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09:賊の襲撃


「わたくし、リンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーと申します!」



 私はドラゴンスレイヤーの勲章を胸につけて、胸をそらせて衛兵達に見せつけた。


 セイクリカ正教国に、書簡を届ける任を受けたクマさんと私は、その数日後に王都を出発した。

 そしてその日のうちにオルレアン領に到着した私達は、現在オルレアンの街の関所で身分の証明をしているところだ。



「こ、これは! しょ、少々お待ちを! ただいま先ぶれをして参ります!」


 

 すると位の高そうな衛兵のおじさんが出てきて、慌ててどこかに先ぶれをしに飛んで行った。

 行った先はおそらくオルレアンの屋敷であろう。


 それから数分後、戻ってきたおじさんに案内されて、オルレアンの屋敷にやって来た。


 貴族というのは面倒なもので、末端の貴族でも他領におもむいた際は、領主への挨拶が必要となる。

 ただ末端の貴族である場合簡単な挨拶で終わる場合が多いようだ。


 しかし私の場合は違った。



「よくぞ来た! この国最強の英雄よ!」



 屋敷の客間に案内され、オルレアン公爵が発した第一声がそれだった。


 つまりオルレアン公爵は、今回私を爵位に関係なく、この国最強の英雄として招き入れたのだ。

 この後はマルスリーヌ嬢からの手紙を渡し、少々過剰な歓待を受け、終始国王が座るようなでかい椅子に座らされ、やや興奮気味にドラゴンとの戦いや、帝国との戦争の話を何度も強請られた。



「其方さえよければ、いつまででもこの屋敷にいてもいいのだぞ!?」


「いえ・・・。陛下から任じられた、書簡を届ける任務がありますので・・・」



 翌朝引き止められながらも、逃げるようにオルレアンの街を出た。


 オルレアン領を抜けると、次はトゥルーズ領へ差し掛かる。

 このトゥルーズ領を抜けた先が、セイクリカ正教国だ。


 トゥルーズ領はイーテルニル王国第二の穀倉地帯で、セイクリカ正教国とムツ公国の国境がある領地だ。

 オールポート領と同じく、深い森のある東側に、魔物が多く生息しているそうだ。

 ウスターシュ・イーテ・トゥルーズ伯爵の治める領地で、オールポート領と同じように、麦畑が広がり、牛のような魔物、ビッグゴートを連れた農夫をよく見かける。

 

 同じくトゥルーズの街でも歓待を受けたが、急ぐ旅だと言い訳をして、歓待を受けた翌朝にはトゥルーズの街を後にした。


 ここから先は村を2つ経由して、ようやくセイクリカ正教国の国境にたどり着くのだ。

 ところが今まで順調だった旅にも、ここらでテンプレという名の暗雲が立ち込める。



「嬢ちゃん。この先にいる奴らの気配がわかるか?」



 クマさんが、この先で待ち受ける何者かの気配を感じ取ったのだ。



「この気配はエーアイ・・・ゴーレム? いやこれは・・・」



 それは不思議な気配だった。

 ゴーレムの核であり、脳であるエーアイに近い気配は感じるのに、そのエーアイを覆う体の質がどうにもおかしいのだ。


 その気配は木々や茂みに隠れ、こちらを待ち伏せしている。

 それぞれが武器を手に、いつでも攻撃出来るように準備しているようだ。

 とりあえず目的はわからないが、賊ということは確定だろう。



 シュッ!



 ナイフ!? その直後賊の1人が、私に向けてナイフを投げつける。


 

「ヘンツさん止まって!」



 私は走行するヘンツさんを止め、そのナイフを直前で躱す。


 すると木の陰や草むらからぞろぞろと覆面で顔を隠し、レザーアーマーなどで軽装をした男達が出てきた。

 クマさんと私も、とりあえずヘンツさんから降りる。



「おかしな気配の方々ですね? 体の中にエーアイを仕込んでいるんですか?」



 私がそういうや否や、賊の1人が私に向けてナイフを突き出してくる。

 あらかじめ魔力感知により、その動きが見えていた私は、ノロノロとその攻撃を躱す。



 ドボォ!!



 私はそのまま掌底で賊の腹を打ち据えた。

 賊はレザーアーマーで胴体を守っているようだが、私の放った掌底打ちは相手の内部を攻撃する内功の1撃だ。

 賊は少し吹き飛び、吐血しているようなので、内臓にダメージを負ったのだろう。



「嬢ちゃん! それは悪手だ!」



 普通の人間であれば、これで倒れるはずなのだが、魔力感知がその賊から、次なる攻撃を感知する。



 シュッ!



 クマさんの言う通り、内部破壊による攻撃は目の前の賊には悪手だったようだ。

 信じられないことに、賊は苦しむそぶりも見せず、休むこともなく手に持つナイフで斬り付けて来たのだ。

 


 ドカン!



 私はナイフによる斬り付けを躱すと、すかさず賊を蹴り飛ばす。

 そして吹き飛んだ賊は、倒れてすぐにむくりと立ち上がった。



「奴らアンデッドだぜ?」


「アンデッドですか? もしかしてゾンビですか?」



 アンデッドといえば異世界ではテンプレだ。

 死体なのに動き、襲い掛かってくるのだ。

 ゾンビに嚙まれると、自分も感染して、ゾンビになるというのもあった。



「ゾンビが何かは知らねえが、あいつらはゴーレムみたいにエーアイによって操られている死体だ。ああいうのをここいらじゃあアンデッドって言うんだ。魔力感知でエーアイの位置を探れ! それがあいつらの弱点だ!」



 私はクマさんに言われるがままに、魔力感知で賊達の内部にあるエーアイを探る。

 するとそのエーアイは胸の中央にあり、小さな魔石に収められてあるような感覚を受けた。



「それではやっちゃいますか?」



 私は土銃を浮遊させて賊達に向けた。



 パパパパパパパパ・・・!



 そして土銃を連発で放ち、賊の胸にある魔石に命中させて次々と破壊していく。



 ドカ・・・ドカドカドカ・・・



 土銃の連続発射が終了すると、賊はいっせいに地面に倒れ伏した。



「死体をゴーレムのように動かすなんて、随分と悪趣味な術があるんですね?」



 私は動かなくなった賊の死体を見下ろしながらそう言った。



「ああ。死霊術っていう禁忌の術だ」



 死霊術もラノベなどでよく目にするテンプレだ。

 死霊術師は魔術で死体を操り、自らもすでに死体だったりするのだ。


 そして邪悪な魔術である場合が多い。

 ただこの世界のアンデッドからは邪悪な気配を感じなかった。

 この気配はどちらかといえば回復魔法に近いような・・・・?



「この邪法を使える奴をオイラ過去に1人目にしているが、そいつの記憶を引き継いでいる奴にも覚えがある」



 記憶を引き継ぐ? もしかして宿生記憶紋のことだろうか?

 魔術的な記憶であれば、確か賢者の記憶を引き継いだ人がいたね・・・



「それは第3王子のランダルだ!」


 

 やっぱり・・・



「ランダルの受け継いだ記憶は、ダミアンという賢者の記憶だ。そのダミアンは死霊術も使えたんだぜ。証拠はねえが、おそらくこいつらを差し向けたのはランダルだろう・・・・」



 この先のセイクリカ正教国で亡命をしているランダル王子は、私達がその悪事を書き記した書簡を、届ける任務を任じられていることを、何らかの方法で知りえたのかもしれない。


 そしてその書簡が届けられると、都合の悪いランダル王子が、アンデッド化させた暗殺者を、私達に差し向けたということなのだろう。


 

「クマさん。ランダル王子が3属性の魔術を使えることは知っていましたが、死霊術も使えるということは、実は他にも術が使えたということですか?」



 3属性以外の魔術が使えるということは、他にも魔術を隠していることになる。

 この先で戦うことになるかもしれない相手だ。知っておく必要があるだろう。



「それはおそらくだが、アンデッド化して得た回復魔法によるものだろう」


 

 回復魔法? やはり回復魔法と死霊術には何か関係があるのか?

 ていうかアンデッド化!?

 ランダル王子はすでにアンデッド化している可能性があるのか!?


 

「ゴーレムの体を構成する鉱物を操るには、土魔法によって作られた器が必要だ。その器は石の体であったり、鉄の体であったりする。では生き物の死体を動かすには、何をすればいいと思う?」



 まさか死体を操る魔法が、回復魔法だというのか!?

 回復魔法は人体を形作るたんぱく質や細胞などを操り、傷を癒やしたり病気を治したりする魔法だ。


 確かに使い方次第では、死体も動かせるかもしれない。

 まあアンデッド化して、回復魔法が使えるという理屈は納得いかないが・・・。



「まあその話は今はいいだろう・・・。ただランダルがアンデッドになっているということは、もはや昔のランダルなどは比較にならないくらい強敵であることは覚えておいてくれ」



 クマさんと私はそんな話をしながら、ヘンツさんを走らせていると、1つ目の村が見えてきた。

 今回は村による予定はないので、村は2つとも素通りして進む。

 また引き止められて騒がれても面倒だしね。


 そしてさらに進むこと1刻ほどで、ついにイーテルニル王国とセイクリカ正教国を隔てるオランジュの街が見えてきた。

【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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