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35:オールポート領


 タカタカタカタカ・・・


 

 現在私達は、ジャイロさん2号に乗っている。


 ジャイロさん2号は私が以前、王立魔術学園の入学試験に向けた勉強中の合間に、気晴らしに少しずつ造っていた、8人乗り専用の大型のジャイロさんだ。


 今回はオールポート領へ向かうということで、試験飛行も兼ねて、乗っていこうということになったのだ。


 そして今回ジャイロさんの操縦をしているのは私だ。

 助手席にはクマさんが座り、いつでも操縦を代われるようにスタンバイしている。


 2列目の席にはアリスちゃんとスーちゃんが乗り、楽し気に会話が弾んでいるようだ。

 3列目の席にはパトリシア嬢が乗り、使用人の女の子と、ああだこうだと言いながら、空からの風景を楽しんでいるようだ。

 4列目にはパトリシア嬢の護衛が2人乗り込んでいる。


 ちなみにマルスリーヌ嬢は、オルレアン領に帰ったのでいない。


 またリリちゃんも研究が忙しいそうでついて来ていない。

 すでに幼女先生として学園の名物となりつつあるリリちゃんは、この国に馴染んできているといえるだろう。



「すっかり研究の虫だな・・・まああれがリリス本来の姿だよ・・・」



 クマさんはそう言っているが、イーテルニル王国に来た当初は、私の周囲にいつもいたのに、急に独立したように離れていくのは少し寂しい気もする。





 現在学園が冬期休園となり、パトリシア嬢の故郷の、オールポート領を目指しているのだ。


 そのために出したのが、このジャイロさん2号だ。

 学園の冬期休園は長く、3ヶ月もある。


 その間は学園は閉鎖され、寮のスタッフもいなくなるので、学食などもなくなる。

 休園中、寮には住んでもいいようだが、寮の掃除などを生徒達個人に任されるようだ。





 今回オールポート領へ向かう理由は、以前パトリシア嬢の領地にお邪魔する約束をしていたからである。


 本来これはパンの作り方を教えるためであったのだが、パトリシア嬢はすでにふわふわパンが作れるので、訪問の意味はあまりないように思える。


 しかし他の料理についても教えてくれとパトリシア嬢に懇願されて、こうして一緒にオールポート領に向かっているのだ。


 アリスちゃん的には、王族による領地の視察という名目になるそうで、オールポート侯爵家を王権派に引き込む狙いもあるようだ。

 まあこれは国王のためであり、自分のためではないと言ってはいるのだがね。



「まあ! もうオールポート領が見えてきたわ!」



 パトリシア嬢が、ジャイロさんのその速度に、驚愕する。


 ジャイロさん2号は時速150キロと、1号ほどの速度は出ないが、それでも馬車の平均時速の15倍近くの速度は出ているのだ。

 王都から馬車で5日はかかるオールポート領でも、2時間ほどで到着してしまうのだ。





 オールポートの大地を空から見下ろすと、現在種をまき終えて間もないのか、麦畑が緑色に色づいている。

 このへんの麦は秋に種をまくそうなので、冬のこの時期には、緑色の芽が生え揃ってくるころなのだそうだ。


 聞いていた通り一面麦畑で、遥か彼方の地平線まで、その畑は続いているようだ。

 さすがイーテルニル王国を支える穀倉地帯の1つだなと思う。


 オールポートは森に隣接する東部の地域以外、魔物の出現報告は極端に少なく、広大な土地での麦の栽培が可能なのだそうだ。


 農家の隅にはちらほらと、テイムされているであろう、ビッグゴートとよばれる白い牛の姿が見える。



「当家にはビッグゴートがいまして、そのミルクが絶品なんですのよ!」



 ビッグゴートの話題をふると、パトリシア嬢がビッグゴートのミルクについて自慢げに語る。

 そんなに美味しいミルクなら、アイスでも作ればさぞかし美味しいことだろう。





「あの辺りに降ろしてくださいませ!」



 パトリシア嬢が指さす先を見ると、穀倉地帯の中に、建物が集中して建造されている場所が見えた。


 その中にひときわ大きな建物が見える。

 きっとあれがオールポートの領主の屋敷なのだろう。


 ジャイロさんはそのお屋敷前の、開けた場所に降ろすことにする。





 ジャイロさんを着陸させると、さっそく外に出た。

 そして周囲の風景を見渡すと、そこはのどかな感じのする、農家の連なる場所だった。

 時々商家やお店なども見えるが、やはり農家が圧倒的割合をしめているようだ。



「むぉお~・・!」



 すぐそこで麦わら帽子の農家の方が、連れて歩いているのが、ビッグゴートなのだろう。

 それは白くて大きな牛で、妙な鳴き方で鳴いている。





「お母様、ただいま戻りました」



 パトリシア嬢が、領主夫人に帰還の挨拶をする。


 お屋敷に到着すると、数人の使用人と騎士とともに、領主夫人が私達を出迎えた。

 しかし領主らしき人物の姿は見えない。

 こんなときに不在なのだろうか?



「本当に空から帰ってくるとは、思いませんでしたよ。しかもこんなに早く・・・」


「お父様はどちらに?」


「はあ~・・・。また例の場所よ」



 パトリシア嬢の質問に、ため息で答える領主夫人。


 いったいどうしたというのだろうか?



「お初にお目にかかりますアリスフィア王女殿下および、ともの皆様。オールポート領主夫人、フェリシエンヌ・イーテ・オールポートですわ」



 改めてこちらに向きなおると、フェリシエンヌ夫人がカーテシーで挨拶してきた。

 フェリシエンヌ夫人はパトリシア嬢同様に若干ふくよかな体系で、さらにあちこちバインバインな感じだ。



「ちょうどコックが料理の研究に勤しんでおります。旅の疲れなどありましょうが、よろしければそちらで、パンの作り方など教授していただけると幸いです」


 

 お互い挨拶が終わると、フェリシエンヌ夫人はそう切り出してきた。



「ではそちらに一人、料理係を向かわせましょう」



 アリスちゃんがそう言うと、エマちゃんと私は、お互い顔を見合わせるが、料理のレシピを多く知っているのは私なので、私が厨房に向かう運びとなる。


 アリスちゃんとスーちゃん、クマさんとエマちゃんは、そのまま客間に案内されて、荷物の整理でもするのだろう。



「ディートリンネ様。こちらへどうぞ」



 私はパトリシア嬢に案内されて、到着早々にお屋敷の厨房を、目指すことになった。

【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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