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23:魔法少女には変身ブローチ


「ブローチですか・・・?」



 エマちゃんは私が渡したブローチを手に取って、まじまじと見ている。


 現在私達は、魔術学園の訓練場で、新しい武器のリボルバー式魔銃の検証に来ていたのだ。

 そんな中リボルバー式魔銃を使えないエマちゃんにも、何かないかと出したのがそのブローチだ。


 そのブローチには、そのブローチが秘める力を象徴するように、情熱的な赤い薔薇(ばら)を模した宝石が埋め込まれているのだ。

 


「リンネお姉さまがアクセサリーとは珍しいですわね?」



 アリスちゃんもそのブローチに興味津々だ。


 そういえばアクセサリーは、あまり作ったことがなかったかもしれない。

 昔アリスちゃんに、ティアラとネックレスは作ったが、あれ以外作ったことはなかった気がする。



「そのブローチはただのブローチではないんですよ・・・」



 魔法少女といえば変身ブローチだ。

 そう思って作ったのが、この赤薔薇のブローチなのだ。


 

「変身ですか? ではこのブローチを使うと何かに変身できるというのですか?」


「変身というか、強化の(たぐい)なのですがね。胸に当ててこう唱えます・・・」



 私は胸に何かを当てるしぐさをする。


 そして・・・・



闘魂紅葉(とうこんもみじ)、発動!!」



 そう大声で唱えた。



「トウコン・・・?」


「トウコンモミジですって!?」



 エマちゃんの声にかぶせるようにそう叫んだのは、アリスちゃんだった。


 そう、このブローチは闘魂紅葉を発動させる『闘魂ブローチ』なのだ。


 紅葉なのに赤薔薇がついているのはおかしな感じがするかもしれないが、私的には闘魂といえば、情熱の赤い薔薇だ。

 

 闘魂紅葉は、相手を平手打ちすることで、対象に身体強化をかける回復魔法だ。

 ただ闘魂紅葉は普通の身体強化とは違い、かけた対象の筋肉が肥大し、髪が逆立ち、魔力が増強するという妙な身体強化なのだ。


 しかしその効果は絶大で、かけた対象は間違いなく、某スーパーお猿星人のごとく、パワーアップしている。


 過去にこの闘魂紅葉を見せた時に、アリスちゃんはことあるごとにその闘魂紅葉を強請って来ていたのだ。

 ただ私はビジュアル的に可愛いアリスちゃんが、あのような姿に豹変するのは見たくなかったので、アリスちゃんには使ったことはなかった。


 だが今回のこの闘魂ブローチは、一味違うのだ。



「さあエマちゃん! 皆に見せてあげて! 貴女の次なる段階を!」


「次なる段階ですって!?」


「うう~!!」


「嬢ちゃん大げさ。」



 そして私がそう促すと、皆がエマちゃんに注目する。

 一人空気の読めない獣もいるがね。



「トウコンモミジ発動!!」



 エマちゃんが何かを覚悟するように、胸に闘魂ブローチを当ててそう叫ぶ。


 するとエマちゃんから光があふれ、やがてそれがおさまる。


 そこには身長が180センチに伸びて、筋肉がそこそこ増えた、大人のエマちゃんがいた。

 ただしそれは以前のように髪が逆立ったり、筋肉が過剰に膨張したりということはない。  

 見た目の美しさにも配慮した、バランスの良いパワーアップを遂げるブローチなのだ。


 実はこのブローチを作る際に、クマさんの微調整により、毛根が過剰に強くなって逆立ったり、無駄に見た目だけでかい筋肉がついたりする、戦闘に必要のない部分をはぶいてもらっているのだ。


 しかもその無駄を減らしたぶん、増加魔力をさらに上乗せすることが、可能になったようなのだ。



「成功だな嬢ちゃん」


「う、うん・・・」



 実はこの闘魂ブローチは、なぜか私が使ってもその効果を表すことはなく、エマちゃんには悪いが、今回が初使用となるのだ。

 まあ安全面ではクマさんが太鼓判を押していたし、失敗しても以前のように毛根が逆立つ程度だっただろうがね。

 ただ服のサイズが合わなくなって、破れそうになっているので、そこは要改善だ。



「力が体の内からあふれてくるようですわ!」



 そう叫ぶエマちゃんからは、まるで闘気がわき上がっているかのようだ。



「うそ・・・あのエマがまたさらに強くなっちゃったの?」


「わう!!」



 その様子にマルスリーヌ嬢とスーちゃんが驚愕する。



「エマ・・・」



 その様子を見ていたアリスちゃんは、エマちゃんの武器である長棒をエマちゃんに投げ渡すと、自身も木剣を出して静かにエマちゃんに向けた。

 その力を試してみろとでも言うかのように・・・



 バッ! ガガ!!



「うそ! 速い! 今までのエマとは全然違う!」



 マルスリーヌ嬢が、エマちゃんのその速さに驚いているようだ。


 

「くっ! このわたくしが身体強化を使っても力押しされるなんて・・!!」



 そしてアリスちゃんは、今のエマちゃんには力でも敵わないようだ。



 バッ!


「ぐあっ!!」


 コロンコロン・・・・



 圧倒的な力と速度で追い詰められ、アリスちゃんはついに木剣を落としてしまった。

 そして地面に座り込むアリスちゃん。



「嘘・・・姫様に勝てた・・・」



 その出来事が信じられないようで、呆然とするエマちゃん。


 今までもアリスちゃんに、なんとか辛勝することはあったエマちゃんだったが、こんな圧倒的な勝ち方をすることはなかったのだ。



「ひ、ひどいわリンネお姉さま! わたくしがいくら強請っても与えてくれなかった力を、エマに簡単にあげちゃうなんて!」


 

 アリスちゃんは涙ながらに、そう私を非難する。


 まあ昔の状態のままの闘魂紅葉なら、いくらアリスちゃんに強請られてもかけられないよね。

 筋肉むきむきのアリスちゃんなんて見たくない。


 しかし今のアリスちゃんを、放っておけないのも確かだ。



「まあまあ。そう怒らないでよ。アリスちゃんのブローチもちゃんと用意してあるから」



 そう言うと私は、アリスちゃんの胸に、闘魂ブローチを付けてあげた。



「あ、ありがとうございますリンネお姉さま・・・これでついにわたくしも、あの念願だったトウコンモミジを・・・」



 お礼を言うとアリスちゃんは、静かに立ち上がる。

 そして叫んだ。



「トウコンモミジ発動!!」



 アリスちゃんが闘魂紅葉を発動すると、辺りに衝撃が走り、ただならぬ圧力が発生する。

 両目は赤く光り、身長は2メートル以上になる。

 そして魔力が目視できるほどに、メラメラとわき上がっているのが見て取れた。


 それはまるで、魔王が復活したかのような光景であった。



「アリスはもともと魔力が異常に高いんだ。そこにさらに魔力が倍増されれば、人の限界を超えていてもおかしくはねえ。こりゃあ気を付けねえと、暴走しかねねえぜ・・・」



 クマさんはそんなアリスちゃんを、警戒するような目で見がらそう言った。



「だ、大丈夫です。今までクマジロウ様に鍛えていただいたおかげで、この膨大な魔力にも、何とか耐えられそうです」



 クマさんの心配をよそに、そう答えるアリスちゃんだった。



「エマ・・・貴女なら今のわたくしと、対等にやりあえるでしょ?」



 そう言うとアリスちゃんは、次にエマちゃんを見据える。



「もちろんですわ姫様!」


 

 そう答えるとエマちゃんは、アリスちゃんに再び挑みかかる。


 アリスちゃんは膨大な魔力と、その魔力によって底上げされる、圧倒的な膂力を誇るが、エマちゃんには魔力を器用にあつかうセンスがあり、ただならぬ丈夫さと膂力を、少ない魔力からでも抽出できるようだ。


 そしてここに、スーパー戦士となった二人の、頂上決戦が繰り広げられようとしていた。



「なあ嬢ちゃん。今更こう言っちゃあ無粋かもしれないけどよ。ここはいちおう学園の一角だぜ? こんな場所であの二人が本気でやり合ったら、あちこち破壊されて大変なことになるぜ?」


「ああ、そうでしたね。なら止めないと・・・・」



 こうして二人のこの戦いは、途中で私が介入することで不完全燃焼に終わった。

 

 しかし後日マルスリーヌ嬢も闘魂ブローチを欲しがり・・・



「えっと・・・闘魂ブローチは回復魔法が使えないと、魔力をチャージできないんだけど・・・」


「それは何とかするわ! わたくしだけあのトウコンブローチがないなんて、仲間外れみたいで嫌だもの!」



 こうして闘魂ブローチは、マルスリーヌ嬢にも手渡すこととなった。


 この三人のスーパー戦士が、騎士団との合同演習でどう活躍してくれるか、今から楽しみだ。


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


 ブックマークと

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 【★★★★★】評価だと嬉しいです!


 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます!!


【次回予告】


 9月11日第二十四話「騎士団との合同演習前編」を更新予定!!

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