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14:白い空間


『ギャアアアアアア!!』



 次の瞬間、この世のものとは思えないような、断末魔の叫びが頭の中に響いた。


 現在私は、私達の惑星アースに接近中の小惑星、ルドラの呪いに到着し、その軌道をアースへ向かう軌道から逸らせるために、ルドラの呪いに来ていたのだ。


 しかし禁呪の爆発による、ルドラの呪いの軌道を逸らせる作戦は失敗した。


 そこへ突如地面に亀裂がはしり、現れたのが、不気味で巨大な目玉だったのだ。

 それがなんと一万年前に死んだはずの、ルドラ本人が変異した化け物だったのだ。


 ルドラから強烈な熱攻撃を受けた私は、手足と体の下半分に大火傷を負い、満身創痍となっていた。

 だが力をふりしぼり、ルドラが再び現れた亀裂へと、神龍砲を放ったのだ。


 そしてどうやら神龍砲がルドラに命中したようだ。

 その影響か小惑星のいたるところにヒビが入り始めた。

 

 もしかしたらこの小惑星は、形を保つために、このルドラの存在が必要なのかもしれない。


 だがルドラは想像以上に巨大なようだ。

 彼に対して神龍砲は貫通力はあっても、殺し切るほどの威力はないのだろう。


 だがこいつだけは、いかなる手段を用いても、ここで倒さねばならない。

 こいつを生かせば、アリスちゃんやクマさんや、皆に危険がおよぶことは間違いないからだ。


 私はルドラから、それほどの怨念と、復讐心と、脅威を感じ取っていたのだ。

 ならば次に私が取る手はこれしかない・・・。



『クマさん、皆・・・もしかしたら私はこれでお別れになるかもしれません・・・。私はルドラに禁呪を全力で叩き込み、破壊するつもりでいます。ルドラが死ねば、もしかしたらこの小惑星は・・・・』


 

 ルドラが死ねば、小惑星は粉々になり、人類滅亡の危機だけは、回避できるかもしれない。

 だがあの神にも等しい存在を、倒すためには、こちらも覚悟を決めねばなるまい。

 この命を賭してでも奴を、あのルドラを倒す覚悟を・・・



『よせ! 嬢ちゃん!』


『お姉さま!!』



 私は口にすると、ぱっくりと空いた亀裂に、全ての呪いの石を投げ込んだ。

  


 『むぅ! これは呪いの石か!?』


 

 その瞬間ルドラが、投げ込んだ呪いの石に干渉しようとするのを、私の魔力感知が感じ取る。


 そうはさせまいと私は・・・奴が何かする前に・・・ここで呪いの石を・・・全て起爆したのだ・・・・



 カッ!!! ガガ・・・



 音はない・・・その恐ろしい衝撃のみを、私の魔力感知が感じ取る。

 とっさの私の土魔法による防御が間に合ったかもわからない。


 魔力感知でルドラの呪いの様子をさぐると、どうやら亀裂からいくつかに分散していくのを感じた。


 どうやらルドラの呪いを、バラバラにすることには成功したようだ。


 後のことは聖獣達に任せるしかないだろう。

 そして周囲の暗闇が、徐々に白く染まり、それが私の死を予期させていく。



『リンネ!!』


『嬢ちゃ・・・・・!!!』



 やがて念話も聞こえなくなった。





「ここはいったい・・・?」



 気付くと白い空間の中にいた。


 そこは真っ白で、あとは何もないのに、不思議と地面に足がついていた。

 そして自分の体を見ると、焼け焦げた体は元に戻り、いつもの青いエプロンドレスを着ていたのだ。



「貴様アイテール!! よくもこのオレを・・・!!」



 声がする方を見ると、そこには黒髪の少年が立っていた。

 そしてなぜか私には、それがルドラであると、直感的に理解できたのだ。



「私はアイテールではありませんよ」


「何!? アイテールではないだと!? そういえばよく見ると、所々彼奴とは違う部分もあるな・・・? では貴様のその、アイテールに酷似した魔力の気配はなんだというのだ?」



 アイテールの気配? 私の魔力はそんなにアイテールに似ているのだろうか?

 私の生みの親は5柱の聖獣だ。その5柱の聖獣を生み出したのが、アイテールなのだ。

 魔力が酷似していても、おかしくはないのかもしれない。



「私はリンネです。アイテールの孫の・・・ようなものですかね? アイテールは6000年前にこの小惑星で、すでに命を落としていますよ」



 アイテールは6000年前にこのルドラの呪いの軌道を逸らすために、禁呪を使い、その時に亡くなったと聞いている。


 私は目の前のルドラが、気付かぬうちに殺したのではないかと、思っているのだが・・・。



「ば・・・馬鹿な・・・。ならばオレはさらに6000年もの間、無駄にアイテールの影を追いかけ続けたというのか・・・この暗闇地獄で・・・うぅ・・・」



 ルドラは何かを後悔するように、涙を流し始める。

 この宇宙空間であんな化け物に成りはて、6000年もの間恨みをつのらせるのは、かなりの苦痛であっただろう。

 それは彼の言うように、まさしく暗闇地獄であったはずだ。


 だがそれは彼の、自業自得という他ないのだが・・・・



「だが・・・それもようやく終わりだ・・・。リンネ、貴様には感謝する。オレの魂は、ここで解放されなければ、永遠に暗闇地獄に落ちていただろう・・・」



 ルドラは初めの、憎しみの表情とは打って変わり、穏やかな表情になった。



「ああ・・・お前達・・・迎えに来てくれたのか・・・・」



 そして彼が見据える先には、数人の人物が立っているのが見えた。

 もしかしたら彼らは、ルドラの今は亡き太古の友人達なのかもしれない。


 ルドラはそのまま背を向け、滑るように、仲間とともに白い空間へと溶け込んでいった。

 そしてしばらくすると私も、白い空間へと飲み込まれていく。


 この異世界での人生はとても楽しかった。

 美味しいものも沢山食べた。

 

 つらいこともあったが、それも乗り越えて、色々な仲間とも出会った。


 まだ冒険もしたかったし、行きたいところも沢山あったけれど、もう仕方ない・・・


 アリスちゃんには長生きしてほしい。

 そしてあの寂しがりやのクマさんと、なるべく永くいてあげてほしい。


 私はこれで行ってしまうけど、皆に幸あらんと願うばかりだ・・・


 でもこれでさよならなんて・・・ちょっと寂しすぎるかな・・・


 そこで私の意識は、完全に途絶えた・・・・


 ・・・・・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・


 ・・・・


 ・・



 ブワッ!!!


「はっ!!!」



 いきなり視界が広がる。


 ここはいったい・・・・?


 周囲には森が広がり、所々に(わら)ぶき屋根の民家と畑が見える。



「嬢ちゃん!! やっと・・・やっと目が覚めたのか・・・・」



 目の前には今にも泣きだしそうな表情のクマさんが・・・。

 私はルドラを葬った時に、自らも爆風に飲み込まれてそのまま・・・

 ここはもしかするとあの世だろうか?

 するとクマさんも、何らかの理由で命を落として・・・・?



「ウオオオオオオン!!! ウオオオオオオン!!!」



 クマさんが遠吠えを上げる。

 これはクマさんが本当に悲しい時に上げる遠吠えだ。


 ここはいったい? 私はなぜこんなところに?


 そしてクマさんの遠吠えはいつまでも、いつまでも・・・続くのだった。

 

【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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