てしまう。
魔王とかハーフエルフとか、あれだけ蔑まれていたアリスちゃんが、女王になっているなんて、全く予想も出来なかった出来事だ。
「わたくしはできれば貴女を、王配として迎えたいと思っております!」
「ふぁあ? 私、女なんだけど?」
王配とは女王の配偶者に与えられる称号で、主に女王のお婿さんが、そうよばれる立場にあるのだ。
「はあ・・・。クマジロウはお姉さまに、何も伝えていないのね?」
なるほど。クマさんが最近よく見せていたあの悪い笑顔は、全てこのためにあったのだろう。
今も鳴らない口笛を発動させて、明後日の方角を向いていらっしゃる。
「お姉さま。落ち着いて聞いてください」
「はい・・なんでしょう?」
アリスちゃんは急にかしこまった様子で、私に向き直った。
「貴女には息子がいます・・・」
「ふぁ?」
そのあまりのアリスちゃんの発言に、私は再び変な声が出てしまった。
「ちょ・・・ちょっと待ってアリスちゃん! 確かに私は今年で27歳になるから、普通なら子供くらいいてもおかしくない年齢だよ! でも私はこんな容姿なんだよ!? ずっと6歳の幼女のままなんだよ!?」
私は今年で27歳になる。
17歳の時にルドラと戦い、10年も意識を失っていたのだ。
まあ前世も合わせると、精神だけなら60歳も過ぎているのだが、今はそれはおいておこう。
なんなら一度赤ん坊になって成長しているから、幼成体の体を構築する年数を差し引きしても、肉体的には8歳ということにもなるのだ。
そんな私に果たして赤ん坊など産めるのだろうか?
ん? 待てよ? 王配? お婿さんということは・・・私の子供を別の女性が生んだんだ。
そして今の女王は・・・・。
アリスちゃんだ!!!
「ちょ・・・ちょっと待ってアリスちゃん! いったん落ち着こう・・・! 私は女だし、貴女も女だから2人の間には子供は出来ないんだよ?」
「いいえお姉さま。お姉さまは今から10年前に、聖獣の儀式により3つの卵を産んでいらっしゃいますよね?」
確かに私は10年前に、残機とか言われて、3つの卵を産みだした覚えがある。
その1つが私の復活に使われたのだ。
「実は使わなかった2つの卵ですが・・・女性がその卵を取り込むと、お姉さまの子供をはらんでしまうようなのです・・・」
衝撃の事実! なんと私のあの卵は、女性をはらませる、エイリアン的な物体でもあったようだ!
ちょっと待て! 私は聖獣キリンからそんな話は聞いていない!
私は意味ありげにクマさんを睨みつけた。
「あのな嬢ちゃん。嬢ちゃんがこの世から消滅する可能性があるから、代わりを用意しますなんて言えるか? その卵はな、嬢ちゃんが最悪消滅して、どうにもならなくなった時に、嬢ちゃんの力を受け継ぐ子孫を、生み出すものでもあったんだぜ?」
なるほど・・・。聖獣キリンは私に気を使って黙っていたということなのか?
でもそうなるとアリスちゃんは・・・私の赤ちゃんを産んだことになるよね・・・。
「あの・・・その子供はもしかして?」
「お姉さまは昨日会っているわね」
やっぱり・・・・
「お姉さまの息子は、リンデル・イーテルニルです!」
なんとなく予想出来る答えではあったが、私はあんぐりと口を開けながら、その言葉を聞かざるを得なかった。
前世のお父さんお母さん・・・私、異世界で幼女に転生して、どうやらお父さんになってしまったようです。
【★クマさん重大事件です!】↓
お読みいただきありがとうございます!
ほんの少しでも・・・・
「面白い!!」
「続きが読みたい!」
「クマさん!」
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