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12:道中


「その乗り物はどのくらいの速度が出るのだ? 如何にして自走を可能にしているのだ?」



 馬にまたがる女騎士のクラレッタさんが、ヘンツさんについて根掘り葉掘りと尋ねてくる。


 現在私達は、セイクリカ正教国の教皇に書簡を届けるために、セイクリカ正教国に入り、聖都を目指している。

 聖都に行くには案内人が必要なようで、その案内人兼護衛として、騎士のクラレッタさんとその従騎士のテーオさんが就いてくれたのだ。

 その最後尾には商人のエルモのおじさんと、その使用人で御者を務めるロリスくんが乗る荷馬車がついてきている。


 クラレッタさんとテーオさんは、どうやらその商人の護衛も引き受けているようだ。



「他国の貴族のお嬢様の案内人という大事なお役目の途中に、我々の護衛もしていただくなど、誠に申し訳ないです」



 そんなクラレッタさんに、エルモのおじさんが、申し訳なさそうに頭を下げる。



「偽の護衛に騙され、金子を奪われてしまったのだから仕方ない。困った領民を守るのも騎士の務めだ」



 商人のエルモのおじさんは、行商の途中で偽の護衛に騙され、お金を全て失っているのだ。

 そこで騎士であるクラレッタさんが、困っているエルモのおじさんの護衛を無料で買って出たようだ。


 ありがたいお姉さんではあるが、少々お人好しが過ぎる気もする。


 見たところエルモのおじさんの荷馬車には、商品がまだ沢山積んであるようだし、それを売れば時間はかかるが、お金は稼げる。

 そのお金でもう一度護衛を雇いなおし、領都へ向かうことも出来ただろう。


 クラレッタさんの話を聞いたテーオさんが、ため息をついているのは、もしかしたら私と同じように思っているせいかもしれない。



「クラレッタさんは女性なのになぜ騎士を?」



 私はクラレッタさんに尋ねた。


 イーテルニル王国でも女騎士は少ない。

 それは基本女性は男性よりも筋力が少なく、そういった職種を選ばない傾向にあるからだ。

 そして周囲もまた、騎士は男性の職業と決めつけてしまっているせいもある。

 だがこの世界には例外が存在する。それが魔術師だ。


 魔術師は筋力などの優位性を意に介さない存在だ。

 そして魔術師の女性は例外と見られるようで、騎士になっている例もよくあるのだ。



「私は騎士に憧れているのだ! それゆえに厳しい剣の稽古にも耐え抜き、騎士となった! だが私には魔力があり、身体強化が使えるというのが、大きな要因でもある!」



 やはり彼女も魔術師まではいかないものの、身体強化という大きなアドバンテージを持っているようだ。



「ところで君のお父上は、如何にしてドラゴンスレイヤーなどどという強者に至ったのだ?」



 クラレッタさんは、私自身がドラゴンスレイヤーであることを、いまだに知らない。

 私に父親がいて、その父親がドラゴンスレイヤーだと思い込んでいるのだ。


 まあ見た目幼女の私がドラゴンスレイヤーなどとは、誰も思わないのも確かだ。

 それはこの異世界では、基本魔力は10歳から発現し、魔法もそのくらいの年齢から、徐々に使えるようになるという常識があるからだ。


 エルフなどの種族差や、私のような例外も存在するのは確かだが、その事実を知っている者も少ない。



「う~ん・・・私がドラゴンスレイヤー本人だと言っても信じませんよね?」


「ハハハハ! それは何の冗談だリンネ嬢!?」



 クラレッタさんに真実を話したら笑われた。

 まあだいたいこういった反応が世間一般では普通なのだろう。



『嬢ちゃん、この先に賊がいるぜ? 四半刻以内の場所だ』



 そんな話をしていると、クマさんがそう耳打ちしてきた。

 クマさんは面白がって聖獣であることを隠すために、クラレッタさんに会ってからずっとこの調子なのだ。



「は~・・・。いい加減普通にしゃべったらどうですか?」



 私はそのクマさんの様子に呆れながらそう言った。



「クラレッタさん、クマさんがこの先に賊がいると言っています」



 そしてクラレッタさんにそれを伝える。



「クマさん? クマさんとは君の従魔のことだろ? 君の従魔には賊の気配がわかるのだろうか?」

 

「はい。そうやって今まで安全に旅を続けていますから」


「にわかには信じがたいが・・・」



 そう言ってクラレッタさんは、クマさんを見ながらしばらく考え込んだ。



「テーオ! 二人でこの先の様子を見てくるぞ! エルモとリンネ嬢はしばらくここで待機していてくれ!」



 そして結論を出すと、テーオさんを連れ立って、馬を走らせてこの先に偵察に向かっていった。

 私が行って退治してきても良かったのだが、それだと彼らを説得する方が骨が折れそうだ。



「ヘンツさん待機です」



 私もヘンツさんを停止させて、エルモのおじさんも荷馬車の歩みを止める。



「クマさん、彼らはどのくらいの時間で帰ってきますかね?」


『ここから馬を走らせてすぐの場所だ。四半刻もしないうちに帰ってくるんじゃねえか?』


 

 クマさんはそう私に耳打ちしてくる。

 くすぐったいのでもういい加減にしてほしい。



「あの・・・つかぬことをお伺いしますが、貴方は巨剣の幼女様でいらっしゃいますよね?」


 

 するとエルモのおじさんがそう尋ねてきた。



「えっと・・・。 なぜそう思われたのですか?」


「その・・・衛兵の方に見せていただいた人相書きに、特徴が一致しておりましたものですから・・・」



 なるほど。私の人相書きとやらは、けっこう気軽に見られるもののようだ。

 今度私も知り合いの衛兵のおじさんに頼んで見せてもらおう。



「その人相書きには、聖獣様を連れた黒髪の幼女と書かれていましたから、そちらの子熊が聖獣様でございますね?」



 どうやらクマさんの正体は、初めからエルモのおじさんにはばればれだったようだ。



「なんだこら~! これから面白くしてやろうと思っていたのによう!」



 クマさんは自分の正体をばらされて、不機嫌そうにそっぽを向いた。

 ぷっ! そう思うと、今までのクマさんの演技が、間抜けに思えて笑いがこみ上げてくる。



「あ! 笑ったなこぅら!」



 クマさんのこちょこちょ攻撃が、そんな私に対して開始される。



「仲がおよろしいのでございますね?」



 そんな私達を見なが、らエルモのおじさんが、微笑ましそうにそう口にした。



「ん!? 嬢ちゃん・・・こりゃあ少しやばいかもしれないぜ?」



 だがそんなクマさんが突然動きを止めて、深刻な様子となる。

 これは私が行かないとやばいかもしれないね?


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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 【★★★★★】評価だと嬉しいです!


 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます!!


【次回予告】


8月31日第十三話「賊との遭遇」を更新予定!!


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