39:ショウヘイの悪夢
今回は、ショウヘイ視点→リンネ視点でいきます。
ショウヘイ視点~
「ふあ!!」
儂は唐突に目を覚ました。
そして先ほどの悪夢を思い返す。
なんと・・・なんとそれはこの儂が成長どころか、逆行して、幼児になるという悪夢であった。
「だ、大丈夫? 目が覚めて良かったよ。ショウヘイじ・・・ちゃん・・・」
声のする方を見ると、そこにはリンネ様とアリス嬢がいた。
どうやらまだ儂は寝ぼけているようで、リンネ様とアリス嬢は、今までよりも大きく見えた。
そしてどこかその二人が、よそよそしく感じる。
どうやら儂はベッドに寝かせられているらしく、周囲を見てそこが、リンネ様の不思議な屋敷であることがわかった。
「リンネちゃま。ワチはどうチて・・・」
舌が上手く回らず、しゃべり方がたどたどしい。
そして声も高くなっているのを感じる。
儂はいったいどうしたというのか?
口元をさわろうと手を伸ばすと、そこには紅葉のように縮んだ、小さな手があった。
「は?」
布団をめくって確かめると、そこには小さく縮んだ儂の体があった。
どうやら悪夢は現実だったようだ。
儂は幼児になってしまったのだ。
ただ体に流れる気を感じると、今までより格段に大きくなっているのを感じた。
儂はどうやら強くなることには成功したようだが、その代償に・・・今まで育て、年齢を重ねた体を、失ってしまったようなのだ・・・。
「ああああああ~!!」
「ショウちゃん!!」
「ショウヘイ坊や! 気をしっかり!!」
カプ・・・
そして儂の口に中に放り込まれた甘い物体・・・リンネ様がお作りになった蜂蜜の丸薬だ。
なぜかその甘さは、儂の心を落ち着かせ、先ほど受けた強いストレスを霧散させた。
たかが甘い丸薬ごときで・・・これが幼児になるということか?
リンネ視点~
「落ち着いたか? ショウヘイ?」
現在私達は、ホテルクマちゃんの中にいる。
目が覚めて、自分が幼児になったことがわかると、ショウヘイ坊やは錯乱して、叫び始めたのだ。
そこで機転を利かせたクマさんが、ショウヘイ坊やの口に蜂蜜フルーツ飴を放り込むと、途端に大人しくなったのだ。
「まさか極度の身体強化で、人が幼児退行するなんて、僕も驚きだよ・・・」
魔法に詳しいリオノーラさんでも、それは前例のない出来事だという。
「お前の望んだ結果だ・・・受け入れろ・・・ショウヘイ」
「あい・・・」
クマさんのその言葉に、ショウヘイ坊やは小さく頷いた。
実は現在、あれから二日経過している。
ショウヘイ坊やが目覚めるまでは、この遺跡に留まろうということになり、ホテルクマちゃんを出して、ショウヘイ坊やを寝かせていたのだ。
天人サカモトから受けた、神気を帯びて塞がらないと思われたショウヘイ爺ちゃんの傷も、天人サカモトが気絶したせいなのか、あのあと簡単に回復魔法で塞ぐことが出来たので安心した。
あれからクマさんが周囲を探り、天族と鬼人の存在は掴めたものの、動きはないようで、一日前にはどこか遠くへ去って行ったという話だ。
それでも魔物を警戒しながらの滞在で、落ち着いた気はしなかったがね。
「それじゃあ様子を見て、良ければ明日にでも出発しようぜ」
クマさんの提案により、その日の内にジャイロさんの点検を済ませ、ショウヘイ坊やの状態が良ければ、明日の朝にでも、ジュラ大陸の方向へ、飛び立つことになった。
「ショウちゃん、ちゃんとアリスの手を掴んでなきゃ駄目だよ。ここは段差があって危ないから」
現在私達は夕食の時間を迎え、皆が一階の食堂をめざそうかという時間だ。
アリスちゃんは手を引き、まだその体になれないショウヘイ坊やに、かいがいしく世話をやいている。
「アリス嬢。子供扱いはやめてくれい」
「アリスお姉ちゃんでしょ? 今は貴方の方が小さいのよ?」
小さいのは私も同じだけどね・・・。
「食後には剣の稽古をちたい。この体では、まだ剣を振るのもおぼつかない」
私の作ったお子様ランチを食べつつ、そう答えるショウヘイ坊や。
「いいよ。アリスお姉ちゃんが相手してあげるよ」
同じくお子様ランチを食べる、得意顔のアリスちゃんだったが、いざ剣の組手となると、ショウヘイ坊やは、鬼神のごとく強かった。
「う~ん! アリスの攻撃が、一回も当たらない!!」
「ほう。これは驚いたな。以前にもまして、剣の腕が上がったようにも感じる」
アリスちゃんも、リオノーラさんも、ショウヘイ坊やの剣には、全く歯が立たなかったのである。
それはそうだろう。
ショウヘイ坊やの腕は、細くて弱そうではあるが、身体強化の使い方が滅法上手いのだ。
普段は体に負担を掛けない程度に、絶妙な強度で体を強化しつつ、ここぞというときに、その何倍もの強さに強度を上げているのだ。
これは剣豪として何年も修行を重ねて来た、努力のたまものなのであろう。
これで体の扱いが、まだ慣れない状態とか言っているあたり、とても末恐ろしい。
私も今度ショウヘイ坊やに、身体強化を教わってもいいかもしれない。
「次はオイラが相手になろう・・・」
うん・・・クマさんはやっぱり強い。
今のショウヘイ坊やと互角とはね。
まだまだ実力を隠していそうで怖いくらいだ。
私? 私は風魔法でぶわ~て転がしたら、きたないって罵られたよ。
まあ剣で勝てない相手に、剣で勝負を挑むとか、意味がないことこの上ないからね?
「リンネちゃまはきちゃない!!」
「嬢ちゃんは絶妙なタイミングできたないことするからな。まったく・・・」
二人まとめてぶわ~~~!!
「ジャイロさん! 発進します!!」
そしてその翌日私達は、再びジュラ大陸の方角へ向けて、ジャイロさん1号を、飛び立たせるのであった。
【★クマさん重大事件です!】↓
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