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01:魔術学園入学試験

 その日私達は、魔術学園の入学試験を受けるために、魔術学園の園舎に来ていた。

 魔術学園はまるで、貴族のお屋敷のような建物で、9階建ての大きな建物だ。



「姫様・・・足元にお気を付けください」



 決まり文句のような台詞なので、言ってみたが、そこでなぜかアリスちゃんにジト目で見られてしまった。


 今日のアリスちゃんは桃色のドレスを身にまとい、どこからどうみてもお姫様にしか見えない。

 何の抵抗か知らないが、その頭には私が以前作った、勇者のティアラが装着されていた。


 そして今日の私はいつもと違い、青い侍女風のドレスを着ている。

 アリスちゃんを先頭に、私は侍女気取りでその後ろに付き従う。


 クマさんも当初の予定通り、アリスちゃんの従魔としてついて来る。

 ちなみにクマさんがついて来る理由は、単なる王族のステータスだ。


 しばらく歩くと学園の入口付近に、守衛が詰める詰所が見えてきた。


 今日は三の鐘から、筆記試験があると聞いている。

 その試験のある部屋の場所を、守衛に尋ねるようにと指示を受けているのだ。


 なんでも場所が初めから指定されていると、悪だくみする連中がいるらしい。



「もし? 守衛の者。アリスフィア王女殿下が到着されました。筆記試験の会場を教えなさい」



 私は意地悪侍女風に守衛に尋ねる。



「は・・はい! 筆記試験の会場でございますね!? それでしたら・・・二階のAの教室でございます!」



 テンプレではここで守衛が嘘を教えて、騙された主人公が試験に遅れて、大ピンチなどという事件が起こるのだが、そんなことは起こらなかったよ。


 私達は指示された二階のAの教室へと向かう。


 実はこの教室や時間は、問題のある生徒同士が鉢合わせにならないように、配慮がしてあるようで、いきなりここでアリスちゃんと、アリスちゃんが敵対する派閥の人間に出会ったりはしない。


 玄関ホールは、私が前世で通っていた学校より豪華で、まるで今から、王様に謁見でもしに行くような様相だ。


 下駄箱など当然なく、土足で赤い絨毯の上を歩いて行くのだ。

 基本従魔と生徒以外は園舎には入れないので、有力貴族の護衛や使用人は、優秀な平民などをスカウトして学園に通わせる見返りに、自らの護衛にしたり、使用人にしたりしているようだ。


 当然使用人や護衛のつかない貴族が大多数を占める。

 アルフォンスくんにも護衛や使用人はいなかったようだ。

 そして王族には当然のように、貴族の使用人や護衛がつくのだ。

 アリスちゃんの使用人兼護衛は私なのだがね。


 というか私以外の付き人を全て断ったのが今の状態だ。

 王族なのに周囲に取り巻きがおらず、付き従うのは幼女と子グマのみである。

 本来王族はもっと貴族と交流を持つべきなんだけどね・・・。



「じゃあオイラはここらで待ってるぜ!」



 そして試験会場へ着くと、従魔は教室へは入れないので、教室の隣の部屋で待つ。

 これはカンニングなどを防ぐためなのだそうだ。

 ただ従魔をもつのは、受験生の中でもアリスちゃんだけなので、クマさんは一人寂しく隣の部屋で待つ。


 机にはそれぞれ番号が振られ、あらかじめ決められた番号の席に着く。

 私とアリスちゃんは、当然隣り合うように配慮されている。

 机もずいぶんと豪華な造りになっている。

 広い上に引き出しも沢山ついていて、使いやすそうだ。


 今回の筆記試験は意外にも総合科目となっている。

 なので半刻ほどで筆記試験は終了する。

 ちなみにこの世界の半刻は一時間だ。



「それでは試験を開始してください」



 三の鐘からしばらく待つと、試験が開始された。


 私に求められる成績は、一番でないが決して下位ではないという難しい位置付けだ。

 つまり100点中90点を取っておけばまず間違いない。

 100点を取れば当然王族ほど目立つので、よろしくない。

 さりとて90点以下だと、王族に仕える侍女失格だ。

 つまりマイナス5点となる問題、文章問題に焦点を当てる。


 ただ間違えるだけでは、やはり侍女として失格である。

 足掻いた上で間違えるのが好ましい。


 地動説と天動説に関する説明問題が狙いどころだ。


 この世界ではセイクリカ聖教が全てだ。

 この宗教では最近天動説を支持する声が大きくなっているそうだ。

 その天動説を支持する理由は、傲慢な理由とだけ言っておこう。


 ただ聖獣が地動説を支持しているために、地動説と書いても異端とはならないようだ。

 ただ今のセイクリカ聖教の宗教観から考えて、微妙という判定が下ることが多いらしい。


 そこで両方違うと書いたうえで、前世の記憶をもとにその理由を書いていく。

 これでこの問題は採点外となるだろう。


 そして他の問題は余裕で解ける計算問題や歴史、魔法に関する問題ばかりだ。

 これで90~95点はいけるんじゃないだろうか?



 ゴ~ン・・・ゴ~ン・・・



「試験は終了です! 答案用紙は係の者が回収に回ります!」



 学園に設置されている四の鐘が鳴ると、試験は終了となるのだ。





 次に実技の試験のために、グラウンドに案内される。



「それでは5組に分かれて並んでください。順番に魔法を確認していきます。可能なら的目がけて発動してみてください」



 見ると的が五つ用意されており、受験生は5組に分かれて魔法を披露するようだ。


 だがこの世界の子供は、10歳でようやく魔力が発現する。

 そのため魔法をまともに使える子供は少ない。

 的に向けて魔法を撃てるだけでも優秀なのだ。



「駄目だ! 今日は調子が悪くて魔法が出ない!」



 次々に魔法を不発に終わらせる子供が続出するが、これが普通である。



「貴女魔法で傷が治せるのね!? かなり優秀よ!」



 どうやら長身の女の子が、回復魔法を成功させたようだ。

 赤いドレスを着ていることから貴族か豪商の娘と思われる。



 ドカーン!!


「ま・・的が粉々に・・・」


 

 その様子に呆気にとられる試験管。


 破壊音がする方向を見ると、やはりそこにはアリスちゃんがいた。

 アリスちゃんの魔法でも、あれは加減した方だろう。


 そして私の順番がやってくる。

 理想はアリスちゃんと同じくらいの威力だ。

 しかし私の炎魔法は青い色をしているので、正体がばれる可能性がある。

 土魔法も特殊なものが多く、ばれやすいことは確かだ。

 なので使うのは水の魔法だ。


 アリスちゃんの得意な風魔法を簡単に説明すると、空気に魔力を流して操る魔法である。

 一方水魔法は水に魔力を流して操る魔法だ。


 どこにでもある空気を操る風魔法は、手軽な魔法と言えるが、質量の重い液体を操る水魔法の方が威力は高い場合が多い。

 だが水魔法の短所は、水がなければ使えないことである。

 しかし空気に漂う水蒸気を集めたり、水を持参して使う方法もある。


 私が取った方法は前者である。

 収納魔法から水を出して使ってもいいが、それでは収納魔法の存在がばれてしまう可能性もあるのだ。

 私は自分の順番を待ちながらも、あちこちから水蒸気を集めて、頭上に集めておいた。



 バシャン!! ドガガガ~ン!!


「なんて水魔法の威力だ! 的を貫通して、魔法耐性のある壁に穴が空いたぞ!」



 ところが本番に弱い私は、またやらかしてしまったようだ。

 練習ではあんなに威力は出なかったのだが、少し緊張して威力の調整を間違ってしまった。





 最後に室内に戻って魔力の測定だ。


 ぶっちゃけ他が全然だめでも、高い魔力が測定されれば、合格にはなるようだ。

 高い魔力の持ち主は、貴重な人材なのだそうだ。

 だが王族の侍女が魔力測定だけで合格というのも外聞が悪い。


 それに今回は魔力量をアリスちゃん以下に抑えなければならないのだ。

 その方法として利用したのが、今は透過して見えない私の頭上の輪っかだ。


 この輪っかには魔力を収納しておく機能があるのだ。

 私はその機能を利用して、魔力の大半を輪っかに流し、アリスちゃん以下の魔力になるように調整を図る。



「さすが噂のアリスフィア姫だ。宮廷魔術師の平均魔力を3倍以上も超えているぞ・・・」



 アリスちゃんの魔力を測定した計測係が、その多さに驚愕する。


 ちなみに測定方法は緻密な魔力視だ。

 数人の緻密な魔力視を持つ魔術師が、受験生を見て判定するのだ。


 そして私の順番がやってくる。



「ふむ。さすがはアリスフィア姫の侍女だ。姫ほどではないが、高い数値を示したぞ」


「しかし待てよ。この娘・・・魔力の流れがおかしくないか?」



 頭の輪っかに気づかれたか!?

 いや・・・そんなはずはない。


 輪っかに収納された魔力は、異空間に移動しているようで、魔力感知であっても確認できないのだ。

 私以外には、その輪っかの中の魔力量は、確認不能だとクマさんも言っていた。


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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