05:成長
今回は、第三人称視点→リンネ視点でいきます
第三人称視点~
「すぐにあやつらの追跡をやめさせよ!!」
聖女リリスは、配下による独断での、クマジロウとリンネの追跡に激怒していた。
「あの者はわたくしとの約束を守った。ならば我らもその行動に答えるべきであろう?」
ところが配下の者達は、そんな聖女の様子に困惑していた。
いままで悪辣とまでささやかれていた聖女が、急に態度を変え、約束がどうのと言い出したのだ。
それどころか言いつけを守らない配下に対しても、寛容な態度を示しだしたのだ。
「今逃がせばいつかあ奴らの報復を受けますぞ!!」
「はははは! 来られるものなら来るがいいわ! わたくしの知識と、この膨大な魔力があれば、誰にも負けはせぬであろう!」
その聖女の言葉は、配下の者達にもよく理解できたが、同時に危うさも感じていた。
聖女様はあの膨大な魔力を吸い上げたときに、あのリンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーに、心まで乗っ取られたのではないかと・・・
ところ変わって森の中にある、アラグノールらエルフ三人組の隠れ家。
あれから三日経ったある日、リンネが少しずつだが意識を取り戻し始めたのだ。
「おい・・・何かちょっとおかしくないか? とくに頭の方が・・・」
「ああ・・これは龍の角だな・・・」
リンネの頭には、なんと角が生えてきていたのだ。
それはあの龍の魔力が、完全にリンネの体に馴染んだ証拠でもあった。
普通なら荒ぶる魔力により、その体は四散してもおかしくはなかったのだが、長らく膨大な魔力で押さえつけられていた龍の魔力は、長い月日により、リンネの体に馴染んでいたのだ。
そして龍の魔力は、リンネを目覚めさせようと、回復を促してもいた。
「あ・・・クマさん・・・」
そして三日目にしてついに、リンネは目を覚ましたのだ。
「嬢ちゃん!!」
「リンネお姉ちゃん!!」
その様子に歓喜に打ち震え、涙を浮かべる、クマジロウとアリスだった。
リンネ視点~
「ここはどこですか?」
気付くと私は、木造の建物の中にいた。
「嬢ちゃんはリリスに魔力を奪われて、三日も寝ていたんだ」
私はこれまでの記憶を思い起こす。
聖女に魔力を吸い取られ、意識がなくなったのは覚えている。
だがこの建物の中に入った記憶はない。
「オイラがアリスと嬢ちゃんをここまで運んだんだぜ」
なるほど。私はどうやら気絶している間に、アリスちゃんとクマさんに、ここまで運ばれたようだ。
「気が付いてなによりだ。リンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤー」
そこにはどこかで見覚えのある、エルフが一人立っていた。
「えっと・・・確かアラさんでしたっけ? 新なんちゃらの?」
「アラグノールだ!」
私はこの体になって、記憶力は上がった方だと思っていたが、どうやら興味のないことは、すぐに忘れてしまうらしい。
「他の二人はどうした?」
「食材集めのために、狩りと採取に向かっている」
他の二人? ここには他にも住人が二人いるのだろうか?
「そんなことよりその角はどうするのだ?」
「え? 角?」
アラグノールさんに言われるままに、頭に手をやると、なんと私の頭には、二本の角が生えていた。
それが龍人化だとすぐにわかったが、なぜ私は無意識に、龍人化などしてしまったのだろうか?
そう思いながら自分の中の魔力を探ると、そこには龍の魔力と、最近獲得した神気と、ほんの少しだが、自分の魔力も残されていた。
どうやら魔力の器とやらも、小さくなっているようで、それ以上魔力が回復する感じはしなかった。
「あ~あ・・・私の魔力減っちゃいましたね」
「す、すまねえ・・・オイラが油断したせいで・・・」
「クマさんは悪くありませんよ・・・」
クマさんは悪くない。
悪いのはこんなことを企んだ、あの悪辣聖女だ。
「それにしてもこの角はどこかに刺さりそうで少し怖いですね・・・」
私は自らの魔力を意識すると、今度は神気を発動してみた。
「な、なんだその姿は!?」
すると今度は白い翼が生えてきて、頭には輝く輪っかが出現した。
「神気だ。嬢ちゃんは天族の魔力も持っているんだ」
「こいつはたまげた。伝説上の存在だぞ・・・」
アラグノールは驚いたように、私のその姿を凝視した。
頭の輪っかには、確か魔力が蓄積されていたはずだ。
しかしその膨大な魔力は、今の私の器では、大きすぎてとても受け取れそうにはなかった。
そして頭の輪っかのワット数を下げ、背中の翼に消えるように念じると、ようやくもとの姿に戻れたようだ。
「あれ? なんだか膝に痛みがあるな? 微妙にだけど・・・」
私はベッドから出て立ち上がると、そのわずかな膝の痛みに、ようやく気が付いた。
そして私はその痛みには覚えがあった。
これは成長痛だ・・・!
「アリスちゃん! ちょっと!!」
「リンネお姉ちゃん何?」
私がアリスちゃんの横に並び立つと、それは実感できた。
なんとアリスちゃんの頭半分も、低かった私の身長は、アリスちゃんと同じくらいまで伸びていたのだ。
「クマさん!! 私やっと成長できましたよ!!」
「あ! 本当だ! リンネお姉ちゃん大きくなっているよ!?」
「ああそうだな。おめでとう嬢ちゃん・・・」
それを見たクマさんは、なんとも寂しそうな、また嬉しそうな表情になった。
いったいどうしたというのだろうクマさんは?
そして私は膨大な魔力を失う代わりに、成長という新たな喜びを手に入れたのであった。
「今帰ったぞ」
「あ~~~! 私のドーラさんを虐めた人と、えっと・・・避けた人だ!」
そして狩りと採取に出かけていたエルフ二人が帰って来た。
ちなみにドーラさんとは、魔法闘技大会で目の前のエルフに敗北した、水魔法を使う女の冒険者だ。
「人聞きの悪いことを言うな! あれは試合だろ!? それに私はエドラヒルだ!」
「避けた人・・・?」
そして自分を倒したリンネに、あまり覚えられていないことに、再びショックを受ける、避けた人ことスリーオンであった。
【★クマさん重大事件です!】↓
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「クマさん!」
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